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第74話 メイドのアナさんは欲深い

 なんやかんやとアナたちが雑談をしている内に、いつの間にか帰りのバスが出てしまっていた。


 次のバスまでは時間があるし、基本バス移動だがギルドから事務所までは歩ける距離だ。


 アナは帰りに最寄りのスーパーで買い出しをするつもりだったらしく、それならばと俺たちはギルドの近所にある別のスーパーで買い出しを済ませて徒歩で帰路についていた。


「ありがとうございます、イロウさま。配信だけでなく、買い出しまで」

「いいよ。これもプロデューサーの仕事の内だ」


 買い物は夕食用の食材と運良くタイムセールしていたこともあって色々だ。

 アナも「近所のスーパーよりも安くて助かりました」とほくほく顔だ。


 そんな彼女と二人並んで、すっかり日も沈んだ帰り道を歩く。


 こうしていると、なんだか……


「フフ、こうしていると、わたしたち新婚さんに見えたりしますかね?」

「……お前なぁ」


 ポポンたちと別れてすぐそれですか。


 思わず考えていることが読まれているのかとドキッとしたが、流石のメイドさんでも完璧な読心術はできなかったようだ。


 俺が考えてたのは「メイドというより主婦だな」である。


 そんな俺の内心を知らないアナは、スススっとこちらに肩をくっつけてくる。


「初夜はいつにしましょうか、あ・な・た?」

「夕飯を聞くノリで夜の話を持ち掛けてくるな」

「もう夜ですよ」


 そうだけどさ……


 しれっと距離を空けようとするが、アナが逃がすまいとまたぴったりと歩幅を合わせてまた肩をくっつけてきた。


 まったくコイツは……


 まあ、腕を組んでこられるよりはマシか。

 諦めて俺がアナの歩調に合わせて足を緩めると、彼女は俺の顔を見つめてきた。


「……ふむ、やっぱり」

「……なんだよ?」


 俺の顔に何かついているのだろうか。


 首をかしげると、アナがこちらの瞳を覗き込むようにして続けた。


「イロウさまって、ちゃんと性欲があるのですね」

「ホントに何言ってるんです?」


 ここ公共の道端なんですよ?


 俺たちの他に人いないけど……


「あれだけの女性に囲まれていて何もない、というのはひょっとして……とは考えていたのです。一人でされている気配もありませんし……」

「なッ、お前まさか俺の部屋に」

「初めてお会いする前に少しだけですよ。イロウさまが鍵を付けられてからは扉に触れてすらいません。そのご様子ですと、どうやらわたしがお近づきの印にベッドの下へ忍ばせたおススメのエッチなゲームも」

「返品します」


 しれっととんでもないことしてくれますねアナさん。


 他のみんなに見られてたら俺の私物だと誤解されるじゃん……


 いや、そんな知らないプレゼントのことはともかく。


「……俺は男だぞ? 男なら誰だって――なんて言う時代じゃない、というかわざわざそんなことを言うのもアレだが……俺の恋愛対象は異性だよ」

「では、わたしのことはどうでしょう?」


 じーっと俺を見つめてくるアナ。


 ぐっ、コイツ……


「…………いい奴、だとは思う」

「ではなぜエッチなことをしてくれないんですか?」

「きっとその一点がなかったらお前に惚れていたかもしれないな」

「フフ、これはお世辞でも高得点を頂いちゃいましたね」


 にへら、っとうれしそうにアナが笑顔を浮かべる。


 ……皮肉のつもりだったが、どうやらその通りに受け取られたみたいだ。


「なあ、アナ」

「なんでしょうイロウさま」

「なんでそこまで……」

「一目惚れです」


 あっさりと言い切った。


「イロウさまを一目見たとき、こう……()()がキュンと」

「面食い……」

「これぞ子きゅ――」

「やめろっての」


 見せつけるように下腹部のあたりを撫でないでください。


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