閑話 もうすぐぼくも中学生さ!
今日は散歩ついでに、駄菓子も売ってる小さなゲーセンに来ている。
これはたまにやるお気に入りのコースさ。
だって、ただのイヌの散歩だけじゃつまんないからね。
タタロオにはわるいが、外の柱に紐をつないで、ぼくは大好きな格ゲーのまっさい中。
ビシッビュシュッダンッ、ハドーケッ! ショショショショーリュウケッ!
うー、やっぱゲームはたまらんね。
現実でもほんとにこんな技だせたら、めちゃんこ楽しいだろうなあ。
あーあ、もうすぐ中学生かあ。
中学って部活とかあるんでしょ?
すでにムリって気がするし、かったるいなあ。
あっ、負けた。
コンテニューしてと――ゲッ、もう小銭ないじゃん。
ちっ、もっとカネほしーなー。
乗りまくったオンボロチャリとか使い終わった教科書とか、ガラクタがどっかで高く売れたらサイコーなんだけど。
ゲーセンから外に出ると、うらめしそうな眼を向けるタタロオ。
もう、そんな床に落ちた脇毛を眺めるみたいな眼でご主人様を見るんじゃないよ。
ほれ、きなこ棒だよ。
これでゆるしてちょ。
げほげほっ――
あっ、イヌにこのおかしはまずかったかな?
もしタタロオがしゃべれるなら、文句をぶーたれてきそうだな。
だってすでにそんな顔してるもん。
一緒に暮らすようになって2年くらいだけど、なんとなーくタタロオの仕草で要求がわかるようになってきたんだ。
学校から帰ってきたとき、庭の茂みから顔を出したあと飛び跳ねて喜ぶ姿とかね。
でもイヌってふだん、何考えてるんだろうね?
まさかぼくのことをグチグチ批判してたりして。
まあこうして散歩に連れていってんだから、どんな文句もお断りさ。
と、いつもの空き地の前を通りかかったとき、見知らぬイヌを発見。
ふーん、野良犬なんてめずらしいな。
ごはんとかどうしてるんだろうね。
そこで横から声が飛んでくる。
「よー、ジーちゃんじゃねえか」
げっ、めんどくせえヤツらだ。
こいつらは学校でも先生に目をつけられてる連中で、よくぼくにもいびってくる。
「カネ貸してくんね?」
「そんなのないよ」
「じゃあ、跳ねてみな」
ジャンプしたらポケットでジャラジャラ小銭の音がするか、ためす気なんだろう。
イヤだよって言い返せないでいると、「ホラ、早くやれよ」とグイグイくる。
とそこで、となりから――
ワンワンワンワンッ!
「げっ、なんだこのうす汚い犬」
「なんか気味わるいから行こーぜ」
そしてろくでなし共は離れていった。
タタロオ、ナイス!
ぼくはタタロオが好きなアゴこしょこしょをやってあげるわけだ。
オンボロ犬小屋にタタロオを残して、ぼくは部屋でだらーん。
寝ころがってそのへんに落ちてるコミックをかたっぱしから読んでいく。
やっぱ異世界冒険もラブコメも学園ものも戦記ものも青春サバイバルもダークファンタジーもいいなあ。
なんでこんなにすごい話が書けるんだろうね?
作家さん、マジ神って感じ。
あーあ、ぼくもこの令嬢みたいに恋がしたい!
恋、コイ、KOI、来い・・・えーいっ、モテたいっ!
そこでガラガラ――
「ちゃんと宿題しなさい!」
「勝手にドア開けないでよ。プライバシーの侵害!」
「ガキのくせに、なーにがプライバシーだよ」
母さんの後ろには父さんもいる。
「ねえ、スマホほしい。買ってよ」
「ダメです」
「でもみんな持ってるし」
「お前は電卓でじゅうぶんだよ」
どうやって電卓でラノベ読むんだよ?
このオヤジ、脳みそがふやけたコーンフレークでできてるんじゃないか。
「お前、こんなことだとダメ人間になるぞ」
ふん、リア充人生なんて、はなからあきらめてますわ。
親が部屋からいなくなったところで、さんざん読み倒してボロくなった「世界史大全」をペラペラ。
やっぱルネサンス頃のヨーロッパは偉人超人ばっかで熱いぜ!
ボッティチェッリとか、ちょー萌えるわ。
と、そこで外から声が届いた。
ファオーンッ!
おっ、タタロオもうっぷんがたまってるのかな?
タタロオはお気楽でいいよね。
勉強しなくていいし、ずっと寝てても文句も言われないし。
あーあ、ぼくもイヌになりたいなあ。




