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刃なき剣の旅路  作者: 雪夜小路
遺跡
27/53

彼女の権利とその行使

 しばらく道をあちこちと歩いているうちに行き止まりにたどり着いた。

 道の広さから考えるに今いる道は幹線だろう。


 今までにも行き止まりは何度もあった。

 天井の崩落や床が崩れているものばかりであったが、ここはそのパターンから明らかに外れている。

 時間の流れのためか、壁や床にひび割れは多数見られるが崩れはほとんど見られない。

 今まで見た道の中で最もきれいな道だ。




 行き止まりとなっている壁は周囲のものとは材質が異なっている。

 周囲の壁が土や石の茶色みや黒を帯びているのに対して、行き止まりの壁は白っぽい。

 継ぎ接ぎのあとは見られない。

 ただ、壁の中央に天井から床までを左右に二分すると思われる薄い溝がある。

 その溝の他は特に目立った亀裂もない。一枚岩を切り取って用いているのだろう。


 間違いない。ガウスの言っていた門というのはこれだ。

 高さは俺の身長の倍以上。

 横幅は俺たち四人が手を広げても足りないほどだ。

 これを扉というには大きすぎる。


「これが門だよ。それで――」


 ガウスが顎を上げ得意げに紹介し、門の横へと歩いていく。


「ここにあるのがさっき話した文字なんだ」


 ガウスがそう言って、壁を指さす。ガウスの頭よりもほんの少しだけ高い位置だ。


 そこには小さく俺には読めない記号が書かれている。

 これが『手を』という意味を示すのだろう。


 刻まれているわけではないものの、しっかりと見て取れるほどの濃さはある。

 たしかにこれを今まで見逃していたというのは少しおかしな話だ。

 まるで浮き上がってきたようだと言っていたのもうなずける。


「昔の文字で『手を』って書いてあるんだけど、手をどうすればいいのかがわからないんだよね。調べる時間もなかったし……」


 ガウスの横に立って特に深い理由もなく、ただ何となく俺は『手を』と書かれている文字に指を伸ばした。


 指先が触れたかどうかという瞬間、


「いッ――」


 ッつ!


 指先に痛みを感じ反射的に手を離す。針が刺さったような鋭い痛みだった。

 しかし、指を見ても特に刺さったあとはなく血も出ていない。


「どうしたのお兄ちゃん」

「いや、なんか痛みが……」


 ガウスも文字に恐る恐る指を触れるが特になにもないようだ。

 指に続いて手のひらを文字にべたべたとくっつけている。

 壁の表面に小さなささくれができていたのかもしれない。


 念のため……というよりも気になったので、もう一度だけ文字にゆっくりと手のひらをつける。


 手のひらから冷たい気配が流れ込んでくる。

 手を離そうとしたが、手のひらが氷に触れたようにくっつき離れようとしない。


 オッカムの剃刀やトリカの鏡、ラヴの指輪。それらの刃が自分に向けられたときと同じような気配が俺を包み込んでいく。

 自分の中が浸食されていくような気持ち悪い感覚。

 それが手を触れている文字から……いや違うな、文字じゃない。

 文字のさらに奥にある何か得体の知れないものから流れ込んできている。

 自分の中のなにか――直感(だろうか?)がそう指し示している。


 その奥にある何かに触れてみたくなり、自然と手に力を入れ壁を押していた。

 もちろんただの壁なのだから動くはずもないと思っていたが、壁はわずかではあるものの石と石が噛み合わさって挽く低い音とその振動を手から伝える。


 これは、動く……!


 そう感じ全力で押してみようと思ったとき、


「ルイーゼ」


 背後からオッカムに声をかけられ手が止まる。


 我に返って壁から手を離して振り返る。


 トリカとガウスこちらを心配そうに見つめている。

 いや、トリカは俺を見ているが、ガウスは俺じゃなくて俺の押した壁を見ているな。

 一方、声をかけたオッカムは俺を見ずに来た道を見つめている。

 その左手には剃刀、右手にはナイフがそれぞれ握られている。




 ああ……文字とその奥にある何かに気を取られていたが、いまなら自分でもわかる。


「いるね」


 はっきりとした数はわからないが、俺たちを見ている人間がいる。

 二人や三人ではないだろう。

 こちらの様子を暗闇からうかがっている。友好的とは言いづらい雰囲気だ。


「サリー、刃を消しておいてもらえないかな」


 オッカムは俺のことを偽名で読んだ。

 それならこちらも偽名で返す必要があるだろう。


 オッカムは考えた様子だったが、

「俺たちは交渉に来たんだろ。武器は必要ないはずだ」

 という俺の言葉を受け、しぶしぶながらも剃刀を消し、ナイフもしまってくれた。


 彼女は先ほどここへ向かう途中で、ホルダー集団との交渉は「ほぼ」全面的に俺とトリカが受け持つことを認めてくれたいた。

 ほぼ、とつけたように最終的な決定権は第三部隊隊長オッカムことサリーが持つ。




 暗闇にいる人たちは友好的と言いがたいが、それも当然だ。

 彼らは(おそらく何の罪もなく)能力者というだけで軍の人たちから追われる立場の人間なのだ。

 この途方もない暗闇の中で軍に追い詰められ、出られない状況にある。負傷し、仲間も失っているのかも知れない。

 得体の知れない俺たちに対して警戒心を持つのは必然と言えるだろう。


 俺たちはそんな彼らと話し合いをしにきた。

 彼らとともにこの暗闇から脱出しにきた。

 そして、彼らと俺たちが同じ道を日の光の下で歩めるか模索しにきたんだ。


 それならば、自分たちの振る舞いを彼らがどう思い、感じるのかを意識する必要がある。

 どちらかが有利・不利、優・劣、上・下、能力の有無といった意識――心の中にある傲慢を抑える自制心、さらに相手を思う謙虚さを持つべきだ。

 この思いがなければ互いになければ人同士うまくいくはずがないだろう。


 そのためにはまず、こちらに闘う気がなく、互いに対等の立場として話し合いを始めたいという姿勢を見せなければならない。


「俺たちは刃の解放軍ラーミナ・リベラティオのものだ。俺たちに交戦の意思はない。とりあえず、そこから出てきて話をしないか」


 暗闇に向かって俺はひとり話しかける。

 片手に松明をもち、もう片方の手の平を軽く挙げ武器を持ってないこと示す。


 さらに、彼らへと一歩踏み出す。


「俺は――」


 続けてもう一歩。


「俺たちはあなたたちの話が聞きたい」


 松明を彼らの方に掲げる。


「あなたたちの思いを聴きたいんだ」


 俺の言葉は暗闇に届いたようだ。

 彼らから放たれていた警戒心が先ほどよりも薄れた。

 闇の奥からひとつの影がこちらへと歩いてくる。

 それに続き他の気配も俺たちの方へと寄ってくる。


 こちらから見て一番手前にいた人物がこちらに近づき、俺の松明に向けて片手に持っていた棒をゆっくりと差し出してきた。

 顔はよく見えないが、体格から察するに男性だろう。

 俺もその棒に松明を寄せる。俺の持つ松明の先端と彼の持つ棒がしばしのとき交差する。


 彼が手を引き、一歩下がる。その手に持った棒の先端には火が灯っている。

 その灯りを受け、彼らの姿がはっきりと見えるようになった。

 彼らは俺たちと話し合うことを認めてくれたのだ。




 相手の数は五人だった。

 兵士とやりあったときにできたと思われる怪我が目につく。

 腕を押さえるもの、足を引きずっているものもいた。


 暗くてよく見えないが松明を持つ男以外の四人は俺よりも少し年上くらいだろう。

 松明を持つ男だけが一人年配だ。

 年は三十の後半くらいだろうか。体はたくましく、顔も大きい。

 腕を怪我しているようだが、その怪我が彼を弱く見せるということはない。


 とりあえず、最初に自己紹介だ。


「俺はルイーゼ。それで、後ろにいるのが――」


 本名(ルイゼット)ではなく偽名(ルイーゼ)を伝えた。

 偽名を使うのは心苦しいが、オッカムが俺を本名で呼ばなかったということは、本名は名乗るなということなのだろう。


 トリカとオッカムについても偽名で紹介していく。ラヴとガウスは偽名を特に考えてないので本名を伝えた。

 ガウスはこちらを見ず、先ほどの壁を見つめている。


「ルイーゼというのは偽名だな」


 松明を持つ男が初めて喋る。風貌通り低く重い声であった。

 偽名だと断言され驚きが出ていたようだ。


「若いな、顔に嘘だと出ているぞ」


 自分の顔はそんなにわかりやすいだろうか。

 後ろを少し振り向きオッカムの顔色をうかがう。理解したのか彼女は小さく頷く。


「いきなり嘘をついて申し訳ない。俺の名前はルイゼット。鏡を持ってるのがトリカ。鏡に入ってる子とそこの少年は先ほど伝えたとおりラヴとガウス。そして、このちょっと目が怖いのが――」

「サリーだ」


 後ろからオッカムが俺の言葉を引き継いだ。

 どうやら本名を名乗るつもりはないらしい。


「すみません。彼女は俺の上司みたいなものなんですが、どうにも人間不信のきらいがありまして。会話も得意じゃないんで俺が話をさせてもらいます」


 そう言って軽く会釈する。

 後ろからにらまれている気がするが、目を合わせなければどうということはない。


 あちらも自己紹介をしてくれた。


「――自分はカテーナだ」


 松明を持つ男が周りの四人の名前を紹介してから、最後に彼自身の名を名乗る。


 カテーナか。偽名だろうか、女性みたいな名前だ。

 地上ではよくある名前なのかもしれないが、俺には判断できない。


「女みたいな名前」


 そんな声が聞こえた。

 一瞬、俺が無意識に声を出してしまったのかと思ったが、声は後ろから聞こえた。


 振り返ると鏡の中からラヴがぼんやりとこちらを見ている。

 ラヴ、またお前か。ちょっと空気読めよ。

 たしかにね……俺も思ったよ。でも、言っちゃだめだろ。


 カテーナを向き直り謝ろうと口を開こうとしたところで、


「でも、その名前を恥じてない」


 再び、後ろからラヴの声が届く。


 カテーナの目が気持ち大きく開かれた。

 一週間前の俺ならカテーナの表情の変化はわからなかっただろう。

 オッカムの感情を読み取ろうとしている俺の成果といえる。


「ラヴといったか、なかなかおもしろい娘だ」


 彼は小さく笑う。


「えっと、さっそく本題に入るんだけど、どうしてカテーナたちは軍に追われてたんだ」


 カテーナがゆっくりとその口を開く。

 そもそもカテーナたちは反乱が起きたというトゥリスから逃げてきたようだ。


 心情を除いて状況説明だけを抜き出すと次のようだ。




 一週間ほど前、国のやり方に不満を持つある集団が反乱を起こした。


 しかし、その反乱はあまりにも無謀だった。

 当然、軍にあっさりと鎮圧されてしまうはずだったのだが、そこにホルダーたちも便乗することで状況は混沌と化した。

 さらに他の集団も加わっていき、ますます事態に収拾がつかなくなってしまった。


 それでも、軍の力はすさまじいようだ。

 どうやら金章を持つ指揮官がいるようで、混乱は徐々にだが鎮圧されていった。


 反乱に参加していたカテーナたちも捕縛対象だったらしい。

 カテーナたちはなんとかトゥリスから逃げだしたようだが、軍に捕まった彼らの仲間が話してしまったようで、後ろからガッルスたちに追われたらしい。


 あとはガウスから聞いていたとおりだ。

 カテーナたちはこの遺跡に立てこもって、それを追ってきた軍とどんぱちをやらかした。




「俺たちはこのあとトゥリスに向かうつもりだ。カテーナたちも一緒に行かないか。反乱はもう落ち着いているらしい」


 カテーナが鈍く口を開く。


「いや……自分たちの顔は知られている。しかも能力者だともばれている。戻ることはできない」


 それもそうか。


「俺たちがカテーナたちを保護するように、トゥリスにいる保護部隊の隊長に掛け合ってみるよ」

「いいのか」


 俺は頷き、「その代わりに」、と続ける。


「カテーナたちは俺たちの組織――ラーミナに入ってもらいたい」


 カテーナの目をしっかりと見つめる。彼も俺の本意を量っているようだ。

 俺よりも高いところにあって、俺よりもはるかに多くのものを見てきたであろうその瞳から視線を逸らさない。


「どうしてカテーナたちが反乱を起こしたのかを俺はわずかにしか知らない。口にするのもはばかられるようなつらい目に遭ってきたんだろう。その状況を変えようと行動を起こしたんじゃないかな」


 カテーナは「その通りだ」と小さく頷く。


「そんな多くの苦しみを知っているはずのカテーナたちだからこそ、ラーミナに入って同じような苦しみを味わっている人たちに手を伸ばしてもらいたい」


 カテーナに一歩近づく。手を伸ばせば届く距離だ。


「今回の反乱は本来の目的から見ると失敗だったのかもしれない。だけど、多くの苦しんでいるホルダーたちに可能性を与えたはずだ。その可能性を俺たちと共に実現させて欲しい」


 ついでに、もう一つだけ話しておきたい。


「それに今回の反乱はもう一つの可能性を示した」


 これにはカテーナもよくわからないといった様子だ。


「能力者とそうでないものが手を取り合えるかもしれない」

「それはない。互いに都合がいいと便乗していただけだ。奴らに俺たちの思いはわからん」


 即座に返される。


「たしかに便乗していただけのものもいるだろう。でも、カテーナたちの思いをわかっていた人たちもいたはずだ」

「……どうしてそう言える」


 言わなくてもいいかと思っていたが、やはり言うことにした。

 しこりが残りそうなことは先に片付けておくべきだ。


「俺が能力者じゃないからだ」


 俺でもわかるくらいカテーナたちは明らかに驚いている。


「俺はカテーナたちの正確な思いはわからない。でも、わかりたいとは思ってる。だから、話をした。さっき俺の推測にカテーナは『その通りだ』って頷いたよね。少なくとも話し合えば思いは伝わる」


 カテーナの手に小さな輪が無数に繋がっているものが現れる。

 それは紐のように手からこぼれ地面にだらりとぶら下がっている。


 鎖だ。

 その無数の金属の輪は互いにこすり合わせる音を鳴らしている。


 この鎖がカテーナの刃だろう。

 後ろでオッカムが動く気配を感じたが、手を横に小さく掲げてその動き止める。

 カテーナが軽く手を振るうと鎖は獣のように飛び上がり、俺の首にぐるりと巻き付いた。鎖から、オッカムの剃刀やトリカの鏡のような殺気とも取れる嫌な気配は伝わってこない。

 鎖は生きているかのように動いたが、おそらく能力によるものではない。

 カテーナ自身の技術だろう。鎖が飛んでくるときも巻き付くときも音はほとんど聞こえなかった。

 その熟練の技には素直に感服してしまう。


「本気で言っているのか」


 カテーナが尋ねてきた。彼の目は本気だ。

 少しでも俺の心に偽りがあれば、この鎖はきっと俺の首を絞めあげるだろう。


「もちろんだ。たしかに、思いを伝えたからといって必ずわかり合えるとは限らない。でも、話し合う前からその可能性を否定したくないんだ」


 言い切った。首に巻き付いた鎖など意に介さない。思っていることを思ったままにはき出した。


 まあ、話す前に手が出ることの多い俺だ。説得力はないかもしれない。

 しばらく目線を交わしたあと、カテーナの手から伸びる鎖が消えた。

 俺の首に当たっていた冷たさもなくなった。首を通る空気の涼しさを感じる。


「……本気のようだな。顔にも目にも虚心はない。しかし――若いな」

「そうさ、そんな若い奴らたちがこれからの世界を築いていくんだ。それなら世界は変わると思わないか。そんな世界に一緒に手を差し出してみたくないか」


 そう言って俺は彼に手を伸ばす。

 カテーナが少し考え様子のあと、俺の手を取ろうと彼の手を伸ばしたところで、




「待て」


 後ろから制止の声がかかった。

 俺たちの手はあと少しで触れるというところで止まる。

 声をかけたのはサリーことオッカムだ。


 ……またか、またこの流れか。


 今日はことごとく彼女に出鼻をくじかれている。

 いつも以上に静寂を保って話を聞いていたが、ついに最終決定権をもつ彼女が声を出した。


 首を自分でも気持ち悪いくらいにゆっくりと彼女の方へ回し、どうしたのか尋ねる。


「ええと、なんでしょうかサリーさん」


 いま、とてもいいところだったんですがね。

 まさかここまできて、さすがに「この話、なかったことに」とはしないだろう……。

 しかし、嫌な予感はしている。得てして悪い予感は当たるものだ。


「その手を交わす前に聞いておきたいことがある」


 俺とカテーナの手をちらりと見たあと、その視線は俺を通り越してカテーナの方へと向く。その目はいつも以上に鋭く見えた。

 カテーナのほうへ向き直ると、その鋭い目にまったくひるんでいる様子はない。


「トゥリスで起きた反乱の首謀者を知っているな?」


 カテーナは少しためらいつつも「知っている」と答えた。


「お前たちはそいつの仲間だな」


 カテーナは俯き、「ああ」とだけ漏らす。


「それなら、どうしてお前たちはここにいる」


 カテーナたちは「それは……」と言葉を濁した。

 オッカムはとどめを刺すように、


「お前たち――」


 彼らの曖昧さを削ぎ落とすように、


「仲間を見捨てたな」


 そう告げた。




 カテーナたちは否定しない。目線を足下に落とし、黙りこくっている。


 オッカムはそれを肯定ととらえたようだ。

 そうか、と一言だけ発し、


「今回の話はなしだ。我々はここから出てトゥリスに向かう」


 そう言うとこちらへ歩き出し、俺たちを素通りしてそのまま来た道を帰ろうする。


「ま、まってくれよサリーさん! どうして!」


 唖然としていたが、我に返って彼女の背中に問いかける。


「一度でも仲間を見捨てたもの、裏切ったものは信用できない」


 こちらを見ることなく淡々と答える。


「でも……でもそれなら、トリカやラヴだって軍を辞めた裏切りものになるじゃないか」


 オッカムが顔だけ俺に、いや違うな、後ろのトリカとラヴに向けた。


「トリカ、それにラヴ。軍にいた連中はお前を仲間として認めていたか。お前たちはそいつらを仲間と感じていたか」


 オッカムが問いかける。

 俺も振り返った。


 トリカと彼女の鏡に映るラヴがこちらを見ている。

 ちなみに、ガウスは完全にこっちの話から外れて、遺跡の壁をべたべたと触っていた。


 そして、トリカとラヴの二人は静かに首を横に振る。そこに迷いは全くない。


 それはそうだ。

 彼女たちがやつらを仲間だと感じているわけがない。

 冗談でも仲間だと思っていたなんて言って欲しくない。

 そんな彼女たちだからこそ、あの糞みたいな中に一人でいた彼女たちだからこそ俺は手を伸ばしたんだ。


「そういうことだ。彼女たちは『仲間』を裏切ったわけじゃない」


 後ろからオッカムの声がかかる。


「だが、こいつらは違う。『仲間』を見捨てた」


 彼らを一瞥し、


「そんな奴らと――手は組めない」


 完全に見切りをつけた。

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