第13話:ファイとレトルトカレー
界は彼女の頭をひとしきり撫でてから、キッチンの方へと向かった。
「さあ、夕飯を作ってやる」
「夕飯?」
「ああ。地球の食べ物」
ファイはキッチンへと向かって、界の背中にコバンザメの如くくっつく。
「どんなやつ?」
「カレーだ」
「ん?」
「ちょっと待ってろ。それとくっつくな」
「ええ〜」
「幾らガキとはいえ、ちょっと重いんだよな...」
言ってしまってから、界は口を防ぐ。やばい、明らかに失言だ。
「む」
「すまん」
「私は16歳だから、もうお姉さんなの」
「...ガキじゃん」
「え」
「地球では、18歳から大人だ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「私の星では、15歳から大人だった」
「そうか」
「驚かないの」
界はレトルトカレーのパックをお湯の中へと放り込む。
「そりゃ、他の星だったら色々と違うだろ」
「そっか」
「うん」
ファイは机に頬杖をつきながら、鍋に向かう界を眺める。界はその間、電子レンジでパッキングされた米を温めていた。
「カイ」
「何だ」
「その箱、何」
「どの箱だ? 地球には箱が多いからな」
「白いやつ」
「これか?」
彼は冷蔵庫を指差す。
「違う」
「これ?」
彼はトースターを指差す。
「違う」
「じゃあこれか?」
彼は電子レンジを(以下略)。
「それ」
「これは、電子レンジだ」
「でんしれんじ...」
「飯を温める箱だ」
「凄い」
「別に、お前の星の技術ならもっとやべえのあるだろ」
「ううん」
「え、無いのか?」
「食事は金属ケースに入ってて、口に押し込む」
「やっぱり10秒のゼリーじゃねえか...」
「チキュウにもあるの?」
「あるかも、な」
「ケチ」
「おい、それは地球の悪口...!」
界は頭を抱える。そうこうしているうちに、レトルトカレーのパックが十分に加熱された。彼は水揚げ作業に取り掛かる。が、ファイがそれを遮った。
「どうした、ファイ」
「私もやりたい」
「そうか」
「その金属の袋を、湯から持ち上げれば良いんでしょ」
「言い方...」
界はファイにキッチンを譲る。彼女はふふん、と笑うとお湯に手を突っ込んだ。
「熱い!」
「おい...」
まさかコンマ数秒で火傷するとは思わなかった。界は台所の蛇口を開く。
「はら、そこで冷やせ」
「水で!?」
「良いから、良いから」
界は彼女の華奢な腕を取ると、火傷した箇所に水を当てる。幸いにも、一瞬で腫れは引いた。
「うう...お母さん、ごめんなさい」
(どれだけ水不足なんだ...)と界は思った。




