第93話 配信成功を祝って
多少のいざこざやトラブルこそあったが……
エピライブ初の内部コラボ配信はおおむね好評に終わった。
SNSの反応や登録者の推移も上々の手ごたえ――まあ、いわゆる炎上みたいな燃え広がり方をしたというのもちょっとだけあるのだが。
それはともかく。
シキータとドロリーの不仲を解決……には至らなかったものの、シキータが己の過去に一定の踏ん切りをつけたことで少しばかりはマシになってくれるはずだ。
……たぶん、これからもフツーにいがみ合うと思うけど。
そこはシキータとドロリーの関係だ。
なんにしても、これでコラボ配信の有用性は証明できたと言えるだろう。
本人がノリ気でないドロリーは仕方ないにしても、今後はさらに活動の幅を広げていくことになるはずだ。外部の配信者とのコラボはもちろん、いわゆる『ハコ』としての活動だって視野に入るってくるはず。
今後はもっと忙しくなることだろう。
そうなって来ると、今度は……裏方がキツくなるかな。
現状のエピライブは事務方の仕事をクローリスが一手に引き受けている。
言ってしまえば彼女におんぶにだっこされている状況だ。
クローリスがものすごく優秀で今は成り立っているものの、今後さらに忙しくなるならどうなるかは分からない。
俺も手伝ったりはできるが、それでも万が一、どこか忙しい時期にでも彼女が風邪などでダウンしたら……あまり考えたくないな。
できることなら、裏方の人手が欲しいけど……高望みだろうな。
そもそも求人を出せるほど余裕があるわけでもないし。
ましてやそんな人材が降ってわいてくれるなんてのも高望みであるし、そのへんはクローリス当人や社長でもあるラッカリカの領分だ。
プロデューサーである俺としては、彼女らの方針に従って十全を尽くす他にない。
――というわけで、ひとまずは。
「「「カンパーイ!」」」
「……ぱい」
カツン。
シキータ、トリント、俺がビールのジョッキを合わせ。
一人ソフトドリンクのドロリーだけ小さくグラスを掲げてから、俺たちは各々自分の飲み物を大きくあおった。
「んく、んく――プハァッッ!! いや~生き返るぜ!」
「ああ……ホント、酒が染みるって思ったのは久しぶりだ」
豪快にジョッキをイッキ飲みしたシキータに、TS薬の効果が切れて無事に男の身体に戻った俺がしみじみと頷く。
当然ながらメイド服から男物の服に着替えた後だ。
俺たちがいるのはギルドの近所にある居酒屋。
配信後にシキータが「お酒……お酒が飲みたいです……」と訴えるので、俺がインフラ整備士の頃によく行っていたここへやってきたのだ。
「ん~兄ちゃん? 兄ちゃんもアタシたちと飲みたかったのか?」
「……色々あったからな」
俺の隣ですっかり出来上がったシキータに応じながら肩をすくめる。
……いつもはアナが夕食を用意しているけど。
今日は月末。
つまりアナが成人向けゲームをプレイするために引きこもる日だ。
なので食事の用意は自分たちでする必要があり、せっかくなので配信の打ち上げを兼ねてやってきた次第である。
……ラッカリカにそれを話したら「ずるい」ってスタンプ爆撃されたけど。
ラッカリカは未成年だし、わざわざ呼び出すのもなぁ……
彼女には今度なにかお土産でも買って帰ることで溜飲を下げてもらうとしよう。
「……ドロリーは帰りたい」
「あら、たまには外で食べてもいいじゃない。それにしてもこのお店、お料理がすっごく美味しい。イロウくんってばいいお店知ってたのね」
「前の職場が近かったんだよ。同僚に付き合ったりしてよく来てたんだ」
対面に座って料理に舌鼓を打つドロリーとトリントに俺が答える。
品良く食べ進めながらもシキータに負けず劣らずの速度でジョッキを空けるトリントだが、あまり酔っている感じがしないな……たぶん酒に強いタイプなんだろう。
反対にドロリーはどうも酒が苦手なようで、ソフトドリンクを片手に焼き鳥とフライドポテトを黙々と食べていた。
表情は変わってないが、どうやらそれらがお気に召したらしい。
「……ゴハンは悪くない」
「ならいいじゃない。後でイロウくんにおんぶして帰るんでしょ?」
「何それ初耳」
「へぇ兄ちゃん。アタシと穴の中で熱いベーゼをかわしたってのにそんなチンチクリンの世話を優先するって? おっぱいに顔をうずめたのに?」
「それは冤罪だ!」
うずめたのはシキータの方だろ!
「む……おっぱいならドロリーの方が大きくて柔らかい」
「ほぉ~? んじゃ兄ちゃんにジャッジしてもらおうじゃねぇか。そら兄ちゃん、アタシとコイツのどっちが柔らかいか揉みしだいて――」
「確かめませんよ?」
ここいかがわしいことするお店じゃないんですよお客さん。




