第二十話 巨木のダンジョン
祭壇から得られた情報を基に、ユーマ達は残り二つの神具を求めて最古の魔王がつくったダンジョンを目指して広々とした平原の中を南へと進んでいた。
レノスの話では全部で五つのダンジョンをつくったという。そのうちの三つに祭壇があるのではないかということであった。
しかしながら、どのダンジョンに祭壇があるのかまではさすがにわからないという。そこでユーマ達は一つずつ潰していくことにしたのだ。
「レノス、いまさらだが最古の魔王は何故ダンジョンをつくったのだ? 神具を隠す以外に何か目的でも?」
「……おそらくは魔王としての力を顕示するためだと思います。神への信仰が強まったおかげでその役目は終えましたが、当時は挑んでくる冒険者達をことごとく殲滅し、恐れさせたとも」
そうして平原の中を進む一行の視界に、目を疑うほどの光景が飛び込んでくる。
遥か遠くからでも認知出来るほどの巨木が地平線の先にその姿を現したのだ。
「あれが最古の魔王のつくったダンジョンの一つです。巨木の中をくり抜いてつくったと言われています」
レノスは巨木を指さし、そう話す。
ユーマは真剣な眼差しで巨木を見つめていた。
しかし、それとは対照的に魔王は能天気な発言をする。
「──なんだか冒険のようで楽しいのう」
心なしかその足取りも軽いように見える。
「おい。遊びではないんだぞ?」
「うむ。わかっておる。だがたまには良いではないか」
ユーマが魔王をたしなめるも、魔王はどこ吹く風と聞く耳を持たない。
「──本当にたまになら良いのですけれど。ですが、いつもよりも心なしか浮かれているように思えますね」
レノスは慣れた様子で魔王に指摘する。魔王もいたずらに笑ってそれを誤魔化す。
そうこうしているうちに一行は巨木の麓へとたどり着いた。改めてその巨木を下から見上げると、天まで届くと錯覚してしまうほどの高さであった。
巨木のには大きな扉が構えられているが、その扉にはたくさんのツルがはびこっていた。
この巨木は王都からかなり離れた位置に存在しているダンジョンだ。それ故に人からはほとんど認知されていない。そして扉にはびこるツルはダンジョンへ挑むものが皆無であることを示すものであった。
「ここから先は私も未知な領域になります故」
「ああ。構わん。──では行くぞ」
ユーマは両手を押し出すようにし、扉を押し込む。
ギシギシ、ミシミシという音がするものの、扉が動く気配はない。どうやらツルが扉へと強力に絡みついてしまっているようだ。
「魔王、たまには仕事をしろ」
ユーマは後ろでのんびりと眺めていた魔王に声を掛ける。
「お? 我の力が必要と申すか?」
「……いいから早くやれ」
「素直じゃないのう」
魔王は扉に絡みつくツルへと手を触れ、瞳を赤く光らせる。
すると、ツルがみるみるうちに枯れていく。そして終いには枯れ果てたツルは土へと分解され、風に運ばれるようにして消えていったのであった。
「どうじゃ? すごいじゃろ?」
魔王は満面の笑みで後ろを振り返る。
「さすが魔王様。──それでは行きましょう」
レノスはさらっと流すように魔王をほめた後、すぐさま扉へと手をかける。
そして力いっぱい押すように扉を開けると、その先には巨木よりも一回り小さい広場のような空間が広がっていた。
レノスとユーマは早速ダンジョン内へと足を踏み入れる。
「なるほどな。このダンジョンは巨木の中をくり抜いてつくられているのか」
「ええ、そのようですね」
「おい、我を置いていくな!」
魔王は二人に少し遅れるようにダンジョン内へと入ってきた。
広場の中央には設置された大きならせん状の階段が三人の視界に入る。
「あの階段を登っていくようだな」
「他に先へと進めそうな道もないようですし……そのようですね」
どうやらこのダンジョンは上へ上へと目指していくもののようであった。
一行はらせん階段を上へと目指して進んで行く。
そうしてしばらく進むと、ユーマ達は二層目へとたどり着いた。広さは最下層と同等ではあるものの、そこには大小様々な木々が植生されており、森の中にいると錯覚してしまうほどであった。
「……すぐに襲ってこないあたり強い敵対心はないようだが、一体何の用だ?」
ユーマは辺り一帯の森林に対して声を発する。
すると木々の影から犬が二足歩行しているかのような小柄な人型の魔物がその姿を現した。
「こいつらは──コボルトか?」
「ああ、そのようじゃのう。だがなんでこんなところに?」
「──私が話を聞いてみようと思います」
レノスはそう言うと一体のコボルトの元へと向かっていった。
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