第66話 救援要請
「……ぼ、僕はニシンと言います。普段は『ダンジョンただ歩くだけ』って配信をメインでしている、いわゆる探索系の配信者です。今日も普通に歩くだけの配信をしていたんですが、偶然ここを通りがかった際に、ちょっと巻き込まれちゃって」
「「「「巻き込まれた……?」」」」
ニシンと名乗った配信者の言葉にアナたちが首を傾げた。
それに対し、ニシンはバツが悪そうに苦笑する。
「ア、ハイ……まあボスモンスターとの闘いに巻き込まれるっていうのは珍しい話でもありませんし、それに……」
「ニシン! まだ生きてんだろ!? 頼むから早く戻ってきてくれ!」
言葉を切ったニシンに向けてたまり場の中から声が飛んできた。
悲鳴に近い男の声。必死の形相がうかがえるほどの剣幕である。
「この群れ相手に二人だけじゃ耐えらんねぇ! ポンマスさんが頑張ってくれてるけど、オレだけじゃカバーしきれねぇんだ! 頼むよ親友!」
「……あのお調子者は僕の友人でして、見捨てるのもちょっと」
「ふむ。ではポンマスさん、というのも君の友人なのかい?」
「あ、いえ。あの人はウエポンマスターさんで、ランナー……こっちが僕の友人ですね。彼に巻き込まれた一人です」
「へえ~、そのポンマスさんにおんぶにだっこでよわよわぁ」
エロイーネが顎に手を当てて思案し、サツキエルが戦況を見て引き気味に笑う。
……さて、どうするかな。
内部の戦闘はかなり劣勢だ。
ボスモンスターの指令を受けて群れの小型モンスターが内部の二人を包囲するように動いている。
配信の取れ高とか以前に、今すぐ加勢しなければ押し切られるかもな、ありゃ。
ファングウルフの群れは厄介な連中であるが、それでも未開拓エリアで出会う未知のモンスターよりはマシだ。
ここにいる全員でかからずとも、俺だけでも――
と、俺が提案しようとした矢先であった。
『ここはわたしたちにお任せください』
『……アナ?』
アナの念話が俺の提案を止める。
俺が彼女の方を見ると、アナは一歩ニシンの方へ歩み寄っていた。
「皆さん、ここは救援に行きましょう」
「ほ、本当ですか!?」
ニシンを安心させるように、アナは笑顔で頷く。
「はい。本日は心強い保険もございますし、冒険は持ちつ持たれつというのが常ですので。もちろん、ポポンさんがよろしければ――」
「やりましょう」
アナが言い終えるより早くポポンは頷いていた。
「あのたまり場に私のお守りが落ちているかもしれませんし、何よりお守りをくれたおばあちゃんが言ってたんです。余裕がない時こそ、まずはできることをやるべきだって。見て見ぬふりはできません」
「ふふ、そこまで言われてしまっては協力しないわけにはいかないさ! 困っている人を見過ごしては、ボクはただの変態でしかなくなってしまうからね!」
「ザコザコはいるし、アタシもさんせー!」
「……み、皆さん。助かります!」
全員の快諾を受けてニシンが頭を下げる。
「ニシン! ニシン! 流石に限界だ……マジヤバい――」
「ごめんランナー! すぐ戻るよ!」
再びたまり場の中からランナーによる救援要請。
それを受けてニシンが一足先にたまり場へ戻って行った。
「では、わたしたちも」
アナの言葉に全員が頷き、俺たちはたまり場の中へと飛び込んだ。




