第12話:流刑囚の涙
日没の近づいた18時ごろ、界がアパートに帰ってきた。ファイはずっと膝を抱えながら、結局涙を流していた。もう泣かないって誓ったのに。私は、本当に弱い子だ。
「ただいま、ファイ」
界は玄関で靴を脱ごうとして、その場で固まった。座り込んでいるファイの瞳に涙が浮かんでいるのを見たからだ。
「ファイ...?」
「...カイ」
ファイはやっとのことで声を絞り出す。界はそれを見て靴を乱暴に玄関に放り出すと、ファイの元に駆け寄る。
「ファイ、大丈夫か!? 何か酷いことを言われたのか! それともどこか怪我を...」
「...そうじゃ、ないの」
「じゃあ、俺の所為か?」
「...それも、違うの」
「じゃあ、お前の故郷から...?」
ファイは黙って頷いた。何故この青年は、自分のことを何も知らないくせに、そんな優しい言葉が出るのだろう。
「...もう二度と、来るなって、言われた」
ファイは流刑囚だと言う訳にも行かず、曖昧な説明を返した。界は彼女の前に正座すると、彼女の瞳を見つめた。
「ファイ」
「...うっ」
「俺は、地球人だ」
「...うん」
「お前とは何もかも違う」
「...うん」
「でも、目の前で子どもが泣いている姿を見ても放っておけるほど、俺は薄情じゃない」
「...そう」
「だから、ちょっとだけ優しくしてやる」
界は少し彼女に近付くと、彼女の頭をわしわし、と撫でた。ファイは涙を軍服の袖で拭きながら、界を疑ってしまったことを後悔していた。
「...カイ」
「何だ」
「...ありがとう」
「良いんだ。俺にできるのは、せいぜいこのくらいだしな」




