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第79話 内部コラボ

「……ん? やったことなかったのか?」

「そういえば……イロウくんが来る前はみんな持ち回りで誰かのサポーターをやってたから、ちゃんと配信者同士でコラボしたことはなかったわね」


 俺が首をかしげると、思い返すように人差し指を顎に当てたトリントが言った。


「確かに……まあ私は皆さんより出入りできるエリアが少ないのもありますが」

「お姫ちゃんもそうだが……アタシたちも制度だ何だとなれるのに必死だったしなぁ」


 ラッカリカとシキータが思い返すように語る。


 しかし、ドロリーだけは眉を寄せて拒否反応を見せた。


「……ドロリーは一人でいい」

「ハッ、配信でも自分の世界に引きこもりか?」

「ん、安い挑発」


 途端に視線で火花を散らすドロリーとシキータ。


 ……この調子じゃ、コイツら二人の組み合わせはナシだな。


 そう思いながら俺はふとアナの方を見ると……彼女は「ニヤリ」と何かを企む笑みを口元に浮かべていた。


「騎士団長さま。大魔女さま。いっそのこと配信で白黒つけてみてはいかがですか?」

「「シロクロ?」」


 二人して首をかしげるドロリーとシキータ。


 それに対し、アナはしたり顔で頷いた。


「簡単なことです――どちらが上で、どりらが下か」



 ◇――――――◆



 アナの提案はこうだ。


『エピライブ内部でのお試しコラボ、ならぬコラボ対決』


 何かしらの決められたお題に従ってドロリーとシキータが対決し、勝った方にはご褒美を与えて逆に負けた方には罰ゲームを課す……というもの。


 企画だけで言えば、ありきたりなモノとなった。


『とはいえ、先ほども申しました通り勝ったから方針に従え、勝ったから好きにやる、なんて話ではありません。許す許さないを外野が勝手に決めるのはおこがましいことです』


 だから――ここらで一つ()()()()()()ということだ。


 酒飲みのシキータはもちろん、ドロリーだってラッカリカたちが言うには不老の呪いというモノを受けて実年齢はかなりのモノだって言うし。


 彼女たちはいい大人……お、おとな――うん。


 仮にそうじゃなかったとしても同じエピライブの配信者である。


 配信事務所の所属配信者同士が不仲……という話は珍しくないが、事務所側にしてみれば厄介な遺恨であることには違いない。


 だからこそアナは「勝負でもなんでもしてさっさと決着をつけろ」と発破をかけたのだ。


 ……まあ、そこまではいい。


 シキータたちにどんな遺恨があるにせよ、あんなふうにいがみ合うだけでは何の解決にもなりはしない。俺もアナと同じ気持ちだ。


 ただ、問題は――


「なんで、対決の()()に、俺が入ってるんだ!?」

「……もう、まぁ~だ言ってるのイロウくん」


 会議から数日後。


 怒涛の勢いで告知や準備などが済まされ、俺はギルドの前に立っていた。


 なんだかんだ真面目なシキータはともかく、面倒臭がりのドロリーが乗り気だったのはそういうカラクリがあったという訳か……


 まさか「そういえばそうだった」というノリで俺の人権が脅かされるレベルの話が飛んでくるとは思わなかった。


「仮にもコラボ対決なんだし、景品がないと二人もやる気でないでしょ?」

「そうだけどさ! だからってなんでその景品が『一日だけ俺を自由にできる権利』なんてとんでもない代物なんだよ!? こういうのは、こう……予算的な」

「残念だけどそんな予算がウチにはないの」


 そう言ってにべもなく俺の文句を撥ね退けるのはトリントだ。


 今日の配信は二人。


 流石に俺一人で二人のサポーターを務めるのは難しいので、トリントにも協力してもらうことになったのだ。


 トリントは配信者をやっている面々とは違って戦う術がないとのことで、サポーター専属のライセンス(要は単独でダンジョンには入れない区分だ)を持っているらしい。


 なのでいつものオフィスカジュアルな感じの格好ながら動きやすそうなスタイルをしていた。


 そんなトリントが腰に手を当てて俺の顔を覗き込むように見てくる。


「もうギルドに着いたんだから、いい加減に覚悟を決めなさいな。お姫ちゃんもゴーサイン出したんだし。今更イヤだからやめますは通らないわ。後でおねーさんが慰めてあげるからがんばりましょ?」

「……トリントって年下だったよな?」

「いけないんだーイロウくん。レディに年齢を聞くのは野暮よ?」


 ……その言い訳って年下でも適用されるんだ。


 うりうり、と肘で小突いてくるトリントにされるがままになりながら、俺はふと疑問が思い浮かんだ。


「そういえば、当の配信者たちは?」

「ああ……あそこ」


 トリントが俺の背後を指さす。


 俺が振り返ると、そこには――


「うう、頭痛い……太陽がまぶしい……」

「疲れた……干からびる……」


 気持ちの良い快晴にも関わらず、げんなりとしている見知った顔が二つ。


 同じようにグロッキーな状態にもかかわらず、不意に視線がぶつかってはバチバチと火花を散らしてから弾かれたように顔を逸らしている。


 なんとも珍妙な光景だった。


「……なんだアレ?」

「二日酔いと運動不足のゾンビ」


 …………本当に今日は大丈夫なんだろうか。


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