第71話 答え合わせ
『及第点』
さっそく電話で香流子に電話をすると、スマホから返ってきたのは厳しめの採点であった。
「正解じゃないのか?」
『落第じゃないだけマシと思ってください』
ポポンの相手をアナに任せ、俺は少し離れた場所で電話をする。
ちなみにアナの方ではポポンの他にも今回コラボした女性陣が合流したらしく、やいのやいのと騒がしい声が聞こえてきた。
彼女らの話し声を聞くに、ニシンやランナーは怪我の治療中で、ウエポンマスターはすでに帰っていたらしい。
アナたちの「これからどうしよっか~」みたいな会話から意識を電話に戻すと、香流子は小さな嘆息を漏らしてから解説を続けた。
『エピライブの配信をざっと遡って見るに、突発的なコラボはあれど最初からコラボ配信をしているのはあのメイドさんでも数えるほど。異世界人だから仕方のない部分はあるかもしれませんが、それにしたって交友関係――横のつながりが少なすぎる。だからそれを強化しよう、というのは間違ってはいません』
「……じゃあ、正解には何が足りないんだ?」
『冒険をするのは、あなたじゃないでしょう?』
言われて、俺はハッとした。
「つまり、俺がコネを作ったりアレコレと営業活動をするんじゃなくて、配信者たちを動かせって?」
『わたしたちが動くのは当然のことです。ですが、配信者自身がその気になってもらわなければうまくいくことはありません。わたしたちはあくまでもサポーター、配信においてはただの脇役にすぎず、主役は配信者であるということをお忘れなく』
「ああ、分かってるよ」
……もっと言うと今の俺はプロデューサーなんだが。
なんて細かい部分はともかく。
香流子の話はすんなりと納得できた。
俺はあくまでも、主役を支える脇役である。
なんだかんだ、昔からそういう役回りになることが多かったからな。
冒険をするつもりはないんだし、だったら冒険をするみんなを手伝う立場って言うのが性に合うのだろう。
やはり、香流子に相談してよかった。
「助かったよ香流子。やっぱりこういうのは同業の先輩に相談するのが一番だな。お礼に今度メシでも奢らせてくれ」
『謹んでお断りします。……こうして電話していることすらお姉さまに知られたらいったい何を言われるか――ってお姉さま!? これは、その~なんというか未来のコラボ先への布石と言いますかなんというか決して浮気だとかそういうわけではなく』
「……それじゃあな」
何やら電話先が騒がしくなったので、それに巻き込まれてしまう前に俺は静かに通話を終了させた。
悪いな香流子。
たぶん俺がいるともっとややこしくなるから、後は頑張ってくれ。
……浮気だとか以前にやましい話は一切ないんだからな。
嘆息と共に思考を切り替えようとすると、今まさに通話していたスマホが震えた。
……着信ならそのまま無視するつもりだったんだが、先読みされたな。
スマホに届いていたのは着信ではなくチャットメッセージである。
こうなると通知画面で内容も表示されてしまうんだよなぁ。
送り主は香流子のスマホだったが、内容を見れば誰が書いたのかは一目瞭然であった。
『第一子は私が生む』
……久良音さん。
そこは「浮氣は赦さない」くらいでアクセルを留めてくれませんかね?




