18.サンクコスト効果
「……やめたい」
私は机に突っ伏した。
「何をだ、工藤」
「この資格の通信講座。全然進んでないし、正直もう興味も薄れてきたし……」
分厚いテキストをぺらっとめくる。
「ならやめればいい」
「でも! もう三万円払ってるのよ!?」
「工藤。それはサンクコスト効果だ」
「サンク……sunkかしら。沈んだって意味よね」
「さすが工藤。よく勉強しているな」
眼鏡の奥の目が細まった。
ひゃあ! その顔禁止ー!
「そ、それで、その効果って??」
「すでに支払って取り戻せないコストに引きずられて、合理的でない選択を続けてしまう現象だ」
「うっ」
胸に刺さるわ!
「三万円払ったからやめられない、という思考がそれだ」
「だってもったいないじゃない!」
「だが、続けてさらに時間と労力を失う可能性もある」
「やめて、正論パンチやめて」
私は頭を抱えた。
「映画でもあるだろう。つまらないのに〝ここまで観たんだから最後まで観よう〟と思うやつ」
「あーーー! ある!」
「それと同じだ。過去の投資は戻らない。大事なのは〝これからどうするのが最善か〟だ」
う、確かに。
三万円はどう足掻いても戻らないのよね……
「じゃあ、どう判断すればいいの?」
「もし今日、無料でこの講座を始めるかと聞かれたらどうする?」
「……やらないかも」
「それが答えだ」
ぐうの音も出ないのよ。
「でも、少しは勉強になったのよ? 全部無駄ってわけじゃないわ」
「なら〝回収しなきゃ〟ではなく、〝得られたもので十分〟と考えればいい」
「なるほど……」
私はテキストを閉じた。
「うん、やめちゃう! ありがと、桐原」
「工藤が勉強ばかりしているのも、つまらなかったからな」
「なによ、それ」
「さぁ」
なんかちょっと嬉しそう。
三万円はやっぱりちょっともったいなかったって思っちゃうけど……
桐原のそんな顔を見られたから、いっか。
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*サンクコスト効果*
すでに支払って取り戻せないコスト(お金・時間・労力など)に引きずられて、やめ時を見失ってしまう心理現象。
「ここまでやったんだから」「もうお金払ったし」が危険サイン!
大事なのは〝これからどうするのが一番いいか〟。
過去は変えられないけど、未来は選べるもんね⭐︎
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