25.プライミング効果
「桐原、ちょっとテストしていい?」
私は振り向きざま、桐原に言い放った。
「嫌な予感しかしないな」
「いいから。〝白〟って十回言ってみて」
「……白、白、白、白、白、白、白、白、白、白」
「じゃあ牛が飲むのは?」
「水だな」
「なんでよ!? そこは〝ミルク〟でしょ!」
「牛が飲むのは水だ。ミルクを飲むのは人間だ」
「くっ……引っかからない!」
むー、悔しい。私は見事に引っかかっちゃったのに!
「今のはプライミング効果だな」
「え?」
「先に与えられた情報が、その後の判断や行動に無意識の影響を与える現象だ」
また出た、無意識!
「つまり〝白〟を繰り返させることで、〝ミルク〟を連想させようとしたってこと?」
「そうだ。言葉やイメージは関連ネットワークで繋がっている。事前に活性化された概念は思い出しやすくなる」
「直前の言葉って、確かに影響を受けたりするわ!」
桐原が眼鏡の真ん中をくいっと上げる。
「例えば〝お年寄り〟に関連する言葉を読んだ後、人の歩く速度がわずかに遅くなるという研究もある」
「無意識に?」
「ああ」
すごい。行動にまで出ちゃうことあるんだ!
「じゃあ桐原にも〝工藤=素晴らしい〟って刷り込める?」
「露骨だな」
「実験よ実験」
桐原は少し考えてから言った。
「確かに、繰り返し聞けば印象は強化される可能性はある」
「ほら!」
「だが内容が現実とあまりに乖離していると効果は弱い」
「現実と乖離!?」
「〝工藤=静寂〟と毎日言われても無理がある」
「ひどい!」
私は頬を膨らませる。
確かに桐原の前だと、ついたくさん喋っちゃうんだけど。
「じゃあ〝工藤=一生懸命〟なら?」
「それは既に成立している」
「……え」
「だから改めて刷り込む必要はない」
心臓が跳ねる。
「な、なによそれ」
「事実を述べただけだ」
私は顔を逸らした。
そっか……私、霧腹に一生懸命って思われてるんだ。
どうしよう、にやけちゃう。
バレないように、他の言葉で刷り込まなきゃ!
「工藤=できる女!」
「……それは努力次第だな」
「あは、前向き!」
静寂よりは可能性はあったみたい?
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*プライミング効果*
直前に見たり聞いたりした情報が、その後の認識や判断に影響を与える心理現象。
関連する概念が活性化されて、思い出しやすくなったり、行動が変わったりするんだって!
つまり──
使う言葉は大事!
ポジティブワードを自分にプライミングするのもいいのかも⭐︎
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