遅れてくる幕間「指輪少女と二人の追跡者」
ラヴはただただじっとしていた。
門から漏れていた白い光も松明の赤みを帯びた揺れる光も今はもうなく、物言わぬ暗闇だけが彼女を包む。
ラヴを助けたオッカムも地割れに消えて、すでにここにはいない。
先ほど門の方から声が聞こえた気がしたが、ラヴはうまく声が出せなかった。
光がないため見えないが、落石と土砂が彼女の近くに溜まり、そのすぐ横は地割れになっているかもしれない。
彼女は自分が剃刀の刃の上に立っているような危うい状況だと判断していた。
周囲がまったく見えない恐怖、どこまで近づいているのかわからない死。
その中で彼女はただ涙を浮かべ震えていた。
そんな状態がどれほど続いただろうか。
暗闇の中に小さな音が響く。
音は遺跡内で反響して、どこから聞こえてくるのかは彼女にはわからない。
ただ、それは足音で、徐々に大きくなっていることだけがわかっていた。
その音がかなり近づいたと思ったとき、灯りが彼女の目に入った。
光明とは良く言ったもので、その灯りを見ただけで希望を感じた。
自分は一人でないと感じることができた。
ただし、相手が自分に敵意を持っていないとは限らないので刃の力を使って姿は隠しておく。
闇を削って現れたのは老人だった。
手に持っているのは松明ではなく短い棒である。
その棒が発する光は炎のように揺らめいていない。
初めて見るものだがそれが暗闇を切り開いていた。
老人は白い髪に白い髭。顔は垂れ目で少し眠そうだ。
背はかなり低く見える。
ガウスと同じくらいではないだろうか。
外套も髭や髪と同様に白く、胸に何か丸いもの刺繍されていた。
オッカムが話していたとおり、敵意は全く感じない。
遺跡の妖精だと言われても信じてしまうかもしれない。
老人は足下を手に持った棒で照らし、注意深く歩いている。
ラヴの側を通り過ぎて門の前に立ち、手をあげて照らす。
同時にラヴの周囲も照らされた。
彼女の近くまで土砂は流れてきており、地割れは先ほどオッカムが落ちたところからわずかだが広がっていた。
彼女は本当に運がよかった。
もう少し門に近寄っていれば土砂に飲み込まれていたし、離れていれば奈落の底だ。
門は完全に埋まっており、通れそうになかった。
「うむ、これは儂じゃどうしようもないの。待つとするか」
老人が声を出す。少年のように高い声だ。
ラヴのほうに歩いてきて、「よっこいしょ」と彼女の近くの土砂に腰をかける。
「ただ待つのも退屈じゃな。そちらも暇なら話をせんかね」
老人はその眠そうな目をラヴへと向けてそう言った。
彼女は慌てて自分の姿を確認する。
彼女は自分自身の姿が確認できないことを確認した。姿を消す能力はたしかに発動している。
それにもかかわらずこの老人は彼女の目をしっかりと見つめている。
「こっちに座って話をしよう。そのままでもよいが、表情の見えん会話はつまらんからのう」
その言葉に、ラヴは諦めて姿を晒した。
「こんにちは、かわいいおじょうちゃん」
老人は無邪気な笑顔でそう挨拶した。
おかしい……。
ラヴはここまでの状況を必要以上に話してしまった。
最初は老人が話していたはずだ。
自分は天井から鳥に乗ってやってきただのと冗談を言って場をなごませ、そのあとでガウスを迎えに来たと話を続け、気がつけばなぜか彼女が話すようになっていた。
そんなに喋る気は彼女になかったのだが、この不思議な老人に質問されると答えなければならない衝動に襲われついつい話をしてしまっていた。
それでいて、どれだけ話してもまったく悪い気はしなかった。
これほどおしゃべりだったとは、彼女自身思ってもいなかった。
どちらかと言えば、彼女は無口なほうだ。
たまにぼそりと呟くがそれ以外ではあまり話さない。
これは老人が非常にうまく彼女から話を聞き出していたからだろう。
少し曖昧なところは詳しく聞き出し、賛同して欲しいところで深く相づちを打ち、話すのがつらいところでは彼女を補い支えていた。
「そうか、つらかったのう」
老人は涙目で話す彼女の背をよしよしとさすっていた。
「そろそろ儂の連れが来るころじゃな。なにか他に話しておきたいことはあるかの、ラヴちゃん」
先ほどから道の奥で岩が崩れるような音が聞こえていたが、どうやら老人の仲間らしい。
老人はラヴをちゃん付けで呼ぶ。
初めはラヴも恥ずかしさを感じていたが、老人はそんな彼女の心情をかまわず呼んでくるため、もう受け入れることにした。
逆に彼女は老人をなんと呼ぶか――おじいさんだ。
そもそもラヴは老人の名を聞いていない。
名前を聞いてもよかったが、それ以上に気になっていたことがあったので彼女はそちらを聞いてみることにした。
「どうして?」
老人が首をかしげる。
「うん? 『どうして』の続きはなにかのう」
「どうして演じているの」
初めて老人の顔に戸惑いが浮かんだ。
「そのしゃべり方はわざとでしょ。どうして?」
彼女は老人の口調が最初から気になっていた。
この老人はまるで自分がただの老人であるかのように振る舞う口調で喋る。
しかし、どう考えてもこの老人はただの老人ではない。
遺跡の妖精と言われても彼女は信じる。
それが、なぜただの老人を演じているのか彼女は気になっていた。
「それは……あまり話したくないのう」
老人はそう言うが、ラヴはじぃっと老人を見つめる。
老人も諦めたように、口を開く。
「儂は――私は、十六年前に処刑された。彼女は私を擁護されたまま永逝され、友は私のために国を去った。どうして私だけが生きていられようか。しかし、『生きよ』という王の言葉、それ則ち国の法。例えどれだけ歪だとしても法は法……従わねばならぬ。それならば――私は私でなくなるしかなかったのだ」
そこまで言うと、道の奥から足音が響いてくる。
「来たようだ。ラヴちゃん、あまり私を――年寄りをいじめんでくれるかのう」
口調と雰囲気を戻し、老人は寂しげに微笑んだ。
暗闇の中から老人と同じ光る短い棒を持った人物が現れた。
ぱっとみは青年だった。
少し痩せている印象だ。
目尻は尖り獲物を狙う鳥のような鋭さを感じる。顔の雰囲気はオッカムに似ていた。
しかし、灰色のぼっさぼさの髪がその印象をくつがえし、やる気の感じられない印象をもたせてしまう。
青年はこちらに気づき、足下の地割れを軽く飛び越えラヴたちの元へやってきた。
「おぉう、爺さん。待たせちまったか」
青年の声はしわがれており、見た目以上にふけて感じた。
「いや、ちょうどこちらもよい話ができたところじゃよ」
老人はただの老人に戻っていた。
青年がその目をラヴに向ける。
睨まれたように感じ、彼女は萎縮してしまう。
「俺はゼノンだ。おじょうちゃんの名前は」
口調はよくないが、思ったよりも丁寧な出方に驚きつつ彼女は自己紹介をする。
「なに、ラヴァ……ラヴォ、エイージェ? 呼びづらいな、わりぃがラヴでいいか」
この反応はラヴを助けた彼、老人に続き三度目だったため、彼女も慣れてきて首を縦に振って承諾する。
「で、ラヴよぉ。どういう状況なんだ、こいつは」
問われたラヴではなく、なぜか老人がかいつまんで説明する。
上手に説明しているので、結果的にはそれでよかった。
ただ、なぜか老人は彼女を助けた少年についてはぼやかしていた。
「そうか、奥にガウスがいるんだな。しかも仲間が一人、落ちちまったのか」
ラヴが頷く。
「落ちたのは獣みたいな殺気の奴か」
ラヴが「よくわからないけど、たぶんそう」と曖昧に頷く。
ふぅん、とゼノンは地割れの奥を睨み付けていた。
すぐに目を離し、
「じゃあ、門の中に入ってみますか」
ゼノンはそう言って手に弓と矢を顕現させた。
ラヴがその様子を見て驚く。
「おい爺さん。説明してなかったのかよ」
ゼノンが老人に尋ねた。
「話したんじゃがのう。信じてもらえんでの」
それもそうか、とゼノンがぼやく。
「ラヴ。俺も爺さんも能力者だ。あんたが指輪に目覚めたように、俺はこの矢に目覚めた」
そう言って、矢を弓につがえる。矢尻は緑色だった。
「緑の矢は乾」
ゼノンが呟くと、矢尻が緑色の光を放つ。
共鳴だ。
ラヴは共鳴という言葉自体は聞いたことがあっても、実際に見たのはこれが初めてだった。
風切り音とともに光は弓を離れ、門に溜まった土砂に突き刺さった。
砂が流れていくような細かい雑音が土砂から聞こえてきた。
矢の周囲の岩石が徐々に剥がれ崩れていく。そして、崩れるとともに砂となってラヴたちと反対側の穴へと落ちていく。
その様子を眺めていると、ゼノンが弦を弾いて鳴らす。すると、流れていた砂はだんだんと少なくなった。
矢の打ち込んだ地点には人が通れるほどの穴ができている。
「まあ、こんだけあれば十分だろ」
老人が立ちあがり、ラヴもそれに続いて立ち上がろうとするが足がふらついた。
「おぉい! なにやってんだ!」
ゼノンが慌てて駆け寄って、地割れへと落ちかけたラヴを引き寄せた。
あと少し遅れていればラヴはオッカムやカテーナの仲間たちよろしく地割れへと落ちていた。
ラヴがぺたりと座り込む。
「そうじゃった。ラヴちゃんは足を怪我しているそうじゃ」
老人がゼノンに伝える。
ゼノンがラヴの横に膝をつく。
「見せろ」
有無を言わせなかった。
当然、ラヴは抵抗しないし、できない。
ゼノンがラヴの裾をめくりあげていき、同時に表情を硬くした。
「おぉい、ラヴ。どうしてこれを言わなかった」
ただでさえ厳しい目つきををさらに厳しくしてラヴを睨みつける。
「それは……」
彼女は目を逸らす。
「こっちを見て話せ」
ラヴはゼノンを恐る恐る見上げる。
ゼノンは表情を消してまっすぐにラヴを睨んでいた。
「迷惑をかけられないと思って……」
ラヴの言葉を受けて、ゼノンの顔は怒り、悲しみ、困惑といろいろ混ざりよくわからないものになっていた。
その表情は本来、ラヴがするものだろう。
「どうしてそんな顔をするの?」
彼女はついつい口に出す。
「ラヴよぉ。俺は、俺たちは人間なんだぜ。確かに刃で力は使えるけど魔法使いじゃねぇ。相手が何を思ってるかなんてわからねぇんだ。だからよぉ、せめて口に出して言ってくれや」
ゼノンは泣きそうな顔だった。
「たしかに出会ったばかりの人間に言えないかもしれないがよ。お前が思ってるほど世界は腐ってねぇんだ」
ラヴの足は端的に言うなら傷だらけだった。
骨近くまで達している傷もある。
「これは……治りそうかの?」
老人の質問にゼノンは怒るしかなかった。
「治らねぇよ! まず、地上じゃ無理だ。どうしてだラヴ、お前もう歩けないかもしれねぇんだぞ」
ラヴよりもゼノンのほうが先に泣いてしまいそうだ。
「痛いなら痛いって、つらいならつらいって話してくれよ。手遅れになってからじゃ、他の奴らまでつらくなるんだぜ。お前、それがわかってんのか」
ゼノンは涙を目に溜めて、声を出す。
「ごめんなさい……」
彼女の目の前で膝をつく青年は、本気で彼女のことを心配している。
それが彼女へと確かに伝わり、彼女は何も言わなかった自分への罪悪感にさいなまれてしまう。
「ほんとはね。ずっと痛かったの。でも、怪我のことを話したら邪魔だって思われて、捨てられるんじゃないかって怖かったの。せっかく私を認めてくれた人に裏切られたくなかった」
ラヴは思いを吐露していく。
「ラヴをあの胸くそわりぃ連中から連れ出した奴なんだろ。よく知らねぇがそいつなら、お前の足の怪我を見てもお前を裏切らなかったはずだぜ。むしろ、お前がその怪我のことを話さなかったことがそいつへの裏切りだ。どんな怪我かを知ったら絶対にそいつは怒るぜ」
ゼノンが声を大にしてラヴの弱音を斬っていく。
「儂もそう思うのう」
老人も短く肯定した。
しばしの間、沈黙が場をつつんでいたが、
「おい、爺さん。頼みがある」
それを断つようにゼノンが声を発し老人を見る。
「ほう、なにかの」
老人がにまにまとした表情でゼノンを見返す。
「俺はラヴをダモクレスに連れていって治療を受けさせてやりたい」
ふむ、と老人が短くうなる。演技もいいところだった。
「なぜじゃ、他にも怪我をして助けを求めている人間なら山ほどおるぞ。どうして彼女だけ特別扱いに出来る」
正論ではあるが、この老人はなぜゼノンがラヴにこだわりをもっているのかをわかって言っている。
ゼノンは、ラヴが確かに聞こえるほど歯を食いしばった。
「俺はラヴを、妹と――エレアと重ねちまった。いま、手を伸ばさないとエレアのようにもう届かないところに行ってしまう気がするんだ。俺は……それが怖い」
彼女をダモクレスに連れて行くだけならゼノン一人でも問題はない。
しかし、治療を受けさせて国に滞在させるとなると賓客の扱いだ。王だけでなく他の刃吏たちの説得も必要になる。
ラヴを賓客として扱う必要性を王たちに示すことはゼノン一人では不可能だ。彼女には強い力があるわけでもなく、国に多大な利益をもたらすわけでもない。
そう。だから、
「これは完全に俺のわがままになる。爺さん。いや――」
王たちを説得するための要員がゼノンには必要だった。
それも刃吏の位を持ち、なおかつ口のまわる人間が。
そして、そんな人物が彼の前にいた。
「第七針クラテス殿。どうか王へのお口添えを願いたい」
ゼノンは老人へと片膝をつき、深く頭を下げる。
ラヴは状況がのみこめず、老人とゼノンを交互に見つめる。
重い空気が二人の間に流れていた、と彼女は感じていたのだが、
「ええよ。儂も連れていこうと思っとったからの」
ゼノンの重々しい真剣な言葉に対し、老人はとびきり軽く返答をした。
ゼノンがハァと顔を上げる。
「ラヴちゃんはなかなかにおもしろい。他の奴らにも良い刺激になるじゃろう。それに……妹に見えちゃったのならしょうがないじゃろ」
そう言って老人はにやにやと笑う。
ゼノンは自分が謀られたことに気づき、
「こんのクソじじいぃ」
拳を震わせながら呟くものの、老人はそんなゼノンの言葉にもどこ吹く風といった表情だ。
「儂は魔法使いじゃないからのう。言葉に出してもらわんとわからんのじゃ」
ゼノンは怒りに震えていたが、諦めたようで息を大きく吐きラヴを見る。
「ってわけだから」
「……どういうわけ?」
ゼノンに話を振られたものの、ラヴは会話が飛びすぎていて理解できていなかった。
「おいおい、聞いてなかったのか。お前をダモクレスに連れて帰って、その足を治療する」
「ダモクレスって天井……えっ、ほんとに」
ゼノンが静かに頷く。
たしかに老人は天井から来たと話してはいたが、冗談の類だとラヴは思っていた。
それも当然だ。いきなり天井から来ましたなんていっても信じられるはずがない。
しかし、確かにゼノンは楽々と刃の共鳴を見せ、老人も先ほどの話で雰囲気が変わっていた。
そして彼らの纏う外套、手に持つ不思議に光る棒は彼女も見たことがないものだ。
さすがにだますためにここまで演技をすることはないだろう。
彼らは本当に天井の人間なのかもしれない。
でも――、
「いいの?」
「いいんだよ。人の好意には素直に甘えとくもんだ。ほら」
そう言って、ゼノンは彼のように背中をラブに見せる。
「今までこんな……こんなにやさしくされたことなんてなかった。しかも、一日で二回も。目を閉じて、次に開けたときには全てが夢で消えてしまうんじゃないか、また、両足を縛られて狭い部屋の中で叩かれるんじゃないかって――怖いの」
「夢じゃねぇ……夢なんかじゃねぇんだ。ラヴが胸くそ悪い目にあってきたことも、そこに手を差し伸べたやつがいたことも、遺跡が崩れてそいつらと別れたことも、俺たちにここであったことも、全部が現実だ。それに、これからのことも夢なんかにはさせねぇ。俺たちと一緒に来い」
抑えていたはずの涙がついに彼女の頬を流れてしまう。
「私、信じてもいいの……」
「いいんじゃよぉ、信じてくれてぇ」
老人が不気味に微笑む。
「黙ってろよ爺さん。でも、爺さんが言うように信じてくれていいぜ。だが、信じるだけじゃあ駄目だ。自分の思いをちゃんと口に出して行動してみせろ。足をきっちり治して自分の力で歩むラヴの姿を俺たちに見せてくれや」
ラヴはゼノンの背中に体重をかける。
「私ね。本当は痛がりなの」
「そうか」
ゼノンはラヴの足をなるべき痛まないように注意深く抱える。
「一人は怖いし悲しい。涙が知らずにこぼれるくらい泣き虫で寂しがり屋」
「そうなのか」
ラヴはゼノンの首がしまりすぎないように腕をかける。
「私に手を差し出してくれた人がね。俺をうらんでいいよって言ってくれた」
「すまん、それはよくわからねぇ」
ゼノンが首を傾げ、彼のぼさぼさの髪がラヴの顔をくすぐる。
「だから私、彼を引き留めるために『うらむわ』って言っちゃったの」
「そいつも災難だな」
そして、ゼノンは土砂の方へと足を進める。
「でも、違った。私が言わなきゃいけなかったのは――」
「ああ」
ゼノンは安定した足取りで土砂を登っていく。後ろから老人もついてきている。
「『ありがとう』だった」
彼女を背負う青年の口元が少し緩んだ。
「……きっとそいつはとびきりの笑顔でこう返すはずだぜ」
ゼノンはラヴに顔を向ける。
「『どういたしまして』ってな」
ラヴだけがそのときのゼノンの顔を知っている。
背中から彼にそっと頷き返す。
「今からそいつにその言葉を伝えに行こうや」
ゼノンの目がラヴを見る。
その厳しい目つきをもう怖いとラヴは思えなかった。
その目の厳しさは優しさの裏返しだと気づいた。
ラヴはそんな彼の目がたまらなく好きになってしまった。
一方の老人は、先ほどから気持ち悪いくらいに黙りこくっている。
普段の会話量の一割にも満たないだろう。
ゼノンは空気を読んでいるだけだと考えていたが、そんなことはない。
老人は思案していただけだ。
正直、困ったことになったと老人は思っていた。
ゼノンと「そいつ」をここで会わせるわけにはいかなかった。
「さて、どうしたものか」
老人の独り言は誰の耳にも入らない。




