番外・可奈寿司
ある日の夜
「お母様!私回転寿司に行きたいです!」
可奈の突然の要望。
そう言えば寿司ってあんまり食わないよな……。
可奈は魚好きだし、金もあるのになんで食わないんだ?
「可奈……いい?あの回っているのはね。どこかのオッサンの唾が飛んでいて、どこかのオッサンの脂汗が飛んでいて…………」
なんか始まったぞ。
美緒様が回転寿司嫌いなんだな。
※個人の意見です。
「これらの理由から!回転寿司は汚いのよ!」
※個人の意見です。回転寿司店さん申し訳ない。偏見というものです。
「でも……私お寿司食べたいです」
美緒はうなりながら少し首を傾げた後、何かひらめいたようだ。
「作ればいいのよ!」
沈黙。
金持ちって怖い。
ほら、可奈も固まっちゃってるよ。
「いいですね!その案!」
「いや!よくねぇわ!」
固まってたのに賛成するのかよ!?
いいわけないだろ。
「結局は俺らの唾はかかるじゃねぇか!変わらねぇよ!」
汚いという理由で回転寿司を全否定しておいて、作ればいいって矛盾してるじゃないか。
可奈と美緒は首を傾げながら言う。
『いいでしょ。家族なんだし』
「うっ……」
この2人だし説得力はないものの、圧迫感がすごい。
「それに、可奈も和也君の唾だったら大歓迎よ!」
「なにその気持ち悪い原理!俺が嫌になってきたよ!」
俺の唾を歓迎ってどうゆうことだよ。
唾なんか歓迎されても嬉しくねぇよ。
「か、関節キスって意味なら……歓迎す」
「頼むからしないでくれ!関節キスとは別枠だ。少なくとも俺はそう思ってるから」
なんで頬赤らめて唇触ってるんだよ……。
すごく……柔らかそ……じゃねぇよ!
煩悩退散!
「作るって言っても時間かかるじゃないですか。何時間なんてレベルじゃないですよ。何ヶ月ですよ?何ヶ月」
遅ければ1年かかるだろうし。
いくら金があってもそれは無理があるだろう。
「1日で充分よ。可奈、明日まで待てる?」
「大丈夫です!」
1日で完成するわけないだろ。
翌日の夜
「嘘……だろ」
俺は立ち尽くしていた。
新しく完成した寿司屋の前に。
1日で作り上げたのか?
どうやって?
金って恐ろしいな。
「さぁ!食べるわよー!」
可奈がやる気満々で店に入る。
俺もその後に続いた。
店内は綺麗に掃除されていて、ピカピカ。
厨房にはプロの職人が……15人くらいか?
どんな権力ですかね……ホントに。
「和也君!早く!」
美緒に呼ばれて席に着く。
「好きなの食べてね〜、私達はタダだから」
「あ、はぁ……」
なんか食べづらい。
なんだろう……なんというか、抵抗がある。
「遠慮しないの。ほら、可奈を見なさい」
美緒はそう言って隣にいる可奈を指さした。
頬がパンパンになるほど寿司を詰め込んだ可奈。
その姿は例えるなら……リス。
「まむまもままむまめままみも(和也も早く食べなさいよ)」
汚いな。
オッサン達よりよっぽど汚いぞ。
それに……。
「ご飯粒、ついてるぞ」
可奈の口元にあったご飯粒をとる。
可奈はみるみるうちに赤く染まった。
美緒はいつものようにニヤニヤしている。
「和也君、もったいないし、それ食べたら?」
「んー!んんーん!んんー!」
美緒の言葉に何も言えない可奈が首で反対の意を示した。
「可奈も嫌がってますし、そんなことしませんよ」
俺がそういうと何故か可奈が肩を落とした。
美緒はやれやれというふうに。
「和也君はまだまだ乙女心の勉強が必要ね」
などと言っている。
よくわからないから無視して俺も食べよう。
俺が1皿目を取ろうとした瞬間。
店の自動ドアが開き、次々と客が入ってきた。
「おっ、お客さん、たくさん来たわね〜」
美緒は地味に上機嫌。
ん?
客って来ていいのか?
「美緒様、客来ちゃって大丈夫なんですか?」
「何言ってるの和也!私達だけ楽しむわけにいかないでしょう!?」
美緒に聞いたのだが可奈が答えた。
いや、うん。その心がけはいいんだけどね?
「普通のところが唾とかで汚いからコレ作ったんですよね?客来たら意味なくないですか?」
『あ』
美緒と可奈から間抜けな声が出た。
全くこの2人は……。
「まぁ、いいですよね!お母様!」
「そうね!もういいわよ!食べましょ!」
諦めやがった……。
この店は繁盛しまくりで、その日以降も経営は続いた。
店の名前は「可奈寿司」。
そのままストレートなのだが、これほど売れるならもう少しひねった発想の方がよかったと、俺は思う。




