第7話 ライブ帰りのクリームソーダ
カランコロン♪
ドアベルが鳴る。
木の香り。
コーヒーの香り。
どこか懐かしい空気。
「……マジかぁ……」
立ち寄った喫茶店の片隅で、スマホを見ながら落ち込む。
たった今、ネットに流れてきたのは、推しのアイドルが電撃結婚&グループの解散を発表したというニュースだった。
外は晴れてるのに、心の中は土砂降りだよ……。
窓から見える外は快晴。
でも、なんだか曇りフィルターがかかっているみたいだった。
「お待たせいたしました」
こと、と目の前に置かれたのはクリームソーダ。
しゅわしゅわと軽い音をさせているソーダにバニラアイスが乗っている。
アイスの上には、ミントの葉とサクランボ。
添えられていたスプーンでアイスをひと口すくう。
甘くて冷たいなぁ……。
そういえば、昔、推しのライブに行った時。
帰りに友達とコンビニで『クリームソーダ』味のアイス、食べたなぁ。
推しがCMしてたあのアイス。
その時、カランコロン♪とドアベルが鳴り、ひとりの若い男性が飛び込んできた。
「ちょっと聞いてよ陽菜さぁ~ん!!」
「あら、蒼生くん、いらっしゃい」
カウンターの中で、にこやかに返事をする『陽菜』と呼ばれた女性と派手髪の男性。
『蒼生』と呼ばれた青年は、カウンター席に座る。
「推しがさ!結婚&解散発表したんだけど!マジ凹む!!」
あ……同じだ、とこっそり思う。
「あぁ、蒼生くんが好きなあのアイドルの」
「そう!」
「でも蒼生くんは他にも好きな推したくさんいるでしょ」
「そうだけどさぁ。まぁ、でも……」
蒼生という青年は、出された水をごくりと飲んだ。
「推しとの思い出が消えたわけじゃないし、好きだからこそ幸せになってほしいけどね」
そう言って、笑う。
「蒼生くんらしいね」
陽菜という女性も笑う。
その時、スマホが震えて友達からメッセージが届く。
『ニュース観た?めっちゃショックなんだけど ( ノД`)シクシク…… 』
こっちもか(笑)
溶けかけたアイスと混ざったソーダを飲み込む。
甘いなぁ……。
そういえば、ライブ帰りに食べたあのアイスもこんな味だったよね。
そう思いながらメッセージに返信する。
『見た!ほんとショック!
……ってか今日あのアイス買ってそっち行くから推し語りしよう!』
送信して、スマホをしまう。
カウンター席をちらりと見る。
派手髪の青年はもう違う推しの話をしているようだった。
溶けたアイスと、炭酸の抜けたソーダはただ甘い。
今日は暑いから、あのアイスもきっと美味しいだろう。
快晴の空を見上げてそう思った。




