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第99話 面接の前は緊張するもの

 ラッカリカの提案はもっともだった。


 まどかさんがエピライブにとって有用かどうか以前に、そもそも俺以外の面々はまどかさんの人となりすら知らないのである。


 俺の時は色々とすっ飛ばしてスカウトされたという形だったが、基本的によほど気心の知れた人間でない限りは面接や面談などをするのが常というよも。


 なので、ラッカリカの提案は理にかなっていると言えるだろう。


 ……まあ、後日「えへへ、実は面接というものをやって一度みたくって」とラッカリカが白状していたので、深い理由はなかったのかもしれないけど。


 何にしても、俺とクローリスでは話が平行線のままだった。


 もちろんすぐに面接ができるわけもなく(まどかさんまだお酒残ってたし)ひとまずその場は解散することにして、面接は一週間ほど時間を空けることになった。


 いわゆる準備期間というやつだ。


 そして――今日は面接の当日である。


「いらっしゃい、まどかさん」

「お、おおじゃま――し、失礼します」


 インターホンが鳴って俺が玄関を開けると、緊張しきったまどかさんがペコリと一礼してきた。


 当然ながら今日のまどかさんは素面だ。


 スーツ姿なのは同じだが、服装も髪もしっかりセットしている。

 インフラ整備士時代には毎日のように顔を合わせたまどかさんであった。


 ……表情はすごい緊張している感じだけど。


「まだ楽にしてていいぞ。俺は選考にはノータッチだから」

「え、そう――? ん、でもこういうのって」

「何か試したりもしてないって」


 まどかさんを推薦したのは俺だからな。


 俺はとっくにまどかさんの人となりは知っているし、選考に関われば無意識にでも彼女のフォローに回ったりするだろうと考えて、あらかじめ外れることにしたのだ。


 もちろん、クローリスも不公平な判断をする奴じゃないって分かってるしな。


 そのため、特に用事がないからとこうしてまどかさんの出迎えをしたってわけだ。


 ……本当は準備に明け暮れるみんなを尻目に遅い昼食をとっていたら「暇なら香出井(かでい)さんのお出迎えをしてください」とクローリスから命令されたんだけど。


 しかもわざわざスーツに着替えさせられてな……


 それはともかく。


 面接会場はリビングで、さながらこの玄関は待機場所だ。


 あらかじめリビングから持って来ていた椅子にまどかさんを座らせ、俺は念のため面接の流れを説明した。


「面接はこの先のリビングですることになった。昨日、可能な限り実際の面接に近いレイアウトにしたけど、変な箇所があってもスルーしてくれ。面接官はラッカリカとクローリスがメインで担当する。一人おまけがいるけどそれも気にする必要はない」

「う、うん……」


 うつむきがちに相槌を打つまどかさん。


 ……やっぱり、かなり緊張してるな。


「大丈夫だって。クローリスだって別に落とすために面接をするわけじゃないんだ。よっぽどヘマでもしなきゃ問題ないって」

「新卒の時、面接で転んだ拍子に面接官のカツラを取っちゃったトラウマが……」

「……ウチにメンバーはみんな地毛だよ」


 まさかのトラウマであった。


 マジかぁ、そんなことがあったのか……

 というか、面接の場でどうやってカツラを取ったんだろう?


「でもでも! 女の子だったら――む、胸パッドとか外しちゃうかも!」

「どうやって転んで外れるんだそれ?」


 いや……ひょっとするとズレたりはするものなんだろうか?


 そういう問題でもない。


 ぶんぶんと好奇心を振り払って、俺はまどかさんの肩に手を置いた。


「落ち着いてくれまどかさん。緊張のあまり妄想が飛躍してる。というか別にウチのみんなは胸パッドなんかして――」

「じゃあ入浪(いろう)くんは生でみんなのおっぱい見たことあるの!?」

「――みんなは見たことないな」 


 ドロリーとシキータ、後はアナ――は、胸は見てなかったか。


 アナの場合はトイレだったし下半身を――って今そんなことを思い出さなくてもいいって!


 色々な光景が脳裏をかけるが当然そんなことまどかさんに言えるわけがない。


 逡巡で口を閉ざした俺を見て、まどかさんは「やっぱり!」と叫ぶ。


「じゃあ胸パッドつけてないって証明できないよ! もしも入浪(いろう)くんに対して見栄を張ってる人がいたて、それをあたしが暴いたりなんかしちゃったら――」

「だからつけてるかどうか分からないだろ!」

「教えて入浪(いろう)くん! 誰が胸パッドを――」

「イロウさん?」


 底冷えするような凍て付いた声がまどかさんを遮った。


 ギクリと背筋を伸ばして後ろを振り返ると……少しだけ開いたリビングの扉から満面の笑顔を浮かべたラッカリカが俺たちを見ていた。


「準備できましたので、マドカさんを中へ入れてください」

「わ、分かった……」


 俺が頷くと、ラッカリカは笑顔を崩さないままリビングへと戻った。


 パタンとリビングの扉が閉まる。


「…………お、終わった」

「まだ始まってすらいないよ」


 ガックリと肩を落としたまどかさんに俺は優しく語り掛ける。


 ……もはや何も言うまい。


 がんばれ。


 そう気持ちだけ込めてまどかさんを送り出そうとした矢先に、ピロンと俺のスマホが鳴った。


 ラッカリカからのメッセージだ。


『私のおっぱいは天然モノですから! ドロリーやシキータには劣りますが、ちゃんと大きいはずですから! 後でちゃんと確かめてくださいね!!』

「…………」


 俺は大きく息を吸ってからこう返信した。


『勘弁してください』


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