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side:ブレイド

 


 私は幼いころ、雪に埋もれているところを姫様に拾われ、ブレイドという名を与えられた。


 どうしてあの場に倒れていたのかも覚えていない。

 どうして死にかけていたのかも。


 でもきっと、親や兄弟たちから捨てられたのだと思う。


 だって私の心の中には、誰かに必要とされたかったという願いがずっとあったから。


 悲しくて、寂しくて、誰かに傍にいてほしかった。

 誰かのぬくもりを感じていたかった。


 ただひたすら、一人は嫌だと思っていた。


 そんなときに姫様に巡り合えたことは、私の生涯で一番の幸運だったに違いない。



 だから姫様にフラれたとき、世界が終わってしまったと思った。

 だって私の世界は、姫様がいなければ成り立たない。


 姫様は”ブレイド”の全てなのだ。



 成人に至るまで生きられたのも姫様のおかげ。

 騎士になれたのも姫様の存在があってこそ。


 姫様がいてくれたから、私はブレイドとしていられた。



 それなのにあの方に捨てられたら、どうすればいい?



 私はそんなに無価値な存在だろうか。いらない存在なのだろうか。


 幼いころのように、また誰にも見向きもされずに死んでいく――。


 そんな頼りのない存在なのだろうか。




「ブレイド。少しいいだろうか」

「……クロイツ様?」



 そんな風に思い悩んでいたところ、姫様の兄上――クロイツ様が私を尋ねてくださった。

 そして話された言葉に耳を疑った。



 姫様が一人、災厄のドラゴンの足止めをしに向かったと。




 私も騎士団の端くれだ。

 災厄のドラゴンがどんな相手なのかもよくよく聞かされている。


 少なくとも姫様一人で何とかなる相手ではないということも分かっていた。


 それは姫様も分かっていただろう。

 分かっていて、受け入れたのだ。


 国を、民を守るために。



 高潔(こうけつ)なことだ。

 王族として、騎士として、これ以上ないほど使命を全うしている。



 けれど私は納得できなかった。



 誰も彼女についていかなかったのかと。どうして一人で向かわせたのかと。

 彼女一人に負わせるべきことではないはずなのに……。



 ……私なら、どこへでもついていく。

 一人で死なせたりしないし、私も共に散れというのなら喜んで命を差し出すのに。



 それなのにどうして、私には声すらかけてくれなかったのだと、無力感が私を(さいな)んだ。



 クロイツ様は、姫様は私のことを思って言わなかったのだとおっしゃった。


 私に生きていてほしいからこそ自分から遠ざけたのだと。

 私のことを嫌って捨てたのではないのだと。



 私の足は、気が付くと災厄の湖のある国境へと向かっていた。



 姫様の心は嬉しかった。

 私のことを思い、守ろうとしてくれたことが。


 けれど私は姫様を守りたい。

 何からも、何をしてでも。


 その思いは昔から変わらない。

 死地に向かわせられた程度では変わることのない思いだ。



 死地にむかうのも、災厄のドラゴンと対峙(たいじ)するのも、私にとって恐ろしいことではない。


 私にとってなによりも恐ろしいのは、姫様がいなくなることだから。




 姫様が私を遠ざけるというのなら、心配されないくらいの力はつけたのだと示そう。


 そのために秘密裏(ひみつり)に修練を積んでいたのだから。




 部下だから守らなくてはいけないというのなら、ただの男になりましょう。


 貴方を愛する男であることに間違いなどないのだから。



 私がしてきた行動の結果がこれだというのなら、これからは別れる気など起こさないよう、いつだって本心をさらけ出そう。


 例え私の気持ちの大きさで驚かせたとしても、離れられるよりは数倍マシだから。



 全部伝えよう。


 私の全てを賭けてでも、姫様を失いたくない。離したくないから。



 私から離れるというのなら、私はその距離を埋めていくつもりだ。



 私はもう、遠慮するつもりはない。


 だから覚悟していてくださいね。


 絶対に一人でなんて死なせやしない。

 絶対に離さない。


 そう決めたのだから。



激重感情を抑制しようとしていた男が我慢をやめるシチュって最高ですよね。

全力で落とせよ?という気持ちで書いていました。


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