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あの手この手で故郷防衛しちゃいます!  作者: のこりごころ
序章 目覚める者と約束
6/14

無いよりはまし?外れの多いアビリティ

「それでは、神殿に向けて出発するぞ。はぐれないようにしっかりついてくるように。」

 昨晩は馬車に泊り、昨日街をひとしきり楽しんだ村人たちは、元気な顔で村長についていった。

 歩くこと20分。神殿に到着する。

 神殿前では一人の神官が出迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいましたハテハテ村の皆様方。どうぞこちらにお進みください。」

 神官に案内されついていく村人たち。少し歩くと、祭壇のある部屋に着いた。

「初めに皆さんとでお祈りをした後、お一人ずつアビリティの儀式を行いたいと思います。」

 そういって神官は胸の前で手を組んだ。村人たちも見よう見まねで手を組む。

「では先にガト、お前が行け。」

 しばらくお祈りをした後、村長がガトに声を掛けた。

「わかった。」

 ガトは神官のいる祭壇に進み出る。

「それでは儀式を始めます。貴方のお名前は?」

「村長の息子ガトです。」

「よろしい。村長の息子ガトに新たな可能性を!」

 そう神官が言うと、祭壇が光り輝き1枚の紙が出現する。

「これで終わりました。こちらがあなたのアビリティになります。」

「ありがとうございます。」

 そう礼を言い、紙を受け取って下がるガト。

「では次の方。」



故 郷 防 衛 準 備 中



「では次はソルト!」

「はい。」

 結構な村人の儀式が終わり、ソルトの番がやってくる。ソルトは祭壇に進み出た。

「貴方のお名前は?」

「商人の息子ソルトです。」

「よろしい。商人の息子ソルトに新たな可能性を!」

 祭壇が光り、紙が現れる。

「では、こちらになります。」

「ありがとうございます。」

 ソルトは紙を受け取り下がる。席に戻り紙を見た。そこには自分の名前とアビリティが1つ書かれていた。

『ソルト・ハテハテ 移動速度上昇・中 移動速度が上がる。』

 シンプルなアビリティであるが、将来商人になるであろうソルトにとっては嬉しいアビリティであった。

「最後にシーア!」

「はい。」

 シーアが呼ばれ、祭壇に進み出る。

「貴方のお名前は?」

「農民の、娘シーア、です。」

「よろしい。農民の娘シーアに新たな可能性を!」

 同じく目の前に紙が出現する。

「!?なんでしょうこれは!」

 紙をみた神官が思わず声をだした。

「どうしたんだ?」

 村人たちがざわざわとする。

「どうしたのでしょうか。」

 村長が神官に聞く。

「あっいやっその…。」

 なにかをいい淀んでいるようであった。

「シーアに何かあったのですか?」

 ソルトも思わず声を掛ける。

「いや、その~。」

「あっこれ、名前しか、書いていない。」

 神官の隙をついて紙を見たシーアがポツリといった。

「「「「「!?」」」」」」

 みんなが驚く。書いていない、つまり彼女にはアビリティがない?

「どういうことですか神官様!」

 村長が慌てて聞く。

「すみません。わたしもわかりません。こんなことは初めてでして。」

 神官も訳が分からないといった顔で言う。

「シーアは実は16歳ではないとか?」

 ジャニアスが思いついたことを言う。確かにそれならアビリティが目覚めない理由になる。

「いえ、それはないです。アビリティが目覚めぬ者にこの紙は現れませんから。…一度神官長に相談してきますので、しばらくお待ちください!」

 そういって神官は走って部屋から出ていった。

「…。」

 静かになる村人たち。皆どのような反応したらいいのか分からないのだ。アビリティはあると便利だが、別に無くても問題ない。実際に16歳までは無くて過ごすのだから。

 しかし、ないよりはあったほうがいいのは事実なのでなんて声を掛けていいか分からないのである。

「ソルト、わたし、アビリティなかった。」

 ソルトの所に戻ってきたシーアが声をかけた。

「ああ、その気にするな。」

 婚約者であるソルトもなんて言ったらいいか分からず、とりあえず慰める。

「そうだ気にするな!俺なんて料理技術向上だぜ?大工なのに。」

「私なんか水泳技術向上よ。泳ぐ機会なんてほとんどないのに。」

 ソルトに続き、他の村人たちもシーアを励ます。

「あ、うん、気にして、ない。」 

 そんな村人に対して、本当に気にしてなさそうな顔で返すシーア。

「いや、少しは気にしろよ!」

 誰かが突っ込んだ。

「ふぇ?」

「「「「「「ぷっあはははは。」」」」」」」

 それに対して首を傾げるシーアに対して、笑いが巻き起こる。

「でもシーアらしいよな。アビリティがないなんて。」

 誰かが言った。

「本当よね~。小さい頃から何もできなかったものね~まぁ、私たちが尊大に甘やかしたせいでもあるのだけど。」

「でも、そこが可愛くて魅力なのよね~。」

「ソルト!ちゃんとシーアを守るんだぞ!」

「シーアを泣かせたら、村から追い出すからね!」

 村人たちが次々にシーアとソルトに言う。

「わかってる。シーアは絶対に何があっても守るさ。」

「「「「「「「ヒューーーーーーーーー!」」」」」」」」

 ソルトのセリフに村人たちが囃し立つ。

「それでこそ村一番の漢!」

「頼もしいわぁ。」

「シーアは本当に幸せもんだな!」

「うん。」

 シーアが笑顔で答えた。

 先ほどまでの空気は何のその。部屋中に幸せな空気が漂っていた。

村人たちの名前には最後に村の名前『ハテハテ』がつきます。

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