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電妖のフェアリーテイル  作者: 双星天魚


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契約者

「では改めて、事の経緯を確認させていただきます」


 ダンジョンから出て、警察なのかなんなのかわからない少女に拘束、連行された俺はどこか良くわからない場所で取り調べのようなものを受けていた。


「名前は荒守ムジナ、年齢は十四歳、五年前にそれまで住んでいた孤児院から帰りの通学途中に失踪し、以後、あのダンジョンがあった廃村で一人暮らしていた……間違いないですね」

「そうだよ、失踪の理由も話したろ」

「ええ、孤児院で行われていた暴力に性的なもの、さらには違法な人体実験のための孤児売買に気づいたために失踪。これについては当時、ワイドショーでも取り上げられるほどに注目を集めた事件でしたし、帝国警察の不祥事として界隈が大盛り上がりしたことを覚えてるので、嘘ではないでしょう」


 どうやらあの孤児院は俺の失踪がきっかけでだいぶ社会のメスが入ったようだ。ザマァみろと内心舌を出したくなった。


「そしてこの失踪していた五年間、ダンジョンに潜ることで食料や飲料水を確保していた、と。当時、小学校中学年ぐらいでしたか?よく今まで生きてこられましたね」

「まぁ、運が良かったのは認めますよ」


 正直、死にかけたことなんて両手両足の指では足りないくらいだ。


「そして今日、ダンジョンに入って食料を確保しに行ったところ、魔獣の中でも『神獣』と呼ばれる存在と遭遇、彼らはそれぞれスコルとハティと名乗った……合ってますか?」

「あぁ、そんなに有名な存在なのか?」

「いえ、『神獣』の中ではかなりマイナーな存在ですよ二体とも。しかし二体が揃っている場合の危険度はかなり高いため、温厚な個体……それも消滅するダンジョンで自らも消滅するために移動してきたという話からして、かなり運が良かったですね」


 そもそも確認された個体数もそれぞれかなり少ないらしく、両方が揃っている場合はそれこそ片手の指で足りるほどだそうだ。


「そして紆余曲折あって、その二体の神獣と食事し、その結果としてその両腕の証……契約者となった、と」

「それはそうなんですけど……契約者っていうのはいったい?」


 確かにあの二匹と契約をしたというか、ぶっちゃけ彼らが勝手に契約してきたのだが。


「……貴方も遭遇したように、魔獣、それも神獣クラスの強大な存在は人の言葉を理解できる知能があります」

「それは……確かにそうでしたね」

「えぇ、そんな彼らに認められ、何らかの形でその力を譲り受けたり、渡されたりした存在が契約者であり、人でありながら契約した存在の力を扱える、異文派からも機巧派からも一目置かれる存在です」


 曰く、存在事態が異文派からすれば異世界的進化であり、機巧派からすれば科学的に証明できない現象の体現だそうで、この『帝国ヤマト』でなければまず間違いなく身柄を狙われることになってたそうだ。


「ふーん……」


 とはいえ、確かにすごいとは思うが、成り行きで手に入れてしまったものに価値があると言われても、まして狙われかねない危険物を渡された身としては首を傾げるしかできなかった。


「……どうやら、あまり興味がないようですね」

「まぁ、言ってしまえばぶっちゃけ、餌付けしたらお礼に渡されたみたいなもんですから、ありがたがれって言われても……ねぇ?」

「言いたいことはわかります、が、実際問題として命を狙われる危険性はかなり高いです。何せ、世界初の()()()()()ですからね」

「……世界初?」


 思わず聞き返した言葉に、目の前の少女は呆れながら、しかし同時に真剣な顔で頷く。どうやらマジらしい。


「もともと、ハティとスコルという神獣は二体一対の存在として扱われる神獣です」

「つまり、人間で言うところの二人一組みたいな?」

「そうです。ですので、契約の際に二体同時に行われる可能性事態は存在していましたが、そもそもハティとスコルの契約に成功したという事例が今回が初なうえに、似たような二体一対の神獣というのがかなり希少例でして、正直、狙われる理由が時間経過で増えていく可能性のほうが多いでしょう」


 その一言に俺の表情はかなり面倒なものになったのは自覚できた。


「え、てことはもしかして俺、これからずっと軟禁生活とか?牢獄みたいな場所で実験体みたいな扱いされるの?」

「……可能性としては低くないかと」

「ふざけんな!!」


 もしそうなるのなら暴れてでも逃げる覚悟がある。最悪、どっかのマイナーダンジョンに潜って二度と戻らない覚悟を決めるぞ。


「ですが、もうひとつだけ手が無いというわけでもないんです」

「……身の危険は無いんだろうな」

「今まで生きてきた生活よりはマシになるかと」


 胡乱な表情のまま続けさせると、彼女はなにやら封筒を取り出し、そこからパンフレットを取り出す。

 そしてその表紙に書かれていた施設の名前には聞き覚えがあった。


「これって、たしか『国電妖』の……」


 『国電妖』……正式名称『国立電妖派異端科学研究大学』と呼ばれる、国内で三つある派閥系大学の一つ、文字通り『電妖派』の国内における中心活動拠点だったはずだ。


「えぇ、これはその『国電妖』の高等部のパンフレットであり、私自身もそこの生徒です」

「……アンタ、生徒だったのかよ」

「えぇ、これでも初等部のころから通っていますし、こうして表向きの機関にも所属してる、それなりのエリートではありますよ」


 ニッコリと笑っているが、正直胡散臭いというか、絶対あくどい何かを考えてるに決まってるという表情が見え隠れしていた。


「……言っておくが、俺は多分戸籍抹消されてるだろうし、何より小学校中学年からこうして逃げるような孤児生活してたんだ、マトモな勉学なんてできないぞ?」

「そうですね、そこは現状期待していませんし、理由も理解できます。ですが、私達としても神獣の二重契約者という、これ程までに確保したい研究対象は存在しない。ゆえに、ある程度足下は見るかもしれませんが、可能であるのなら平和的交渉で身内にしたい」

「本音は隠さないんだな」

「その方が好ましいでしょう?」


 なるほど、


「こっちの条件を幾つか飲むなら受けてもいい」

「伺いましょう」

「まず寮でも賃貸アパートでも良いから、人間的な生活が最低限送れる部屋と設備をくれ。可能なら一人部屋ないし一人暮らしができると助かる」

「当然でしょうね、他には?」


 俺はそう言うと懐に着けたままだった、収納ポーチを見せる。


「これの所持の許可と、中に入っているものの所有権、認めてもらえるのなら入ってる素材の幾つかを、売却したい」

「収納ポーチですか、一応聞きますが、収納の効果内容は?」

「少なくとも時間経過がほとんどしないうえに、少なくとも俺が身に付けていたボロボロの剣、あれが最低でも三桁は入るうえに、換金用の素材も五年間でとんでもない量が入ってる」


 ちなみに時間経過についてどう調べたのかといえば、あのダンジョン、壊れかけだったこともあって入る度に中が違ったのだが、その中でとんでもない極寒の洞窟だったときがあり、そこの氷柱を何本か持ち帰った。

 そしてそれが数週間経っても溶けた形跡が全くなかった事から、肉や木の実、野菜などを収納し、結果、時間の経過がほとんどしないということが判明したというところだ。

 ただしそういう鑑定ができるわけじゃないので一応ほとんどしないという、と言ってはいる。


「なるほど、では後程こちらから連絡を入れ、ダンジョン協会のほうで正式に買い取りをしてもらいますので、その際に中身の提出をお願いします」

「まぁ二束三文程度の値段だろうけど、まとまった金額にはなるといいかな」

「それは素材次第ですね。他に何かありますか」


 その言葉に俺は少しだけ表情を真剣にする。


「最後に二つ、まずは俺に多少の勉強を教えてもらえると助かる。事情が事情な裏口入学になるのかもしれないが、それでもバカにされない程度の多少の学力は必要だろう」

「それは……まぁ検討しましょう、もうひとつは?」


 そう言って俺は契約が刻まれた手のひらを見せて、


「この契約とやらの内容を調べるためにどっか壊してもいい場所とかって無い?」


 当然ながら怒られた。わかっての発言とはいえ、同年代女子からのお説教は少しだけキツかった。

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