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第64話 ヤメーメ王国へ帰還 

 暗闇のあと、さっとやさしい光が広がった。

 そして少しずつ視界が広がっていく。

 

 えっ、ここどこ?


 どうやら室内みたいだ。

 もちろん寝てたわけじゃないので、記憶はしっかりある。

 タンニシ王国の城にある部屋に描かれた魔法陣に立って、おれたちは移動したのだ。


 ということは、ここは――


「ヤメーメに着いたってわけか?」

「なんだか一瞬だった気がするけど」


 じっさい移動にどれくらい時間がかかったのかはわからないけど、たしかにあっという間な感じもしたよね。

 睡眠と同じで、暗闇を見ていた正確な時間の感覚はつかめないな。


 そしておれの腕の中にいるのは、宇宙一かわいい魔動物。


「キュッ、キュッ、キュキュッ」


 くぅ〜、かわゆす!

 この声だけあれば、おれはもうなんもいらんよ。

 

 そんな気分になるほど、きゃわいいんだもん。


 チャウ丸が魔動物の頭をなでながら言った。


「ここ、ヤメーメ城の中なんじゃないか?」


 たしかに学校の雰囲気がなくもない。

 だって頭蓋骨の模型や地球儀があるからね。

 黒板と広めの机だってあるし。


 と思ってたら扉が開かれ、だれかが現れた。


「あっ」

「アッ!」


 ウサ坊主さんではないですか。


「あら、みなさん、どうしてここへ?」

「あなたこそなんで?」

「いえ、わたくしはここで働いてますから」

「ということは、やっぱりここはヤメーメ城なの?」」

「そうですけど」 


 ウサギふうの長い耳をピクピクさせながら〝みなさん、頭がおかしくなったのですか〟みたいな顔を向けている。

 まあそりゃ、そんな顔になるわな。


 おれが代表して、ここまでのいきさつをざっと説明。


「――そうですか。タンニシから飛んできたのですね」


 うーん、魔法陣の移動って、飛ぶって表現なのかな。

 ま、いーや。

 某有名RPGの移動に雰囲気が似てたし。


「でもなんでここに到着したのかしら?」


 とそこでおれは足元に気づく。

 木の床には、チョークのようなものでうっすらと模様が描かれている。


「もしやこれって、魔法陣?」

「そうです。だからあなた方はここに移動したわけです」

「だったら最初からこの魔法陣でタンニシに行けばよかったんじゃないの?」

「それがそうもいかないのです」


 説明によると、国が栄えていた頃はこの魔法陣で移動していたらしいが、やがて国全体の聴力の衰えにより機能しなくなったとのこと。

 今は受け入れる場合のみ、なんとか使えるみたいだ。

 受信専用の電話みたいなことか。


「そちらさんは?」


 ウサ坊主はもの珍しそうに顔を向ける。


「タンニシの魔動物さ」

「えっ!」


 だいじょうぶなんですか、みたいな顔だ。


「こんなにかわいらしい動物が、あんたの肉を引き裂くとでも思うかい?」


 チャウ丸の言葉に、ようやくウサ坊主の顔の緊張がゆるむ。

 たしかにこの子は、凶暴とは対極にいるほど穏やかそうだもんね。

 

 ということで、おれたちはウサ坊主に導かれて部屋を出た。

 見ると「理科室」というプレートがさがっている。

 やっぱりね。

 部屋を出るとき、ビーカーや試験管も見えたもん。

 とにかく無事にヤメーメに着いてよかったよ。


 廊下を歩いているときも、魔動物が顔をすりよせてくる。


「キュッキュキュ」


 かわいすぎて足元がふらついちゃうぜ。


「ねえ、この子に名前つけてあげようよ」とシャムりん。

 たしかに呼び名は必要だよね。


「どんな感じがいいだろうね?」

「ジャーマンシェパードってのはどうだ?」と自信たっぷりのチャウ丸。


「いや、ぜったいちがうでしょ」


 どう見てもあんなに勇ましい感じがしないよね。

 そもそもおれらみたいなイヌじゃないし。


「もっとかわいい名前にしようよ。そうね、あたし魚好きだから、魚にちなんだ名前はどう? たとえばカツオとか」

「それ、いるし」

「いるって何が?」

「人間界にラスボス級に有名なのがいるの」


 ふーん、と首をちょこんと曲げるシャムりん。

 この感じだと次はマスオとか言い出しそうなので、先におれが提案。


「じゃあサワラとかは」


 パッと思いついたものだけど、かわいいこの子を見てると、なんとなくそんな感じがした。


「好きよ、サワラ」

「サイキョウ焼きとかうめえよなあ。一度だけ食ったことがあるんだ。名前のとおり魚で一番って感じだったから、その名前でいいんじゃない?」


 ん?

 チャウ丸、西京焼きが〝最強〟のほうになってない?


「いいわね。じゃあ、そうしましょ。今日からあなたはサワラちゃん」

「キュキュッ」


 たぶんだけど、よろこんでるのかな?

 もしかすると名前をつけてもらったことを理解したのかもしれない。

 魔動物というくらいだから、思いのほか知性がありそうだよね。


 そしておれたちはヤメーメ城を出る。


「おつかれさまです!」と門番。

 偉い、偉い、今日は居眠りしてないね。


 おれはペコリと頭を下げて外を見渡す。

 

 ん〜、なんか帰ってきたぁ〜って感じがするな。

 すでにヤメーメが故郷みたいになってるから不思議だよね。

 でもこの長閑(のどか)さはけっこう好きだわ。

 たぶんおれはこういうのんびり系が合ってるのかもね。

 

 村の広場に着くと、ヤメーメの民がおれたちに気づいて集まってきた。

 もちろんみなさん、コスプレの格好だ。

 剣豪ふうの格好の男が言った。


「三銃士様、旅から戻られたのですか?」

「うーん、まあ」


 やはり今もおれたちが伝説の三銃士だという思い込みは健在なのね。

 タンニシではそんな扱いじゃなかったから、なんだかその勘違いもなつかしいよ。


 ほかの民もどんどん聞いてくる。 

「どうやって戻ってきたんですか?」(学ランの男)

「まさかリニアですか?」(女子用スクール水着の男)

「それともUFOですか?」(柔道着の男)


 人間界のことはよくご存知のようですな。

 ただリニアはたしかまだ開通してなかったよね?

 あといちいちツッコむまでもないけど、どうやったらUFOに乗れるのかこっちが聞きたいくらいだよ。

 

 タンニシに行ってきたと答えたら、さらにみんなを驚かせることに。


「ほ、ほ、ほんとですか。死ななかったですか?」


 ほら、このとおり生きとりますよ。

 見りゃあ、わかるでしょうが。


 カクカクシカジカとざっくり説明してから彼らの質問攻めを振り切り、おれたちは宿へ。


「無事に帰ってこれてよかった」と笑みで迎える主人のカンポさん。

 そして扉の先から現れたのは、カンポさんの一人娘のリナ。

 その可憐な顔にパッと笑顔が広がった。

 そしてすっとおれのところに寄り、こう言った。


「心配してたのよ」

「ああ、ありがとう」


 チラッと見ると、シャムりんが〝ヒューヒュー〟みたいな目を向けている。

 いや、ちがいますよ。

 べつにどんな関係でもありませんからね。


 とはいえ、マガハラ大陸の地底でリナの御守りに助けてもらったことは忘れちゃならない。


「これ、すごく助かったよ」とおれはリナに御守りを見せる。

「チンネン様のために気持ちをたっぷりこめてましたから」


 おれは名画モナリザばりに微笑。

 こういうときは二重でどんな顔をすればいいかわからなくなるね。

 たしかに彼女から好意のようなものを感じなくもない。

 どんなにニブいジーコでも気づくはずだ。

 慣れないおれも、どうしても照れ顔になってしまう。

 それに加えて〝チンネン様〟だもんな。

 いちおう「前みたいにタタロオでいいよ」と言っておいた。

 そっちの呼び名のほうが、だんぜん落ち着くし。


 ということで、リナの案内で二階の部屋へ。


「いつでも戻って来てもらえるように、ベッドもきれいにしておきました」


 たしかにシティホテルばりに白いシーツがピンと張ってある。

 最後までかわいらしい顔を向けるリナにおれはタジタジ。

「何かありましたら、いつでも呼んでくださいね」と言ってリズミカルなステップで彼女は去って行った。


「結婚しちゃえば?」とシャムりん。


 いや、いろいろすっとばしすぎでしょ?


 シャムりんが、照れるおれの姿をあきらかに楽しんでるのがわかる。

 ただ寸善尺魔(すんぜんしゃくま)っていうか、うっかり喜んでもすぐにろくでもない目にあうものだから、調子に乗らんとこ。


 そこでチャウ丸が風呂敷袋から魔動物のサワラを出した。

 さすがに宿の二人に見せたらビックリさせるだろうからと隠していたのだ。


「キュッキュキュ」

「はいはい、御飯がほちいのね?」とチャウ丸はサワラの気持ちがわかったように抱きながら言った。


「おいらたちもメシにすっか」

「もちろん地球メシね?」

 

 そして久しぶりに宿屋の物置の穴から抜けて、地球の犬小屋へ戻ったわけだ。

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