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第100話 それでは面接を始めます

 コンコンコン。


『お入りください』

「し、失礼します……」


 ペコリと一礼してまどかさんが面接会場――リビングへと入った。


 彼女の邪魔をしないよう少し時間を空けて俺も続けてリビングに入ると、ちょうどまどかさんが用意された椅子に座り本格的に面接がスタートするところであった。


 ……昨日「せっかくならちゃんとした面接会場にします!」と意気込んだラッカリカの要望でリビングの内装は少しだけ変わっていた。


 ソファやローテーブルなどが隅に移動していて、中央には面接を受ける側のまどかさんが座る椅子が一つだけ。

 その対面にはダイニングテーブルと面接官が座る椅子が三つ並んでいた。。


 エピライブの面接官は二人と、おまけが一人。


 いつもの理知的な顔つきのクローリスと、こちらの緊張してぎこちなさのあるラッカリカが面接官である。


 真ん中のラッカリカの左側には――きっと「絶対にしゃべるな」とでもクギを刺されているのだろう。

 一応は面接官として参加したはずのシキータが、まさかの寝落ちをかましていた。


「……コレのことはどうかお気になさらず。面接官ではなくただのおまけですので」

「は、はい……」


 ツッコミ待ちのような面接官に最初はまどかさんも動揺を見せていたが、すぐに気を取り直して起きている面接官の二人と対面した。


 ……この調子なら、きっと大丈夫だろう。


 俺は気配を消してリビングの隅っこへ移動し、面接の様子を見守る。


 履歴書や職務経歴書は事前に提出しているので、面接ではその内容についての深堀りがメインとなるオーソドックスな進行だ。


 事前に色々あったおかげで緊張が解けたのか、クローリスの問いに対しまどかさんは落ち着いた様子でつつがなく回答を続けていた。


「…………」


 一見すると、好感触の面接だろう。


 しかし……それにしては、クローリスの表情が硬い。


 面接が進むにつれてラッカリカとまどかさんが少しずつ打ち解けていっているのに対し、クローリスはあくまでも事務的な受け答えに終始していた。


 これはおそらく……


 何か、仕掛けるつもりだな?


「――それではまどかさん。次が最後の質問です」


 俺が訝しむ先でクローリスが新たな問いを投げかけた。


「アナタに、推しはいますか?」

「「はい?」」


 仕掛けてきた。


 ラッカリカとまどかさんの素っ頓狂な声が重なる。


 オーソドックスな面接の流れを断ち切る不意打ちの問いかけ。


 変わり種の問いを投げかけてとっさの対応力を問うための常とう手段とも言えるが、まさかそんなものを仕掛けてくるとは……


 クローリスの奴、そこまでしてまどかさんを引き入れたくないのか?


「推し……ですか?」

「ええ。ゲームでもマンガでもアニメでも、実在の人物やモノだってかまいません。アナタが心の支えにしているようなモノはありますか?」

「それは、その。ええ、っとぉ~……」


 しどろもどろに何ながらも、どうにか答えを探そうとするまどかさん。


 緊張と困惑で視線が泳ぎまくっているのが俺からでも分かる。


 かなりマズいな……


 クローリスは実直な奴だ。


 きっと、異世界での経験が糧になっているのだろう。

 彼女に「人の心がない」なんてことは絶対に言わないが、それでも必要ならば冷酷な決断を下すことのできる奴なのだ。


 ……できることなら、助け船の一つでも出してやりたいが。


 だが、今回の面接に俺はノータッチだ。

 そんなことをしても意味はない、いや、むしろ逆効果になるのは目に見えていた。


「推し――はい。推しはいます」


 固唾を吞んで見守るしかない俺に、チラリと。

 まどかさんが一瞥してきた。


 思わず邪魔をしてしまったのかと冷や汗を流すが、まどかさんは何も言わずにそのまま正面のクローリスへと向き直った。


 な、なんだったんだ……?


 なんでこっちを見たのかは分からない。


 けど、ゆっくりと深呼吸をするまどかさんに、もう動揺はなくなっていた。


「あたしの推しは――イスナロさまです」


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