↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/15

第4話 嘘つきな大学生とたまごサンド

カランコロン♪

ドアベルが鳴る。

木の香り。

コーヒーの香り。

どこか懐かしい空気。


『嘘つき』

彼女は僕にそう言って睨んだ。

なんのことだったのか、その時には全く分からなかったけど。

後から知った。

彼女を手に入れるために、別の男があることないこと嘘を吹き込んでいたんだと。

だけどもう、正直どうでもいい。


幼馴染に指定されたカフェの片隅で、ぼーっと座る。

窓からは花壇に花が咲いているのが、よく見える。


カランコロン♪と音がして、「待ち合わせです」という声。

そしてほどなくして、僕の前に幼馴染が座った。


「ひっどい顔」

幼馴染は僕の顔を見て笑う。

「どうせここ数日何も食べてないんでしょ?」

幼馴染が、茶色い革張りのメニューを広げた。

「あ、これいいじゃん。『たまごサンド』」

「腹減ってねぇよ」

「いいから食べるの。とりあえず一皿頼んで半分こしよ!」

「腹減ってねぇって」

「ひと口でもいいから食べなさいよ!」

「…」

昔から変わらない強引さで、幼馴染は店員を呼ぶ。


「すいません!紅茶のホットを2人分と、たまごサンドを一皿ください」

「かしこまりました」

すらりとした長身の男性店員は、会釈をするとカウンターのほうへ向かった。

あいつの新しい彼氏も背が高いらしい。

ぼんやりと、そんなことを思う。


「お待たせいたしました」

ほどなくして、目の前に置かれる紅茶とたまごサンド。

白い皿の上に、三角形に切られたサンドイッチが4切れ。

白いパンにたっぷりはさまった、たまごフィリング。


「いただきます」

ぱちん、と手を合わせて幼馴染がたまごサンドに手を伸ばす。

「ほら、アンタも!」

無理やり一切れ持たされた。


「ん~!美味しいっ!」

早速ひと口かじった幼馴染が、笑う。

仕方なく、ひと口かじる。

「…うまい」

「だよね!」

そういってパクパクと、一切れあっという間に食べてしまった。


「そういえばさ」

「何?」

「昔、あったよね。『たまごサンド』事件」

「あぁ…あったな」

「アンタが、たまごサンドのたまごだけぜ~んぶ食べちゃってさ」

「幼稚園の時の話だろ?」

「そうそう!あれ、確かアンタの家でパーティーやった時だよね?」

「あぁ、そうだったかも。母さんたちが用意してる間に、サンドイッチに挟むたまごを俺が全部食っちゃったやつ」

「それで口の周り、たまごだらけなくせに『たまごさん、ねこちゃんがぜんぶたべちゃったよ~』とか言って」

「お前も『たまごサンド食べたかったのに~』って大泣きしてたな」

「懐かし」

「懐かしいな」

「猫ちゃんが全部食べちゃったとか、しょうもないウソ」

「しょうもないとか言うな」

「嘘つきだもんね」

いたずらっぽく、幼馴染が笑う。


「…嘘つきじゃねぇよ」

吐き捨てるように言うと、幼馴染は笑うのをやめて僕の顔をじっと見た。

「知ってる。アンタは嘘つけるほど器用じゃない」

そういって、もう一切れのサンドイッチに手を伸ばす。

「ほら、あとひとつずつ。食べちゃお」

差し出されたサンドイッチに手を伸ばす。


「ねぇ、これ食べたらさ。行きたいとこ、あるんだけど付き合ってよ」

「えぇ、めんどくせぇ」

「いいじゃん、どうせ何にも用事ないんでしょ」

ぱくり、とサンドイッチにかぶりつく。

「しかたねぇなぁ」

昔から変わらない強引さで、この後の予定も勝手に決める。

思わず笑いがこぼれた。


外の花壇には、色とりどりの花が風に揺れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。