22.スリーパー効果
「桐原、ちょっと聞いて」
私は後ろを向いて、頬杖をついた。
「昨日ね、〝このサプリだけで一ヶ月で十キロ痩せました!〟って動画見たのよ」
「ほう」
「しかも投稿者が、なんか胡散臭かったの! 背景ギラギラだし、やたらテンション高いし!」
あれ絶対怪しいって思ったのよね。
「それで?」
「昨日は〝絶対嘘でしょ〜〟って思ってたのに、今日になったら〝でも本当に痩せサプリあるのかも……?〟って気になってきちゃって!」
桐原の眉がわずかに動く。
「工藤。それはスリーパー効果だ」
「スリーパー? 寝てるの?」
「時間が経つにつれて、情報の〝信頼性の低さ〟だけが薄れ、内容の印象だけが残る現象だ」
「どういうこと?」
「例えば、〝この人ちょっと怪しいな〟と思いながら聞いた話でも、数日後には〝誰が言ったか〟より〝何を言っていたか〟のほうが記憶に残る」
「……あ」
言われてみれば、思い当たるわ。
「昨日は〝この配信者うさんくさい!〟って思ってたのに、今日は内容だけ思い出して〝そうかも〟ってなってるの!」
「まさにそれだ」
これがスリーパー!
最初は効かなくて眠ってたのに、後になって目覚めちゃったのね!
でも……
「なんでそんなこと起きるの?」
「情報の〝内容〟と〝信頼性〟は別々に処理されると言われている。時間が経つと、信頼性のタグが切れることがある」
「タグが取れちゃうの!?」
「簡単に言えばな」
私は思わず顔をしかめる。
「それ危なくない?」
「だから情報源を確認する習慣が大事だ」
「なるほど」
私はちらっと桐原を見る。
「ねぇ、桐原」
「なんだ、工藤」
ええい、言っちゃえ!
「桐原って、眼鏡がすごく似合ってて、かっこいいわよね!」
「……どうしたんだ、いきなり」
「スリーパー効果狙ってみたの」
「工藤……それはスリーパー効果じゃない」
「違うの!?」
「もう効いている」
もう効いちゃってた!!
なんかすぐに効いちゃって恥ずかしい!
「じ、実験だからね!?」
「そもそも、俺は工藤を最初から信頼しているからな」
待って……それ、私も今効いちゃった!!
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*スリーパー効果*
最初は怪しいと思った情報でも、時間が経つと〝誰が言っていたか〟を忘れて、内容だけが残り、信じやすくなる現象。
訪問販売や広告でも起こりやすい!
情報源のチェック、大事⭐︎
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