10.ウィンザー効果
「ねぇ桐原、聞いて!」
私は机に身を乗り出して、読書中の桐原にぐいっと顔を近づけた。
「どうした工藤」
「昨日ね、隣のクラスの子が言ってたの! 〝桐原くんってクールに見えるけど、実は優しいよね〟って!」
「……は?」
桐原のページをめくる手が止まる。
「色々聞いちゃった。迷子の猫を探してあげたり、お年寄りの荷物を持ってあげたりしてたって」
「……別に大したことはしていない」
ふい、と顔を逸らす桐原。耳がちょっと赤いのよね。
「でもすごいわ。桐原って本当に優しいのね」
「それはウィンザー効果だな」
「ウィンザー効果?」
桐原は小さく息をついた。
「当事者よりも第三者から伝えられた情報のほうが、信頼性が高く感じられる心理現象だ」
「確かに、桐原自身に〝俺は優しいんだぞ〟って言われるより、他の人から伝え聞く方が説得力あるわね」
私は納得しながら、もう一つ聞いたことを口にする。
「ちなみにねぇ……〝工藤さんといるときの桐原くん、ちょっと楽しそうだよね〟とも言ってたわよ!」
「…………」
黙っちゃった。
数秒後、桐原はこほんと咳払いをする。
「第三者の発言だからな。信頼性は高い」
「自分で肯定しないでよ!」
私は思わず笑う。
でも、なんだか胸がじんわりあたたかい。
第三者から見た私たちが楽しそうって、すっごく嬉しい。
「ねぇ桐原」
「なんだ」
「私、桐原といると楽しいよ?」
「……それは当事者の発言だから、参考程度だな」
「素直じゃないっ!」
ぱしっと軽く腕を叩くと、桐原はわずかに目を細めた。
……今のは、参考程度じゃない顔だった気がするけど?
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*ウィンザー効果*
当事者が言うよりも、第三者が言った情報のほうが信頼性が高く感じられる心理現象のこと。
自分で「私はすごい!」って言うより、他の人に言ってもらうほうが信用されやすいってことね。
つまり……誰かが「桐原は優しい」って言えば言うほど、本当に優しい人として認識されちゃうってこと!
……もっと言ってもらえばいいのに⭐︎
あ、私が広めればいいのか! すごく嫌がりそうだけど⭐︎
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