第二十一話 ロック鳥
レノスはコボルトの元に辿り着くと両の手を顔の脇で広げ、コボルト達への敵意がないことを示す。
そしてそれを受け入れたコボルトと会話を始めた。
「コボルトは人の言葉など話せないはずだが……レノスはどうやってコボルトと話をするんだ? 魔物は種族ごとに対話の仕方が大きく異なるとも聞いたことがあるが」
ユーマは魔王に尋ねる。
「うむ。ユーマの言う通りじゃ。我だって人の言葉を話せる魔物としか対話出来んからのう。だがレノスは別じゃ。レノスは魔物の中でもその数が少ない獣人族。そして獣人族は生まれつきどんな魔物とでも対話出来るのが種の特徴なんじゃ」
「ほう。それは有能だな」
「だからこそ非常に重宝されておる。長年魔王の側近を務め続けるほどにのう」
そしてレノスがコボルトとの対話を終えユーマ達の元へと戻り、コボルトから聞いた話を説明する。
「コボルト達は元々はここからさらに南に行った森の中で狩猟などをして平和に暮らしていたらしいのです。コボルト達は温厚な性格ですから、ひっそりとした森の中での生活は幸福そのものであったはず。しかしそれが突然現れたロック鳥によって森を追われてしまったと言っております」
「ロック鳥と言うと、大型で肉食の怪鳥型の魔物か?」
「ええ。そうです」
「それでこの巨木まで逃げてきた、と?」
「はい。ですがロック鳥もコボルト達を追ってこの巨木に住み着いてしまってようで、巨木から出るに出られなくなって困っているとのことでした」
「──魔物同士のいざこざか。正直、人の俺にとっては関係のない話だが……その顔からすると無視は出来ないようだな」
ユーマは魔王の顔をみながらそう話した。魔王の顔はいつもの少し抜けたような顔ではなく、真剣そのものであった。
「コボルトのような平和を好む魔物が我は好きじゃ。それを救わずして我は魔王を名乗ることは出来ん」
そうしてユーマ達はコボルト達を助けるため、ロック鳥と対峙することとなった。
コボルトの先導によりらせん階段を上へ上へと進んで行く。
「がぅ、がうー」
コボルト達の話によると、ロック鳥は巨木を登り切った最上層を巣としており、そこから餌となるものを探しているということであった。
「しかし我らが巨木へと向かう時には特に襲われることもなかったが、それは何故なんじゃ?」
「はい、おそらくは巨木から出る瞬間を狙っているのではないかと」
「なるほどのう。怪鳥にも多少なりとも知恵はあるんじゃな」
「ああ、お前程度には知恵があるようだな。もしかするとお前よりも賢いかもしれないな」
「なんじゃと!」
そうこうしているうちに最上層の一歩手前までたどり着いた。
この巨木内にも沢山の罠が仕掛けられていたらしいが、手先の器用なコボルト達がそれらを全て解除してしまったらしい。
おかげで一行は何の苦労もなく登ってくることが出来たのであった。
「ではいくぞ」
ユーマはそう言うと先陣を切って最上層へと足を踏み入れた。
そこには今までの巨木の幹に囲われた空間とは打って変わって、見渡す限りの大空が広がっている。
そして、ユーマ達の到着を待ちわびていたかのようにロック鳥はユーマを見つめていた。
その鳥は翼を広げ威嚇するかのような姿勢を取っている。それはまるで小さな山のごとく大きさで、異様なほどの圧が放たれていた。
その圧に当てられたコボルトは瞬時にレノスの影へと隠れてしまった。
「獲物がわざわざ食べられに来るとは。笑えるな」
ロック鳥がユーマ達に向けて言葉を発する。
「ほう。人の言葉が話せるのか。思った以上に知能があるようだ。もはや魔王以上だな」
「魔王、だと? ──そこにいるのは人との争いを放棄した腑抜けた魔王ではないか!」
ロック鳥は魔王の存在を認識すると、魔王をさげすむようにそう話す。
「ふむ。それがどうかしたかのう?」
魔王はとぼけた顔でロック鳥の言葉に答える。
「お前の腑抜け具合にはほとほと嫌気がさしていたのだ。人は餌に過ぎない。それをお前はわかっていないようだな。──だが私はついている。ここでお前を食い殺して、次の魔王の座はこの私が頂くとしよう」
「ふむ。好きにするがよい」
魔王はそう言うと、ロック鳥を挑発するかのように両の手を大きく広げてみせた。
「なめくさりやがってぇえええ!!!」
ロック鳥は魔王の仕草に激高し、両の翼を広げて魔王目掛けて突撃する。
魔王はロック鳥の突撃開始に合わせ腰に携えた剣を手に取った。その剣はユーマのそれと比べ、剣身が非常に細いのが特徴的であった。華奢な魔王には振りやすいものではあるが、魔物と対峙するには心許ないものでもあった。
そして魔王はその瞳を赤く光らせると、素振りをするかの如く、空中を切り裂くようにその剣を振るう。
「何をしている!! 気でも触れたか!!!」
魔王の剣は突撃を開始したばかりのロック鳥にはかすりもしなかったのだ。
だが次の瞬間、魔王がその剣で切り裂いた空間にひずみが生じ始めた。ひずみは魔王の剣筋をなぞるかのように広がり、その部分だけ景色が歪んでいく。
その空間は明らかに異質なもので、通常の空間とは隔絶されたようであった。
そしてロック鳥がその異質さに気付いた時にはもう遅い。ロック鳥の突撃は自身でも止めることが出来ず、両の翼がそのひずみに触れてしまう。
直後、ロック鳥はその姿勢を崩し、地面へと突っ伏してしまう。
ひずみを通過したロック鳥の両の翼は音もなく切り落とされ、そこからは大量の血が噴き出していたのであった。
「ひっひいぃいいぃいい! 私の翼がああぁああ!!!」
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