11.ゴーレム効果・ピグマリオン効果
「はぁ……テスト返ってきたわ……」
私は机に突っ伏した。
赤い数字が、やけに目に刺さる。
「どうした、工藤」
「どうもこうもないわ。数学、平均以下。私って昔から数字に弱いのよね」
「工藤。それはゴーレム効果だ」
「ゴーレム……? なんか強そう」
顔を上げると、桐原の眼鏡が光った。
「周囲から〝できない〟と低い期待をかけられると、本当に成績や成果が下がってしまう現象だ」
「え、なにそれ怖い」
「例えば教師が〝この生徒は伸びない〟と思い込むと、無意識に難しい課題を与えなくなったり、指導が雑になったりする。その結果、本当に伸びなくなる」
「なにそれ、ひどいわ!」
思わず怒っちゃったけど、待って。先生はそんなことない気がする。
「でも私の場合、周囲っていうか……自分で数学無理って思ってるだけよ?」
「自分からの低評価でも同じことが起こる」
「あうっ」
刺さるわ!
「工藤はこの前、〝私はダメな人間〟と言っていただろう」
「う……言ったわね……」
「そのラベリングが続けば、自分に対する期待値が下がる。挑戦しなくなる。結果も下がる。ゴーレム完成だ」
「完成させないで!」
私は机をばんっと叩いた。
「じゃあどうすればいいのよ!」
「逆がある」
「逆?」
「ピグマリオン効果だ。高い期待をかけられると、それに応えようとして成果が上がる」
「じゃあ私に高い期待をかけなさい!」
びしっと桐原を指差す。
桐原は一瞬きょとんとしたあと、ふっと小さく笑った。
「工藤は、やればできる」
「雑!」
「工藤は要点を掴むのが早い。だから基礎を固めれば伸びる」
「……ほんとに?」
「ああ。本気でやれば平均どころか上位も狙える」
その目は、からかいじゃなかった。
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「……じゃあ、少しだけ頑張ってみようかな」
「その言葉が出た時点で、ゴーレムは崩れかけているな」
「なによそれ」
私は答案用紙を握り直した。
……もし桐原が期待してくれるなら。
ちょっとくらい、かっこいいところ見せたいじゃない。
「桐原」
「なんだ」
「私、頑張るわ!」
私のその言葉に、桐原は少しだけ笑った。
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*ゴーレム効果*
周囲から低い期待をかけられることで、本当に成績や成果が下がってしまう現象のこと。
「どうせ無理」「あなたはできない」と言われ続けると、ほんとにできなくなっちゃうことがあるんだって。
自分で自分をゴーレムにしないように気をつけなきゃ!
でも逆に、期待されると伸びる*ピグマリオン効果*もあるの!
桐原の期待……嬉しかったのは内緒⭐︎
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