12.アンダーマイニング効果
「ねぇ桐原、聞いて!」
私は勢いよく机に手をついた。
「どうした工藤」
「昨日ね、ボランティアで図書室の整理手伝ったの。楽しかったから、またやろうと思ってたのに……」
「のに?」
「先生が『次からは参加者に図書カード500円分あげます』って言い出したのよ!」
「ラッキーじゃないか」
「なんか違うの! 急に『お金のためにやる人』みたいになった気がして!」
桐原は眼鏡の奥の瞳を少しだけ細めた。
「工藤。それはアンダーマイニング効果だ」
「アンダー……マイニング?」
「もともと内発的動機──つまり〝楽しいからやる〟〝好きだからやる〟という気持ちで行動していたものに、外から報酬を与えると、その純粋なやる気が弱まりやすくなる現象だ」
「え、じゃあ私がモヤッとしたのって普通?」
「ああ。自分の中の動機が〝報酬目的〟にすり替わるように感じるからな。それが続くと、逆に報酬がなくなった時にやる気がなくなりやすい」
私は腕を組んだ。
「自主的に始めたはずの家の手伝いにお小遣いが出るようになったら、次からお金をくれないとやらなくなる、みたいな?」
「そういうことだ」
「じゃあ、報酬ってダメなの?」
疑問を投げかける私に、桐原は首を振る。
「一概には言えない。最初からアルバイトのように外的報酬前提なら問題は起きにくい。だが、純粋な善意や趣味に後から報酬をつけると、アンダーマイニングが起きやすい」
「じゃあ私の〝楽しいからやる〟は守った方がいいのね」
「ああ。工藤は楽しんでいる方がかわいい」
「……え?」
ちょっと、今さらっと爆弾投下されてない!?
「な、なによそれ」
「さぁ」
ちょ、なんなのそれーーっ!?
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*アンダーマイニング効果*
もともと「楽しいから」「好きだから」といった内発的動機でやっていたことに、あとから報酬(お金・ご褒美など)を与えると、そのやる気が弱まってしまう現象。
最初から報酬目的なら問題は起きにくいけど、〝純粋な気持ち〟に後付けのご褒美は要注意!
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