第70話 ダンジョン配信で得たモノ
「本当に! 本っ当~っに!! ありがとうございました!!」
ダンジョン配信を無事に終了した後、ギルドでの手続きを諸々済ませた俺たちのもとへポポンが勢いよく駆け寄ってきた。
どうやらギルドのロビーで待ち受けていたらしい。
呼び止められた俺たちへ、ポポンは深々と頭を下げる。
「他の皆さんや、何よりアナさんとそのサポーターさんには、いったい何とお礼を言ったらいいのか……このご恩は必ずお返しします! 何でも言ってください!!」
「あの、えっと……な、なんでもは言い過ぎですよ……」
頭を上げてください、としどろもどろにアナが答えた。
……珍しいな。
アナが慌ている。
おそらく「なんでも」という意味に何やらいかがわしいモノを感じ取ったのだろうが、相手が純粋に感謝を述べている状況で口に出すのをためらったのだろう。
「お礼なんていりませんよ。わたしたちは戦利品の報酬でも十分ですし。それよりも、見つかってよかったですね。ポポンさま」
「はい!」
満面の笑みで頷くポポン。
その両手には、もう落とすものかと彼女のお守りが握られていた。
「本当に見つかってよかった。まさか、落とし物じゃなくて戦利品としてギルドに届けられていたとはな……」
「はい、サポーターさんが気付いてくださらなかったらと思うと……」
ポポンがお守りを胸元に抱きしめて身震いする。
……ずいぶんとレアなケースに当たったもんだよ。
ダンジョンで発見される戦利品は多種多様だ。
モンスター由来のモノは比較的に分かりやすいのだが、厄介なのはいわゆるお宝に分類されるモノだ。
いつどこでだれが作ったのかも分からないゲームのアイテムみたいなモノも出てくることが多く、配信者などの落とし物を誰かが勘違いして戦利品としてギルドに提出してしまう、なんてケースが稀にあるのだ。
……何かの魔道具的なモノかと思ったら誰かが落としたオモチャだった、とか。
……わざとそれっぽいモノを落として拾った配信者がどんな反応をするか、みたいなドッキリじみた配信もあったりするし。
インフラ整備士だった頃にそういう事例があった話を聞いたことがあって、念のために確認してみたところ、見事ヒットしたというわけである。
「あ、あの! でしたらせめて――今度また一緒にコラボ配信をしませんかッ?」
「……コラボ配信?」
俺が首をかしげると、ポポンは「はい」と勢いよく頷いた。
「今回は私の落とし物を探すのを手伝ってくださったので、今度は私がアナさんの配信をお手伝いしたいんです!!」
「はい。もちろん。その時はよろしくお願いしますね」
まっすぐに見つめてくるポポンに、アナはあっさりと承諾する。
……おいおい、大丈夫か?
今回はポポンのことですっかり忘れていたが、よくよく考えればアナの配信は「ダンジョン内でいかがわしいことが出来そうな場所を探す」とかだぞ……?
おそらくポポンは知り合ったばかりだからアナの配信を知らないのだろう。
これ、後からセクハラだとか言われませんよね……?
「……意外とあっさり受け入れるんだな」
「はい。ポポンさまとなら損はないですし、当然ですがコラボ配信は無難な内容にするつもりですよ? 内容は協議しますし、これでもTPOは守っています」
けれど、何より――
小声で話すアナが「ふふ」と俺を見る。
「コラボ配信は、いわばダンジョン配信の花形ともいえますから」
……なるほどね。
そこで俺はようやく気が付いた。
俺は元々ダンジョンのインフラ整備士である。
ダンジョンや配信まわりのしくみや制度なんかは知っていても、配信者同士で独自に発展していった風習や文化なんてものには疎い。
というのも、アナ以外のみんなは突発コラボこそあっても積極的に他の配信者と絡んだりはしなかったからな。
ラッカリカたちは異世界の出身というのもあって、まずは彼女たち自身のことを知ろうとした結果、というのもある。
……アナの配信を通じて、何となく分かってきたぞ。
『エピライブ全体に足りないモノ』
つまり、香流子が言いたかったのはコレのことか。




