第51話 ドロップアイテムを持って質屋へ
おれたちは質屋へ向かっている。
やはりタンニシの街は多くの獣人が行き交い活気があるな。
男たちがたむろして談笑している風景もある。
店を探している道中にチャウ丸が言った。
「そういや地底で魔物たちを仕留めたとき、けっこうドロップアイテムも回収したんだよな」
「そうなの?」
あのときは必死だったから、そんなものが落ちてるなんてまったく気づかなかった。
「どんなのがあるの?」
シャムりんの声を受け、チャウ丸は細い路地に入りマジックボックスから一つずつ出していった。
「すごいわ、宝石じゃない!」
消しゴムくらいの石が地面に並んでいく。
ほかにもよくわからないものがいくつか。
「これって何なんだろうね?」
味噌汁のお椀の蓋みたいなのに触れながらシャムりん。
そこでチャウ丸が言った。
「もしかすると、これでいけんじゃね?」
風呂敷から出したのは、例のスマホだ。
なるほどね、あのときは魔物を鑑定できたもんね。
でも物に対してはどうなんだろう。
チャウ丸はコバルトブルーのアプリをタッチしてからスマホをかざす。
「ほれっ、やっぱりな!」
「おおっ!」
「すごい!」
ほんとビックリ仰天だよ。
「それがサファイアでそっちがトパーズ。んで、そいつがガーネットだな」
そしてチャウ丸はべつのものにも画面を向ける。
するとこのように表示された。
【ウサギのあんよ = 機動力強化】
【ラッキー18 = 惑いを起こす】
【ダイヤの盃 = 加護の結晶】
ふーん、このスニーカーは「ウサギのあんよ」っていうんだね。
なんか妙な名前だが、だいじょうぶなのか?
「どれも怪しげだが、宝石はそれなりに価値がありそうだから、質屋に見てもらうか」
しばらく歩いたら、質屋の看板を発見。
入っていくと、壁沿いには剣や盾といった武具が陳列されてある。
そしてカウンターの先に、顎の尖ったおじさんが立っていた。
顔の形が三角フラスコを逆さにしたみたいにも見える。
「いらっしゃい」
そしてやはり「ん?」という表情が一瞬、獣人顔に浮かぶ。
毎度こんな感じなんだから、やっぱ変装グッズがあったほうがいいかもね。
いろいろ聞かれそうだから、先に解体屋で話した内容と似たようなことを伝えた。
ここまでどうやって来たのかといったことはカット。
「ということで、ドロップ品の買取ということでよろしいでしょうか」
「わりといろいろありまして」
そこであるじは逡巡してから言った。
「ではこちらへどうぞ」
おれたちは奥の部屋へ通された。
そして長テーブルの上にドロップ品を置いていく。
「おおっ、これは······。ずいぶんと回収したのですね。お見事です」
虫眼鏡みたいなのをガーネットに近づけるあるじは感動している様子だ。
「あと、これもなんですけど」
「おっ、これは〈ラッキー18〉ではないですか。しかも〈ダイヤの盃〉も。おおっ〈ウサギのあんよ〉だ、すばらしい!」
さらに質屋のあるじの感動が増したみたいだ。
「〈ラッキー18〉って何ですか?」
「おもに魔物に対し、幻惑効果をもたらして仕留めるアイテムですよ。ほら、人間界に『ラッキー』という殴り合う映画があるんでしょ? その18作目が名の由来だと言われています」
ん······?
もしや、かの有名なボクシング映画?
でもアレって、そんなにバージョンあったっけ?
もしほんとに18まで出てたら、ボクサー、ヨボヨボのじいさんだろ?
たしか主演はシルバニア・タタローンだったような······。
しかも人間界の話題を振ったのは、どうもおれらの見た目からカマをかけてるっぽいね。
そこはあえて乗らずにスルー。
とにかくルビーみたいな石の由来が、人間界の映画にちなんだことはわかりましたよ。
この大陸はどこの民も人間に憧れてるから、映画の存在も知っているのだろう。
〈ダイヤの盃〉は、水分を注いで飲むことで、魔力の回復がもたらされるとのこと。
それはかなり便利そうだな。
「あと〈ウサギのあんよ〉は、履けば快適ですよ」
えっ、それだけ?
それなりに魔波も宿っているらしいが、履く人を選ぶとの話だ。
「あっ、あとこれも」
チャウ丸は思い出したように、風呂敷から品を出していった。
それらは魔物のドロップ品ではなく、地底の噴出口から飛び出してきた品々だ。
フリスビー、カセットテープ、パチンコ台、圧力鍋、キャッチャーのレガース······
またずいぶんいろいろ拾ってたんだね。
そこには大ヒットゲーム機の本体や、かなり有名どころのソフトもある。
「おお、これはすごいですね!」
質屋のあるじの反応はドロップ品のときよりも大きい。
ほんと、おったまげたってリアクションだもんな。
やはり人間界の物は国を問わず、この世界では価値があるみたいだ。
「あっ、これはちがうか」
にぎっているのはカンフー映画のDVDだから、キングが拾ったものだね。(なんだかアチョーって声が届いてきそうだ)。
シャムりんが拾ったアイアンブラシも見える。
「それ、砂金じゃない?」
「ああ、あのとき拾っておいたんだよ」
チャウ丸、ちゃっかりしてるなあ、さすがだわ。
「これらをすべて売ったら、どれくらいになりますか?」とチャウ丸。
「そうだね、じゃあ勘定してみますので少々お待ちを」
そして算盤をたたいてからあるじは言った。
「こちらの宝石類はそれぞれ銀貨4枚。〈ラッキー18〉と〈ダイヤの盃〉は3枚で、〈ウサギのあんよ〉は2枚です。どちらも少々使い込まれているようなので。よってドロップ品では、しめて20枚となります」
タンニシ王国の銀貨1枚はヤメー3枚らしいから、日本円でざっと6万円くらいか。
「だったら、これらの品は売らないよ」と宝石以外の3つのドロップ品を指す。
シャムりんもそうしたほうがよさそうね、といった表情だ。
さっきの店主の反応のわりには、って感じだもんね。
「で、こっちのほうはどうなの?」とチャウ丸が地球のガラクタを示す。
「こちらは詳しく見させてもらいますのでお時間をいただくことになります」
「じゃあ、ちょっとブラッとしてくるよ」
行きかけたチャウ丸が思い出したように言った。
「ここって、風呂敷の修理とかもやってもらえます? ボロくなってきたんで」
「ええ、もちろん」
「だったらあたしもやってもらおうかな」
シャムりんが出したのは、召喚術がそなわったお姫様人形だ。
「どちらもお預かりしましょう」
とりあえず売る分の品の代金だけ受け取り、おれたちは質屋を出た。
「もっといくと思ってたけどな」と不満げなチャウ丸。
「でもあの謎のアイテムは、きっと値段以上の価値を発揮するはずよ」
「たしかに使い込んでいるとはいえ、魔力回復ができるならいつか役に立ちそうだな」
チャウ丸はそう言って先ほど受け取った銀貨に鼻を近づけ、そのままペロリ。
「おいっ、このカネ甘いぞ!」
シャムりんもべつの銀貨をペロリ。
「ほんとだ! タタロオもやってみてよ」
うーん、お金を舐めるのはどうなのかってなるのは、人間 (ジーコ)の衛生観念か。
まあ、いっか。
ということで舐めてみると、たしかにほのかな甘みが口に広がった。
ジーコの脳いわく、おしるこの風味に近いらしい。
「さすがは味覚を重んじる国。芸がこまけえや」
「ねえ、お洋服見に行こうよ!」
おれたちは味のする硬貨を携えて、向かいの服屋へ足を進めたのだった。




