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あの手この手で故郷防衛しちゃいます!  作者: のこりごころ
序章 目覚める者と約束
14/14

物語の始まり。

「ソルト。」

 2人きりになった馬車内でシーアがソルトに声を掛けた。

「ん?」

「これ、開けて言い?」

 シーアは懐から血の付いた包みを取り出した。それは魔物からシーアを逃がす際にソルトが彼女に渡したものである。

「ああ、もちろん。」

「じゃあ、開けるね。」

 シーアがリボンをほどき始めた。ほどなくしてリボンが解け、包みが広がる。

「わぁシトランの花…綺麗。」

 包みから出てきたのはハテハテ村によく自生しているシトランの花をかたどった髪飾りであった。馬車の隙間から差し込む月の光に照らされ青白く輝く。

「後ろを見てごらん。」

 ソルトがそっと声を掛ける。

「……!私とソルトの名前。」

 髪飾りの裏に自分たちの名前が彫ってあるのを見つけたシーア。優しく名前を指でなぞる。

「ソルト。付けてくれる?」

 シーアがソルトに髪飾りを差し出した。

「ああ。」

 ソルトが微笑み髪飾りを受け取る。座っているシーアは頭を少し下げ、ソルトは彼女の白銀の髪に手を触れた。

「ここをこうして…できたよシーア。」

 ソルトの呼びかけで顔をあげるシーア。

「……!」

 思わずソルトは息を飲んだ。月光(つきびかり)に照らされて髪飾りと髪を輝かすシーアはとても神秘的であった。

「ありがとうソルト。似合う、かな?」

「似合うどころじゃないかな。」

「どういうこと?」

 シーアが首を傾げる。

「似合い過ぎて、シーアの一部になっているみたいだよ。とても美しいよ。」

「ふふっ何それ?」

 シーアとソルトは微笑み合う。

「これが2人の証。絶対にいつも付けて大切にするね。」

「それを付けて帰ってくるのを待っているからね。」

「うん。」

「それじゃあ、もう寝ようか。」

 ソルトがそう呼びかけ2人は毛布を被り横になる。

「シーア?」

 シーアがソルトに抱き着いた。

「私、ちゃんと皆を守るから…。」

 シーアが少し掴む力を強め、そう言った。

「ああ、信じてる。」

 ソルトはそう言って、少し震えるシーアの体をそっと抱きしめた。



故 郷 防 衛 準 備 中



「それでは!救世主シーナ様のご出発を記念して領主様から一言。!」

 翌日、シーアの旅立ちを祝したささやかな式典が領主主導のもと催された。まだ街は依然として荒れているが、多くの住民が式典に参加していた。昨日シーアが一番の大物を倒したことが広がっていたためである。もちろん村人たちも参加している。

 ちなみに初めてシーアをみた住民は、

「なんて美しいのだ。」「ああ、ああ、世界が救われる!」「シーア様~!」

 と涙を流していた。


「なぁソルト。」

 ジャニアスがソルトに声を掛けた。

「なんだ?」

「なんで()()()じゃなくて、()()()と呼ばれているんだ?」

 この式典中、彼女の名前はシーアと呼ばれていた。

「なんでも、今日からはハテハテ村のシーアじゃなくて、世界を救う救世主だからシーナと名乗るだそうだ。俺は反対したんだが、でも村に帰ってくるときはちゃんとシーアとして帰ってくるって言うから仕方なく。」

 今朝、シーアにそう宣言されたソルト。実は他にも、

「それに、ソルトのシーアはここにちゃんといるから」と頭に付けた髪飾りを触りながら顔を赤らめて言われたからって理由があるのだが、これはジャニアスには全くもって言わなくていい情報だ。

「本当にシーア亜種になってしまったのか。」

「だから人の嫁を動植物の分類みたいに言うんじゃねぇ!」

 ソルトはジャニアスの頭を叩いた。

「そもそもお前がそんなことを言わなければ…。」

「まぁまぁいいじゃない。」

 ニブラが2人の間に入り込んだ。

「これからシーアは世界に知れ渡るのよ。彼女の本当の名前を知るのは私たちだけってなんかいいじゃない!」

「むぅ、確かに。」

 ニブラのいいように納得するソルト。

「でもホント偽名がシーア亜種とかにならなくてよかったわ。私たちがフォローしてなければどうなっていたのやら。」

 ニブラがジャニアスの首を掴み言った。

「だからそれは謝っただろう!?」

 ジャニアスが悲鳴をあげる。

「……。」

 もちろんソルトは無視をした。

「ソルトぉぉぉぉ!」

「うるさい!」

 ジャニアスにニブラの拳骨が落とされた。

「おい、お前らそろそろシーアが出発するそうだ。」

 ガトが声を掛けてきた。


「ではみなさん!救世主シーナ様の出で立ちです!どうか盛大な声援と拍手でお祝いください!」

「「「「「「「「「「ワーーーーーーーーー」」」」」」」」」」」」」」」

 住民らの声と拍手が広場中に響き渡る。

 特設ステージに、凛々しく立っていたシーアが降りようとして村人たちの方を向いた。彼女は少し微笑んで降りて行って見えなくなった。

「それでは出発です!」

 シーアを乗せた馬車とそれを挟むように縦に並んだ馬車が進み始めた。


「シーア行っちゃったね。」

 ニブラが寂しそうに言った。

「最後手でも降ってくれたらよかったのにな~。」

 ジャニアスが不服そうに言う。

「彼女はシーアとして世界中を救うことに決めたんだろ?俺らに微笑んでくれただけで充分だろ。」

 ガトがジャニアスの肩を叩きながら言う。

「そうだ。それに別れは昨日しっかりと済ませた。寂しがることはないさ。」

 最後にソルトがそう締めくくった。



故 郷 防 衛 準 備 中



「それでは皆の者、村に帰る準備はいいな?」

 馬車にて村長が村人たちに確認する。

「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」

「では、しゅっぱ「ハテハテ村の村長よ。」?」

 村長を呼び止める人がいた。

「むっ!?領主様!?」

 呼び止めたのは領主であった。黒いひげを伸ばし。いかつい顔である。

「お前の村から救世主様が誕生したことへの祝いを持ってきた。まずはお前が前々から相談していた税の引き下げを認めてやろう。」

「本当ですか!?」

「無論。そして村では手に入りにくい薬などを持ってきた。魔物を退治してくれた礼もあるしな。」

「こちらでございます!」

 従者が村長に大きな袋を渡す。

「ありがとうございます!」

「うむ。では達者でな。」

 そう言って領主は帰っていった。

「なんか見た目に反して気前良かったわね。領主様って優しいのね。」

 ニブラがつぶやいた。

「そうか?あれは絶対裏とかがあるに決まっているぜ。」

 ジャニアスが小さくなりつつある領主を見つめながら言った。

「何を失礼なことを言っておる。」

 村長がたしなめた。

「では皆の者出発するぞ!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」

 

 こうしてとある村の村人たちは街で色々ありつつも、村へ帰ることができた。

 これから世界では魔物があふれ始め、多くの人々が襲われ、時には怪我をし、時には亡くなる。世界は恐怖の闇に沈むであろう。

 しかし心配することはない。5人の救世主様が奮闘し、いずれ世界を救ってくれるだろう。その時までは、国を越え、文化を越え、種族を越え、皆で団結し、協力し合うのだ。そうすれば救いの時まで生き残れるだろう。

 だけど忘れないで欲しい。必ずしも全員が生き残れるとは限らないということを。寒くて凍えている時、一番初めに死んでいくのは末端部分であるということを。


 救世主たちの物語が始まった。国々の物語が始まった。人々の物語が始まった。

 そして、とある王国の端にある村での物語が始まった。


ようやく序章が終わったぁぁぁぁぁぁぁ!

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