26.ロミオとジュリエット効果
「桐原、聞いて!」
私は勢いよく後ろを振り向いた。
「どうした、工藤」
「隣のクラスのカップルね、親に反対されてるんだって! 付き合うなって!」
「それで?」
「それなのに、余計に仲良くなってるらしいのよ。毎日ラブラブしてるわ!」
桐原は小さく頷く。
「それはロミオとジュリエット効果だな」
「シェイクスピアだっけ? 両家に反対されるやつ!」
「ああ。周囲から反対や障害があるほど、恋愛感情が強くなる心理だ」
詳しくはないけど、すごく燃え上がる恋だったみたいってことだけは知ってるのよね。
「制限されると、人はそれを突破したくなる。心理的リアクタンスとも関係している」
「リアクタンス?」
「〝自由を奪われた〟と感じると、それを取り戻そうとして逆に行動が強まる現象だ」
人間の心理って、不思議。
「じゃあ〝付き合うな〟って言われるほど、余計に好きになるってこと?」
「そういうケースは多いな」
「でもそれって、本当に好きなのか分からなくならない?」
「冷静に考えればな。外的圧力による高揚感を〝愛情〟と錯覚することもある。だが当人たちは障害込みで感情が高まっているから、区別がつきにくい」
うーん……錯覚なのか、本物の愛なのか。
燃え上がっちゃったら、確かに判別つかなさそう。
「じゃあ、もし私たちが〝仲良くするな〟って言われたらどうなるの?」
「……」
桐原が一瞬、言葉を止めた。
「理論上は、関係は強まる可能性がある」
「可能性ってなによ」
「個人差がある」
なんか逃げた!
「じゃあ桐原はどうなるの?」
桐原は眼鏡をくいっと上げる。
「少なくとも、言われた程度で距離を取るつもりはない」
「……!」
なにそれ。
さらっとすごいこと言ってない!?
「つまり?」
「工藤と話すのをやめる理由にはならないということだ」
心臓がどくんって鳴った。
「それって、ロミオとジュリエット効果……?」
「別に、誰にも反対されていない」
そうだけど!
もう。
だけど、人に言われたくらいで距離を取らないって言ってくれたの──すごく嬉しかった。
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*ロミオとジュリエット効果*
周囲からの反対や障害があるほど、恋愛感情が強くなりやすい心理現象。
「ダメ」と言われるほど燃え上がるのはこれかも!
ただし、障害がなくなった途端に冷めるケースもあるらしいので要注意。
でも私は、誰にも反対されることなく祝福してもらえる方が、百万倍嬉しいな⭐︎
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