街でのデートはアイスと共に
「おーい!街についたぞ~。」
馬車が止まり、ガトの父でもある村長が声をあげた。
「ようやくついたか…。」
予定よりも3日遅れで街に着いた。
馬車内ではソルトを除いた全員が慣れない馬車旅でぐったりしていた。一番元気で頑丈なガトさえもぐったりしていた。ソルトは馬車に乗る機会が多くあったのでそこまでの苦痛はなかった。
「君たちはどこの者だね?」
一方先頭では村長と門番が手続きをしていた。
「私はハテハテ村の村長です。こちら証です。そして後ろの者どもは16を超えた若者です。アビリティの儀式をしに来ました。」
「そうか。今回はやけに多いな。」
「去年と一昨年は訳あって男共が参加できなかったもので。」
「なるほど。ふむ、村長の確認ができた。通っていいぞ!」
「ありがとうございます。」
手続きが終わり再び馬車が動き出す。
予定では馬車置き場に馬車をおいて、今日一日自由に過ごし、翌日神殿にてアビリティの儀式を行った後すぐに村に帰ることになっている。
馬車置き場に到着して、村人たちがぞろぞろと馬車から出てくる。
「やっと外に出られる。」
「死ぬかと思った…。」
ガトとジャニアスがそう声をあげて馬車から降りた。
「シーア、動けるかい?」
「うん。」
ソルトとシーアが手をつなぎ馬車から出てくる。
「皆の者よく聞きなさい。ワシとガトは今から領主様に挨拶しに行き、その後神殿に行って明日にアビリティの儀式をしてくださるよう頼んでくる。皆の者は今日一日は自由だがくれぐれも一人で行動しないように!」
村長が村人らにそう言ってガトを連れて行った。ガトを連れて行ったのは次期村長として経験を積ませるためであろう。
村人たちは目を輝かせながら数人グループで散っていった。ほとんどの村人にとって街は初めてなのである。
「シーア、ほらこれを被って。街には良くない連中も多いから。」
ソルトはシーアに帽子をかぶせた。少しだけでもシーアを隠すためである。シーアの美貌にあてられて、ろくでもない事をする輩が現れないようにするためだ。ソルトの本音を言うのなら、シーアを馬車から出したくはないのだが、せっかくの街だ。彼女に窮屈な思いをさせるわけにもいかなかった。
「ソルトは、この街に、来たことがあるんだよね?」
「ああ、この街だけではなく王都にも行ったことがあるぞ。」
「それじゃあ、色々知っている?」
「もちろん。何か知りたいことはあるか?」
「甘いものが、食べたいな。」
「わかった甘いものだな。こっちだ。」
ソルトはしっかりとシーアの手をつなぎ歩き出した。しばらく歩くと大通りに出る。
「人が、多い!」
シーアは見たことのない人の多さに目を丸くして驚いた。
「初めて見るとびっくりするよな。さぁ、はぐれないようにしっかりくっついて。」
そういってソルトは彼女を抱き寄せた。ぴったりとくっつき歩きだす。すれ違う人々がこちらを見るが気にしない。しっかりとこの子は自分のものだとアピールして不埒な輩を出さないようにするためだ。
「着いたよシーア。ここがおすすめの甘いお菓子を売っているお店さ。」
ソルトたちが訪れたお店は街でも人気のお菓子やだった。長い行列ができている。列に並び順番が来るのを話しながら待った。
「2つください。」
「はいよ。」
2人の番がきてソルトが注文をした。お代を払い受け取るソルト。1つをシーアに渡した。
「あそこの椅子に座って食べようか。」
お店横にあるイートインスペースに座り食べ始める2人。
「んん!?!?!」
一口パクリと食べたシーアが驚きの声をあげた。
「冷たい!甘い!」
普段大きな声を出さないシーアが珍しく大声を出した。
「ハハハハッ。これはアイスクリームっていうお菓子なんだ。」
そう2人が食べたのはアイスクリーム。辺境の村では絶対にお目にかかれない代物であった。
「うん。久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいな。」
「ソルトは、いつも、これを食べていたの?ずるい。」
シーアが少しほっぺを膨らませて言った。
「いつもは食べてなかったさ。ほら、鼻にクリームがついているぞ。」
ソルトは懐からハンカチを取り出して拭いてあげた。
「はむっはむっありがとう。」
よほど気に入ったのか一心不乱に食べるシーアであった。
その後も2人で街を歩き回り、買い物をしたり、食事をしたりして楽しんだ。
故 郷 防 衛 準 備 中
夜になり村人たちは無事に馬車に戻ってきた。
馬車の中では村人たちがそれぞれ見つけたものや体験したことを話し合っていた。ソルトたちもそれにまざりはしゃいだ。
「こらお前ら。気持ちはわかるが明日は早いんだ。今日は早く寝なさい。」
村長がやってきて叱る。
「「「「「は~い。」」」」」」
怒られた村人たちはそれぞれの馬車に戻っていき、自分の寝床で眠り始めた。
ソルトも毛布を被り寝床に着いた。
しばらくすると、各馬車から寝息が聞こえ始めた。
「(寝れないな…。)」
ソルトは寝れないでいた。
ゆっくりと上半身を起こし、自分のバックに手を伸ばした。中に手を入れリボンの付いた小さな包みを取り出した。
「…。」
馬車の隙間から入る月光に照らされた包みを優しく見つめるソルト。この包みは彼がシーアの為に買った髪飾りが入っている。昼間にシーアの目を盗みこっそり買ったのである。ソルトは村に帰ったらシーアに婚約の証として渡そうと考えていた。本当は指輪が良かったのだが、流石に高くて買えなかった。ちなみに髪飾りの裏には二人の名前が彫ってある。店員に婚約した記念だと伝えたところサービスで彫ってくれたのである。彫っている時間、シーアに気が付かせないようにするのは少し大変であったが、やってもらってよかった。
「ソルト、どうしたの?」
隣で寝ていたシーアが目を覚ましてしまった。
「いや、なんでもないよ。ちょっと眠れなくて。」
あわてて包みを隠して言うソルト。
「今日は、とても、楽しかったもんね。」
シーアがゆったりした声でソルトに話しかける。
「ああ。とても楽しかった。」
ソルトはなんとか包みをバックに戻し、再びシーアのそばで横になる。
「少しだけ、お話、しよう?」
「少しだけ、な。」
そういって2人は体を抱き寄せ少しだけおしゃべりを楽しんだ。




