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第64話 その名を「エロイーネ」

「やあ。我がライバルが配信しているというのに以前のスポットにいないと思えば、こんな所にいるなんて思わなかったよ。まさか、ここに当たらな発見でもあったのかい?」


 唖然とする俺、ポポン、サツキエルを置いて、新たな女配信者――痴女がアナへ語り掛ける。


 ……やっぱりお前の知り合いですよね。


 とはいえ、アナの知り合いだから痴女と断じた訳じゃない。


 もちろん言動でもない。


 ()()で堂々と芝居がかった物言いなのは恐れ入ったけど。


 痴女だという根拠は至極単純――彼女の格好だ。


 ()()()()()


 しかも正規のモノではなくコスプレ用の古いデザインのスク水に、これまたコスプレっぽいマントと仮面。加えて白のニーソまで装備している用意周到っぷり。


 ……それを、アナと同年代くらいであろう女が身に纏っている。


 シキータのようにスラリと引き締まった体躯ならまだ健全に見えたかもしれないが、太ももや二の腕などが少しムチっと……所々に()()という隙が垣間見えて、それが逆に不健全さを増強してしまっている。


 ……うん。


 痴女だよこの人。


「な、なにゃ――なんて格好をしてるんですか!? は、早く隠して……! 私たちの配信までBANされちゃいます!!」


 真っ先に声を上げられたのはポポンだった。


 顔を真っ赤にして抗議するが、痴女はむしろ堂々と胸を張って応じる。


 ……胸が大きくて歪んでいるが、胸部分のゼッケンに「性欲」と書かれていた。


「はーっはっは! その心配はいらないよ! 露出でのBANはニップレスやマイクロビキニみたいに露骨なモノが対象となる。スク水くらいなら問題はないさ!」


 確かにその通りなんだが……だからってスク水を着てくる理由にはなってないと思う。


 などと俺が唖然としていると、痴女と目が合った。


「むむ、何やら熱烈な視線を感じてみれば……そこのキミ、念のためあらかじめ言っておくがおさわりはNGだぞ? ちゃんと見て妄想するだけに留めておきたまえ!」

「はい……?」


 妄想?


「あ、あわわ……」

「うわー、ムッツリ」

「……イロウさま。ムラムラするのは分かりますが……」

「違う! あまりにもトンチキな格好だったから唖然としていただけだ!」


 あと、アナにだけはアレコレ言われる筋合いはありません。


 確かに色っぽいとは思うが、それにしては堂々とし過ぎている。


 男が見てるんだから少しは恥じらってほしい……


 まあ、それはアナをはじめウチの配信者たちにも言えることなんだけどさ。


 それはともかくとして。


「アナ! ライバルとか言ってたけどお前の事だろ! この人は誰なんだ?」

「エロイーネさまです」


 ええ……ド直球……


「紹介ありがとうアナくん。あらためてはじめまして! ボクは性の伝道師エロイーネという! 清く正しく性のすばらしさを広める活動をしているんだ!」

「え、ろ――伝、導?」

「はい。エロイーネさまはその名の通り性欲のすばらしさをダンジョン配信を通じて説き広めていらっしゃってる、いわばわたしの先生みたいなお方なんです!」

「そんなことはないさアナくん! 男性を連れているということは、ひょっとしてじ、もう実践もできたのかな? 流石はボクがライバルと認めた人だ!」

「えへへぇ、それはまだおいおいです」


 ……そう。


 つまり、コイツがアナを変態メイドにした……と。


「こぉ~ら、おじさん! こんな子でも怖がらせちゃダメだよ!」

「……良くないと思います」


 ぴょんと跳ねたサツキエルに額を叩かれた。


 気付けばポポンと少し責めるようにジト目を向けてきている。


 どうやら俺は無意識のうちに、アナの原因がこの性の伝道師にあるとして敵意を向けてしまっていたらしい。


 件のエロイーネも顔を青くして俺から距離を置いていた。


 ……しまった。

 怖がらせてしまったようだ。


『残当』『まあエッチだからね』『仕方ないね』『これだから男は』『やーらしー』


 声じゃないクセにうるさいなコメント欄。

 ちゃんと知ってるんだぞ。


 アナの配信は男性ユーザー百パーセントだって。


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