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第92話 内部コラボ無事終了!

 しかし、どうしたものか……


 勝負内容は『どちらがお姫さま(おれ)を守れたか』どうか。


 戦火の地平での戦闘では、二人の実力は互角だった。

 俺があの変態ツル野郎に捕まった時には真っ先にシキータが飛び出したが、その後ろではドロリーが魔法を唱えようとしていたのは見えていた。


 結果として俺はシキータと一緒に大穴に落っこちて怪我をしたが、シキータの話を聞いた上で彼女に「守れなかった」と言いたくはないし、だからと言ってそれを理由にひいきみたいなことをするのは公平性に欠けるしなぁ……


『あ、どっちに一日好き勝手されたいかって考えがいいかもしれないわね』

『……どっちにも好き勝手されたくないんですけど』


 人権って言葉をご存知です?


 とはいえ、決着をつけなければ配信を終わらせてくれそうにない。


「……ドロリーどの」


 どうしたものかと俺が腕を組んでうなっていると、決着を待つ側で動きがあった。


『お?』『なんだ?』『またケンカか?』


 リスナーたちが見守る中、シキータがドロリーに向き直る。


 一瞬、また何か突っかかるのかと思ったのかトリントが二人の方へ行こうとするが、俺がそれを制止する。


 ……今のシキータなら大丈夫だろう。


 そう考えて俺も彼女らを見守る側に立つと、シキータはドロリーへ向けておもむろに頭を下げた。


「申し訳ございませんでした」

「…………」


 まっすぐに謝意を告げるシキータ。


 ドロリーは無表情のままそれを受け止める。


「今までの……数々の非礼をここにお詫びいたします。今までのことは、全て私が一方的に貴女を敵視していたせいで起きたこと。つきましては、今回の勝負は――」

「どうでもいい」

『「え?」』


 ドロリー以外の全員が固まった。


 どうでもいいって、ええ?


「え、ちょ……ちょっとドロリー? アナタ、勝負には乗り気だったじゃ……」

「勝負は勝負。どうでもいいのはそれ以外」

「それ以外というのは、いったい……」


 困惑気味に顔を上げるシキータへドロリーは続けた。


「昔に何があったとか、何ができなかったとか。シキータがドロリーをどう思おうと、ドロリーが関与することじゃない。好きにするといい」

「で、ですが……」

「大事なのは、()()()()

「――はい。もちろんです」


 ドロリーの言葉を受けて、シキータは表情を引き締めた。


 ……ドロリーもシキータの後悔には気付いていたのだろう。


 しかし、その原因の一端ともいえるドロリーから歩み寄ろうとも、きっと今までのシキータなら突っぱねておしまいだっただろう。


 ……流石は不老の大魔女さまだよ。


 おそらく魔法か何かで俺たちの話を聞いていたのだろう。


 シキータの気持ちに区切りをつけた今だからこそ、ドロリーは自分の意志を語ってシキータを励ましたのだ。


 これなら、もう二人は大丈夫だろう。


 と、俺がホッと一息つこうとしたのもつかの間。

 ドロリーは不意に俺の方へ歩み寄ってきた。


「でも、負けを認めたのなら()()はもらう」

「……景品?」


 ドロリーの言葉に首をかしげるシキータ。


 ……猛烈に嫌な予感がした俺は自然にダンジョンの外へ逃げようとしたが、それよりも早くドロリーの糸が俺を拘束する。


 動きを封じられた俺の腕に抱きつき、ドロリーが勝ち誇るように告げた。


「これでイロウはドロリーのモノ」

「「なんですと!?」」


 俺とシキータの声が重なった。


「……? 勝った方はご褒美にイロウを好きにしていいはず」

「一日だ! 自由にしていいのは一日だけ!!」

「一日もあれば身も心もドロリーのモノにできる」


 何するつもりなんですかねドロリーさん……?


『は?』『なんだと?』『俺たちは身も心もドロリー嬢のモノだぞ!』『つまりお仲間が増えるということですね』『ひらめいた』『歓迎するぜぇ……ぐへへ』


 アンタたちと一緒にしないでくれ!!


 すぐに拘束を振りほどきたいが、残念ながら女の身体ではどうにもできない。


 クソ、このまま文字通り既成事実を作られてしまう……!


 なんて戦慄する俺に、助け船を出してくれたのは他でもない。


 シキータであった。


「おま、お待ちくださいドロリーどの! それとこれとは話が違います!! 私はただ、勝負を辞退しようと――」

「ふうん。逃げるの?」

「は?」


 ピキッ。


 ……シキータの額に青筋が立った。


 あ、これイヤな予感……


「ドロリーは逃げない」

「……よく言えますね。勝手に勝敗を決めてイロウどのをかっさらうなんて、まさか大魔女さまともあろうお方が負けるのが怖いから勝ち逃げするおつもりですか?」

「む」


 ピキッ。


 ……今度はドロリーの額に青筋が立った。


「勝敗なら、イロウを危険にさらしたのはシキータ」

「ぐっ……ですがあれは警戒を怠ったアナタの失態でもあるはずです!」

「敵を多く倒したのはドロリー」

「危険な個体を優先して倒したのは私です!」


 額を突き合わせて言い合いを始めるシキータとドロリー。


 ……ああ、コイツらって。


『なあ、トリント』

『……なあに?』

『この二人ってさ、ひょっとして』

『……まあ、見ての通りね』


 はぁ、つまり……


 クーデタがどうとか以前に、フッツーに仲が悪いのかよ……


「「このぉ――」」

「はい! 今日の配信はここまで! 勝負の結果は後で協議して発表します!」


 今にも取っ組み合いの私闘を始めそうな二人を引きはがし、収拾がつかないと判断したトリントが強引に配信を締めくくった。


『イロウ』


 険悪な雰囲気で睨み合うシキータとドロリーの背中を押してダンジョンを出ようとする最中、不意にドロリーから念話が届く。


『ドロリーだって、次は()()()()にも負けない』


 ……ああ、そうだな。


 それはそれとして配信はちゃんと終わらせてください。


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