20.傍観者効果
「桐原、大変!」
私は廊下から飛び込んだ。
「どうした、工藤」
「さっき中庭で、誰かが転んでたの! でも周りに人いっぱいいたのに、誰もすぐ助けなくて……!」
「それは傍観者効果だな」
「ぼうかんしゃ?」
「困っている人がいても、周囲に人が多いほど〝誰かが助けるだろう〟と思ってしまい、行動を起こしにくくなる現象だ」
「え、逆じゃないの? 人が多いほうが助けやすそうなのに!」
「責任が分散するからだ。〝自分がやらなくてもいいかもしれない〟という心理が働く」
「そんな……」
私はぎゅっと拳を握った。
「私も一瞬、立ち止まっちゃったの。周り見ちゃって……」
「それが自然な反応だ。工藤だけではない」
「でも結局、保健委員の子が走っていったわ」
「具体的に役割がある人は動きやすい。責任の所在が明確だからな」
私はうつむく。
「私、冷たい人間なのかしら」
「違う」
その即答に、私は目だけを上げた。
まっすぐな視線が、私に向けられてる。
「工藤は助けたいと思ったんだろう?」
「うん……」
「なら、次は動ける」
なんで……そんな風に言ってくれるの?
唇をきゅっと噛むと、桐原は続けた。
「傍観者効果を知っているだけでも違う。〝今、責任が分散している〟と気づけば、自分で引き受ける選択ができる」
「……そっか」
ようやく、顔を上げられる。
今度は、胸を張れるように。
「じゃあ今度同じ場面があったら、私が最初に動くわ!」
眼鏡の奥の瞳が、ふっと優しく笑ってる。ちょっと嬉しい。
「桐原も当然動くのよね? 傍観者効果を知っているんだもの!」
「それとこれとは話が別だ」
「んもうっ」
まぁ、桐原って積極的に動くタイプじゃないものね。
やっぱり、私が頑張らなきゃ!
「だが工藤に何かあれば、俺が一番に動く」
「……え?」
それって、どういう……
「席が近いからな」
ズコーーーーッ!!
……もう。でもま、それでもいっか。
「じゃあ、私も桐原に何かあった時には助けてあげるわ!」
「……先生が来たぞ」
「あ、本当だ」
私はちゃんと前を向いて座った。
その、後ろから。
「遠くても、行く」
──!?
今、なんて言ったの!?
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*傍観者効果*
困っている人がいても、周囲に人が多いほど「誰かが助けるだろう」と思ってしまい、行動を起こしにくくなる心理現象。
責任がみんなに分散しちゃうのがポイント。
でも、〝今、傍観者効果が起きてるかも〟って気づけたら、一歩踏み出せるかもしれない!
次はちゃんと動ける人になりたいな⭐︎
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