第54話 今度は質屋へGO BACK
質屋に戻ると、顔の形が三角フラスコふうのあるじが「お帰りなさい」と迎えてくれた。
そして品が多いこともあり、ふたたび奥の部屋へ通された。
部屋の長テーブルには、地底で魔物を仕留めたときのドロップ品と、地球とつながる噴出口から出てきた品々が並んである。
こうして見ると、なかなかの量だな。
魔波を宿してほとんど容量無制限と思われるチャウ丸の風呂敷がなければ、回収できなかっただろうね。
「まずはこちらの修理が終わりました」とあるじがその風呂敷袋を差し出した。
「おお、新品みたいだな。サンキューです!」
たしかにほつれていた部分も修繕され、見違えるほどきれいになっている。
「そしてこちらがあなた様の――」
出されたお姫様人形を見てシャムりんの顔に喜色が広がった。
「まあ、きれい! お風呂に入れてもらったのね?」と人形に話しかける彼女。
こちらも汚れを落としてもらっているようで、たしかに全身を洗って一新したかのようだ。
「ではお預かりしていた品々の買取額ですが――」
おっ、きましたね。
「これらの品はずいぶんと珍しいものだと言えます。名称についても我々が把握していないものもあり、ほかの質屋仲間にも相談して額を出させていただきました」
ちょうどそこで部屋に、四角い顔をした鷲鼻の男が入ってきた。
どうやらこの方も質屋さんらしい。
たしかに初めて見る品となれば、その価値や扱い方に困るだろうね。
「それですべての買取総額なのですが、こちら計8点合わせまして、銀貨130枚となります」
「エッ!」
おれたちは同時に声をもらした。
「おそらくはどの品も人間界にまつわるものなのでしょう。今後の扱いについては、国の管轄にあるほかの業者なども交えて検討されていくはずです。それにしても、本当にこちらの品々には驚きました」
あるじの話によると、圧力鍋とフリスビーはタンニシでわりと出回っているが、キャッチャーのレガースはかなりのレアものらしく、はじめは未確認魔物の外殻の一部なのではないかと話し込んだとのこと。
おれは野球についてはそれほど詳しくないが、ここで野球のルールから説明して使い方を丁寧に伝えるのも変なので、そこは黙っておいた。
カセットテープは、この国に獣魔気で再生するデッキがあるらしく、すでに視聴したとのこと。
その音楽に度肝を抜かれた質屋のあるじは、この品をすでに国の音楽関係者に回す話までつけているらしい。
それもあって値も高くつき、テープ一本で銀貨20枚となったのだとか。
日本円だと6万くらいだから驚きだ。
ネットオークションでもこんなには跳ねないだろう。
いったいどんな曲がテープに入っているのか気になるところだが、テープにはとくに何も書かれてないし、聴かせてくれとも言いづらいから、勝手に想像するしかない。
はたしてパンクとかアニソンの曲なのか、誰もが知るようなラブソングなのか。
そして意外だったのが、ゲーム機のソフトだ。
これはパッケージに髭を生やした赤い服のキャラクターが描かれてあるので、世界的にも超有名ものだとわかる。
どうやらそのキャラがゴルフをするソフトらしいが、その買取額が銀貨30枚らしいから、これまたすごい。
たぶん人間界でブック○フなどの専門店に持っていっても、9万では買い取ってもらえないんじゃかな。
まあおれはイヌだったからわからんが、そういった事情も飼い主ジーコの頭でなんとか察するわけだ。
そこでシャムりんが口を開く。
「このバッグはどうだったの?」
それはシャムりんが地底の噴出口で拾ったものだ。
「ああ、こちらはですね、銀貨1枚です」
シャムりんの顔がキュッと険しくなる。
「だったらこれはナシで」とバッグを引っ込める。
そこにはアルファベットの「C」を組み合わせたようなロゴに「チャンネル」という文字が見える。
おれもこの手のものは詳しくないが、これってバッタもんか何かなのだろうか。
でも皮はそれなりに立派だし、もともとシャムりんは売るつもりもなく、勝手に買取品として勘定されてたみたいだから、銀貨1枚なら売らずに使おうってなるよね。
あるじは顕微鏡のようなものを使って、チャウ丸が拾い集めていた砂金を見ている。
たしか人間界で科学者のフックが複式顕微鏡を作ったのが十七世紀だったから、タンニシ王国はその時代ほどの文明があるってわけか。
ただ砂金は銀貨3枚と期待ほどの価値にはならなかったので、売らないことになった。
そしてチャウ丸が服屋で聞いた魔道具屋の話を切り出す。
「ああ、それはわたくしの店ですよ」と横から鷲顔の男が言った。
おお、すごい偶然だな。
どうやらこの方は、ここではない質屋と魔道具屋を兼任しているらしい。
ということで、こちらも解体屋同様に銀貨がたっぷり入った麻袋を差し出され、そのまま新調したチャウ丸の風呂敷袋に収めた。
魔力を宿したこの風呂敷はどんなに入れても重量は変わらないから、持ち運びも困らないわけだ。
「では行きましょうか」と鷲顔の男が言ったところで、おれたちは質屋の部屋を出た。
魔道具屋へ向かう道中にチャウ丸が言った。
「こんなに高額で売れるのなら、もっと拾っておけばよかったぜ」
「でもあのときは蔵に向かってたし、そんな余裕もなかったもんね」
あらためて地底の噴出口に戻って回収することができれば、タンニシ王国でそれなりに暮らすこともできるかもしれないが、もちろん地底への行き方はわからない。
「だいぶ潤ってきたんだし、もっとショッピングを楽しみましょ♪」
シャムさん、ほんっとお買い物、好きだよね。
女の子ってみんなそうなの?
やっぱ気分はあげあげ?
通りに見える屋台が気になるおれ。
味覚を重視した国ならではの絶品が置いてあるんじゃないか。
ほらっ、串焼きみたいなのがじゅうじゅう音を立ててまっせ?
くぅ、早く美味しいものを食べたいけど、この流れで立ち寄るのはむずかしそうだな。
跳ねるように歩くシャムりんの背中を見ていたら、、「こちらがわたくしの店です」と鷲顔の男が言った。
この世界の魔道具屋を訪れるのは初めてだが、どんなものが置いてあるのやら。
高く売れたみたいですね。。
お忙しいなかお読みいただきありがとうございます。




