19.コンコルド効果・エスカレーション効果
私は後ろの席を見る。
「桐原、またゲーム?」
休み時間中、ずーっとゲームばかりしてる桐原。つまんない。
「それ、面白いの?」
「ピークは過ぎたな。だがここまで育てるのに時間をかけたし、課金もしているからやめられない」
「ちょっとそれ、サンクコスト効果じゃないの!」
「違うな、工藤。これはコンコルド効果だ」
なんかキリッと言ってるけど!
絶対ダメなやつー!
「サンクコスト効果の一種だが、より極端な状態を指す」
「だめじゃない!!」
「そうだ。損失が出るとわかっていても、これまでの投資を正当化するためにやめられなくなる」
「そういえば桐原ってそのゲーム、ずっとやってるわ!」
「やめられないんだ……ッ」
もう、桐原って人に効果の説明するくせに、自分に応用できないんだから!
「ほら、もういい加減やめなさい」
「だがここまで来たんだ。新キャラのために課金を……」
「ばか、やめなさいっ! それこそコンコルド効果よ!」
「いや、これはエスカレーション効果だ。工藤」
「違うの!?」
思わず声が裏返っちゃった!
桐原はスマホから目を離さないまま、淡々と言う。
「コンコルド効果は〝やめられない状態〟だ。だが今のこれは違う」
「なにが違うのよ」
「俺は今、さらに投資を増やそうとしている。つまり〝エスカレーション〟だな」
「もっとダメなやつじゃない!!」
あ、購入の画面が!!
私は身を乗り出してスマホを押さえた。
「ここで課金したら、絶対またやめられなくなるでしょ!」
「その可能性は高い」
「わかってるならやめなさいよ!」
桐原はようやく顔を上げた。
「このキャラが出れば戦力が──」
「知らないわよ!!」
思わずスマホを取り上げる。
「はい、没収!」
「工藤」
「なによ!」
「ここまで来ると、引き返す理由より続ける理由の方が自然に感じる」
「それがコンコルド効果でしょ!」
「合っている。コンコルドはかつての超音速旅客機の名前だ。採算が取れないと分かっていても、開発にかけた莫大な費用を理由に計画を続けた」
「今の桐原、まんまじゃないの! 規模は違うけど……っ」
「……」
桐原、黙っちゃった。自分でもわかってるんだ。
今の状態がダメってことは。
「ねぇ、桐原」
「なんだ、工藤」
私は目だけで桐原を見上げる。
「桐原がゲームばかりしてたら……私、つまんないかも」
あ。言っちゃった! つい……
やばい、顔が熱いわ! 絶対赤くなってる!
桐原が、じっと私を見てる。
どうしよう、何か言い訳を……
「工藤、それアンインストールしといてくれ」
「え……いいの?」
桐原は頷く。
「工藤と過ごす時間の方が、有意義だからな」
「!!?」
なにそれ……胸のドキドキが、止まらないんだけど……!?
どういう意味!? 深い意味はない、のよね??
「……はい。消しちゃったわよ?」
「少し寂しいが、スッキリした気もするな。ありがとう、工藤」
……待って。
その笑顔、反則!!
私の心もエスカレーション中よ!?
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*コンコルド効果*
損するとわかっていても、これまでの投資(時間・お金など)に引きずられてやめられなくなる心理。
*エスカレーション効果*
損失を取り戻そうとして、さらに投資を増やしてしまう心理。悪化ループ注意!
「やめられない」がコンコルド、
「さらに突っ込む」がエスカレーション!
ゲームをやめて、私との時間をいっぱい過ごしてくれたら嬉しいな⭐︎
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