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あの手この手で故郷防衛しちゃいます!  作者: のこりごころ
序章 目覚める者と約束
13/14

2人の約束

 人々に歓声が上がる中、体の傷が癒えたソルトは立ち上がった。

「?」

 足に何かがぶつかり拾い上げるソルト。それはシーアが運んでいた薬草袋であった。ソルトから流れ出た血が沁み込んでいる。

「ソルト!」

 とここで歓声の中心にいたシーアがソルトのもとへ駆けつける。彼女の持っていた剣等は光の粒となって消えていた。

「ソルト、怪我はしっかり治った?」

 シーアが顔を不安ににじませソルトに尋ねる。

「ああ、シーアのおかげで大丈夫だよ。」

 ソルトは彼女に背を向けて怪我した箇所を見せる。

「良かった~。」

「うおっと。」

 シーアが嬉しさのあまりソルトに抱き着く。

「はっはっはっ熱いなお二人さん。」

 同じく怪我の癒えたガトとジャニアス、そして村長らや兵士たちがソルトたちのところにやってきた。

「ごほん、シーアよ。先ほどのあれを教えてもらえるかな。」

 村長がソルトに抱き着いているシーアに尋ねる。

「そうよシーア!あれはなんなの?体は大丈夫なの?」

 村長と共に来ていたニブラも声を掛ける。

「うん、大丈夫だよニブラちゃん。」

 抱擁を終えたシーアが皆に向き合う。

「え~と、何から話したらいいかな。」

 シーアが考え込む。

「急に出現した剣とかは何なんだい?」

 ソルトが助け舟を出す。

「あれは『聖なる守りての武具』ていうものなの。」

「『聖なる守りて』っというとシーアのアビリティ欄に書かれていた?」

「そう。『聖なる守り手』というのはこの世界を守るための存在なの。」

 シーアが神殿で貰った紙を見ながら言う。

「世界をまもるため…。」

 ソルトが困惑する。

「シーアよ。君は何者なんじゃ。」

 村長が緊張した顔持ちで聞く。

「私はこの世界が何かしらの危機に瀕した時に世界を守る役目を持って生まれた神々の使徒。魔王がこの世界に現れたことによって私は目覚めたの。他にも4人私と同じように目覚めているはず。」

 シーアが皆を見渡しながら言った。

「神々の使徒…。」「他にも4人…。」「聞いたことない…。」

 皆が騒ぎだす。

「ソルト。私はこれからこの世界に仇為す魔王を倒しに行かなければならない。」

 ソルトの目をじっと見つめシーアが言う。

「そんなシーアが。」「魔王を倒しに。」「行くだって!?」

 村人たちが驚きをあらわにする。

「う、嘘だろシーア?」

 ソルトはそんな予感はしていたが、そう聞かずにはいられない。

「うんうん。本当よソルト。」

 首を振り否定するシーア。

「だってシーアは何もできないじゃないか!料理だってできないし、掃除だって…。なのに魔王を倒すなんて不可能だ!」

 ソルトが震える声で怒鳴る。

「うん、そうだよ。私は何もできない。私が良く分かっている。」

 シーアが顔を伏せて言う。

「私は村にいた頃から皆にすべてやって貰っていたでしょ?その時は私はそれが当たり前で悪いことではないと思っていた。」

「ああ、悪いことじゃないさ。皆シーアを大切に思っているんだ。」

 ソルトがきっぱりという。

「そうよ。皆シーアが好きだし、誰も迷惑とか思っていなかったわ。」

「俺ら男は気に入られようと必死だったしな。」

「ああ、何でもやってやるって感じだった。」

 村人たちも口々に言う。

「でもね。」

 シーアが顔をあげ、

「街に来て、魔物に襲われた時に思ったの。私は何もできないんだって。なんの役にも立たないんだって。」

「シーア…。」

「魔物から逃げる時、ソルトやガトの足を引っ張ったし、みんなが魔物たちと戦っている時も何をしたらいいか分からなかった。」

「シーア、しょうがないよそれは。」

「うん、しょうがないよね。でも悔しかった!ソルトや皆に馬車に隠れていてって言われた時、どうしようもなく悔しかった。自分は居ても邪魔になるだけなんだって!でも何も言い返せなかった。言い返せるわけがなかった!私は本当に何もできないから。」

 シーアが唇をかむ。

「そんなことは…。」

「そんなことあるよ。」

 ソルトを遮りシーアが言う。

「馬車の中で薬草を見つけた時、はしゃいで何も考えずに馬車を飛び出しちゃったの。ようやく役に立てるって。でも結局またソルトに迷惑をかけてしまった。それだけじゃない、ソルトに死ぬような怪我を負うわせてしまった…。」

 シーアが瞳に涙を浮かべた。

「……。」

 ソルトは声を発さずシーアを見つめる。

「だからね。この力が目覚めた時嬉しかったの。これでみんなの役に立てるって。ソルトの役に立てるって。だから私は魔王を倒しに行きたい!いつも私を守ってくれていたソルトと皆をこの力で守りたいの!!」

 シーアが力強く皆に宣言する。

「「「「「シーア…。」」」」」

 村人たちが彼女の名を呼ぶ。

「……っでも「ソルト。」!?」

 ガトがソルトを遮った。

「ソルト、夫なら妻の成長を祈ってやれ。」

「!?…くっ」

 ガトのいいように唇を噛むソルト。

「なら俺もシーアと共に行く!」

「「「「「ソルト!?」」」」」

 ソルトの宣言に村人たちが驚く。

「うんうん。」

 シーアが首を振り、

「ソルトは村にいて。」

 決意をこめた瞳でソルトに言う。

「シーア!」

 ソルトがどうして?っといった感じの声を出す。

「ソルトには村で待っていて欲しいの。」

 シーアが微笑みながら言う。

「私の大切な故郷で、私の帰りを待っていて欲しい。」

「だけどそれじゃあ!」

「私は大丈夫だから。だから、約束してソルト。私の大好きな村を守って欲しい。私の帰るところを、村の皆を、私たちのすごした故郷を防衛していて欲しいの。」

 シーアがソルトの目を見てお願いする。

「っ!?……。」

 ソルトはシーアの真摯な瞳に息を飲み、やがて目を閉じ心を落ち着けさせた。

 そして、目を開けシーアの瞳を見る。

「わかったシーア。約束する。君の帰る場所を、村の皆を、故郷を守る。何があろうと防衛するよ。」

「ありがとうソルト。」

 そういって2人は涙を流し、お互いを抱きしめた。

 村人や兵士たちは静かに見守る。

「でもどうするんだシーア。そのほかにも目覚めた人を探す手段だって、旅の仕方だって分からないだろう?」

 ソルトが疑問を口にする。

「それなら私たちに任せて欲しいのじゃ。」

「!?神官様方。」

 村長が驚きの声をあげる。いつの間にやってきたのかこの街の神官らが集まってきていた。

「儂はこの街の神官長じゃ。先ほど神託があり、救世主様をお助けするように命じられたのじゃ。旅の手配や他の救世主様との連絡などは儂等が引き受けよう。それでよろしいかな?」

「は、はい。シーアをお願いします。」

 ソルトとシーアは頭を下げた。



故 郷 防 衛 準 備 中



「しっかしシーアが救世主とはな~。」

 夜、馬車に転がりジャニアスがポツリとつぶやく。

 結局魔物のことやシーアの事などで村人たちはもう一泊街に留まることになった。

「びっくりよね~。」「シーアちゃん魔王倒せるかな?」「私たちが育てたんだもん、絶対に倒せるわよ。」

 他の馬車からも村人が集まっており騒がしい。話題のシーアは村長と共に今後の打ち合わせで神殿に行っていた。

「ソルト、まだ落ち込んでいるのか?」

 ジャニアスが馬車の隅でうずくまっているソルトに声を掛ける。

「別に落ち込んでいるわけではない。これからのことを考えていただけだ。」

 ソルトがむっとした声で言う。

「それにしてもシーアさ。なんか雰囲気が変わっていなかった?」

「それ思った!いつもと違ってハキハキしていたよね!」

「目もぱっちりとしていたし。」

「前のシーアは可愛らしいって感じだったけど、今のシーアは美人!って感じよね。」

「救世主って感じがするわ。」

 みんながシーアが変わったことについて口々に言う。

「ソルトはどう思うの?」

 ニブラがソルトに聞く。皆も耳を澄ませる。

「シーアがどう変わろうと、シーアはシーアだ。」

 ソルトははっきりとした口調で言う。

「流石旦那様!」「ソルトくんカッコいいわね!「ヒューヒュー。」

 村人たちがソルトを囃し立てる。

「ねぇみんな何を話しているの?」

「「「「「「「シーア!?」」」」」」」」

 シーアがひょっこり顔を出した。

「もう打ち合わせは終わったのか?」

 ソルトが尋ねる。

「うん!」

「全く、走って戻らなくても。」

「親父!」

 村長も戻ってきていた。

「それにせっかく領主さまが泊まる場所を用意してくれたというのに断るなんて…。」

「だって皆に会いたかったんだもの。」

 どうやら領主さまのせっかくのご好意を断ってきたらしい。救世主様でなければ怒りを買うところだろう。

「さっすがシーア!」「私たちの宝よー!」「よしよしよし~。」

「ちょっと~。」

 女性たちがシーアに絡みだす。

「ねぇシーア。どうしてそんなにハキハキしているの?」

 女性の1人が聞いた。

「う~んとね。力に目覚めた時に、なんか頭がすっきりしたというか、心の奥からものすごい自信とか活力が出てきたっていうか。よくわかんないの。」

 シーアが頭を悩ませながら言う。

「そうなのね。でも可愛いからいいわ!」

 といってまた女性たちが絡みだした。

「シーア亜種って感じか。」

「おいジャニアス。人の嫁を動植物の分類みたいに言うな!」

 ソルトがジャニアスを睨み切れる。

「そうよジャニアス!失礼よ。」「シーアに謝って!」「そんなんだから昔からモテないのよ!」

 女性たちからの追撃も飛んできた。

「し、シーアごめん!」

 周囲を敵に囲まれたジャニアスが青い顔で謝る。

「大丈夫だよ。でもシーア亜種ってなんかしっくりくるかも?」

 シーアが笑って許した。

「そんなことないわよ!」「ジャニアスが変なことを言うから!」「村に帰ったらみんなでお仕置きね!」

 シーアのフォローは逆効果だったらしく、ジャニアスは真っ白になる。

「シーア亜種ってなんか面白い感じがするんだけどな~略してシーシュ?」

 シーアがとぼける。

「あははは、何よそれ?」「どうせならシーナとかでしょ。」「もう可愛いのだから。」

「確かにシーナとかの方が可愛いね!」

 女性たちとシーアがきゃいきゃい騒ぐ。

「ごほん、少し静かにしてくれ。」

 村長が声を掛ける。村人たちが静かになる。

「明日のことを言っておく、明日、シーアが旅立つのを見送った後…。」

「えっ!?もうシーア旅立つのですか!?」

 村人たちが騒ぎだした。

「落ち着けお前ら!」

 ガトが喝を飛ばす。

「うむ、シーアは王都に行きより他の救世主様たちと連携が取れるようにするとのことじゃ。」

「そっか寂しくなるわね。」「シーアあぁぁぁぁ。」「今のうちにもっとハグを!」

「おほん!!そして見送った後にわしらは必要なものを揃えて村に帰る!では、今日は早く休むように!」

 そういって村長は去っていった。

「シーアぁ!」「こんなに早いなんて!」「私はこれから誰に抱き着けばいいのぉ。」

 女性たちが半分ふざけながらシーアに抱き着いた。

 それから色々騒いだ後、

「親父が言っていたように明日は早いからもう寝るぞ!」

「「「「「「は~い!」」」」」」

 そうガトが呼びかけソルトとシーア以外の村人が馬車から去っていった。

「おい、ガト達はどこにいくんだ?」

 一緒の馬車であるはずのガトらも外に出たのでソルトが声を掛けた。

「しばらく会えなくなるんだ。今夜ぐらい二人きりで過ごせ。」

 ガトが笑って言う。

「そういうことだからソルト、シーアをよろしくね~」

 ニブラもそう言って出ていった。

「……。」

「……。」

 残されたソルトとシーア。

「みんな優しいね。」

「ああそうだな。」

 笑い合う2人であった。

 

 

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