第14話:地球のB級グルメ
ファイは濡れ布巾を使って、レトルトパックの回収に成功した。
「ふう...任務終了」
「任務?」
「そう」
「そうか」
界はパックを開封し、中身をパックご飯の容器へと注ぐ。勿論ご飯は半分のスペースに寄せられており、空いたスペースにカレーを注ぐことでちょうど容器が埋まった。
「完成だ」
「これは?」
「カレーライス。日本のソウルフード」
「へえ」
「美味いぞ、食ってみろ」
「チキュウのB級グルメ...」
「...言い返せないのが悔しいな」
界は小さく呟きながらも、机の前に座ってファイと向き合う。
「じゃあ、食べるか」
「ん」
「いただきます」
「...いただきます」
「おお、ちゃんと言えた」
「チキュウの習慣、変」
「まあそうだな」
「でも、悪くない」
「...そっか」
界は少しだけ、嬉しいと思った。ファイは照れ隠しか、スプーンを手に取って眺める。
「これ、どうやって使うの」
「そいつはスプーンだ。こうやって使う」
界はスプーンでカレーをすくうと、口まで運んでみせる。ファイもそれに倣った。
「そうそう。上手いぞ」
ファイはスプーンを口に挿し込んだ。
「...美味しい」
「そいつは良かった」
「毎日これが良い」
「...それは飽きると思う」
ファイがぱくぱくとカレーを頬張る姿を見て、界も嬉しそうに微笑む。
「何」
「いや、良かったなーと思って」
「私を見て、嬉しい?」
「違うよ」
「じゃあ何」
「子どもが美味しそうに飯を食う姿を見たら、嬉しくなるのが大人だよ」
「私は子どもじゃない」
「俺にとっては、ガキだよ」
「そう」
「怒らないのか?」
ファイは目をしばたく。
「もう慣れたから」
「...やっぱりガキだ」
「ごちそうさまでした」
「...ごちそう、さまでした」
ファイは界の仕草を真似て、両手を胸の前で合わせた。何故食事の度に、祈るような仕草をするのだろう。
「カイ」
「どうした」
「今のは」
「食事の前の『いただきます』と同じ。飯に感謝の気持ちを伝えるんだ」
「ねえ」
「何だ」
「なんで両手を合わせるの」
「...ん」
界は眉間にしわを寄せて考え込む。
「そういや、考えたこと無かったな」
「なんか、祈っているみたい」
「祈り、か」
「誰かが亡くなったの」
「そうでは無いから、安心しろ」
「そう?」
「ああ。むしろ逆だ」
「逆?」
「生かしてくれてありがとう、だよ」
「素敵」
珍しく手放しで褒めるファイを見て、界は黙り込む。いや、俺を褒めた訳じゃないもんな。あくまで地球の文化を賞賛しただけだ。
「それより、お風呂に入るぞ」




