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第63話 ダンジョン配信者にもいろいろ

『これはいいメスガキ』『マジモンのメスガキがいる』『しかもわからせられそうな感じにナマイキなメスガキだ』『いつ見ても見事なメスガキっぷりだなぁ』


 あまりにも分かりやすい属性に、アナのコメントたちも湧き上がっていた。


「ご、ごめんなさい! このあたりはたぶん、全部倒しちゃいました……」

「うえ~ブッキングだぁ~……」


 生真面目に頭を下げるポポンに、メ――女配信者が「あちゃー」と天井を仰ぐ。


 ……こういう場合は文句を言われることも多いが、所謂『モンスターの狩場』みたいな場所は早い者勝ちというのが通例だ。


 彼女もその流儀はわきまえているようで「ぶーぶー、アタシはザコと遊びたかったの!」なんてコメントとやり取りをしている。


 容姿や仕草はまさしく子供そのものだが、どこか計算ずくな印象もあるあたり、有名なダンジョン配信者なのかもしれないな。


「う~ん、ってあれ? アナちゃんだ!」

「こんにちは、サツキエルさま」


 名前を呼ばれてアナが恭しく一礼する。


 サツキエル、というのがあの女配信者の名前のようだ。

 彼女はピョコンと軽快に飛び跳ねてアナの胸へと抱き着いた。


『アナ、知り合いなのか?』

『はい。お友達です』


 抱き着いてきたサツキエルを受け止め、グルグルと子供をあやすようにサツキエルを回転させるアナ。

 なんだか昔あった公園の遊具みたいだな……確かグローブジャングルとか言ったっけ。あの丸っこい奴。


 それはそれとして、一通り遊び終えたとばかりにアナから離れたサツキエルは、続けて俺に気付いて「あっ」と声を上げた。


「わ~めずらし。アナちゃんがおじさん連れてるー!?」

「おッ――おじ……」


 …………ま、まだ俺は二十代なんですがねぇ……


 思わず言葉を詰まらせてしまったが、咳払いをして誤魔化しておく。


 ま、まあ? サツキエルくらいの年齢なら? 俺くらいの年齢を「おじさん」とか言いやがっても別になんでも――


『ちなみにサツキエルさま、公表こそしていませんが成人なさってますよ?』

『…………マジ?』

『はい。合法ロリというやつです』


 すごいな……色々と。


 いや確かダンジョン配信者の最低年齢は十六歳とかそのあたりだったはずだし、サツキエルもその辺の年齢なのかと思ったが……そう。


 成人。

 合法。


 ……世界にはいろんな人がいるんだなぁ。


 なんて俺がダンジョン配信者の裏事情に戦慄していると、サツキエルは何かに気付いたらしく俺の方を指さしてアナに首を傾げていた。


「あ、ひょっとしてウワサのサポーターくん?」

「はい。わたしたちエピライブのプロデューサーをなさっています」

「よわよわ?」

「いえ、つよつよです」

「じゃ、キョーミなーし」


 よわよわとかつよつよとか謎の文言をかわされた挙句に「なし」判定された……


『残念でしたねイロウさま』

『……別に』

『ちなみにわたしは大アリです』


 それこそ別に聞いてません。


『あらためましてご紹介します。こちらはメスガキ系ダンジョン配信者のサツキエルさまです。小型モンスター、要はザコ狩りを専門とする方です。なので、イロウさまは守備範囲外ということになったようですね』

『……なんというか、特殊な需要を狙い撃ちしたような人だな』

『ですね。ダンジョン配信者は大勢いらっしゃいますから、皆さん個性を出すためにあの手この手で試行錯誤をなさっているみたいです』


 ……配信者としてのプランニング、って奴だな。


 難しい話じゃない。


 どれだけ他と差をつけるか。

 どれだけ「自分にしかできない配信」をするか。


 世にいる多くのダンジョン配信者がそれに苦心し、試行錯誤を繰り返しているというのは知識として知っているつもりだ。


 ただ、俺は元インフラ整備士であるせいか……どうしても彼ら彼女らを《《配信者》》としてひとくくりにしてしまっている節があった。


 こういう所で勉強不足が出てくるなぁ……


 やはりダンジョン配信者のプロデューサーとしてはまだま未熟である。


『他にも、サツキエルみたいな配信者の知り合いはいるのか?』

『いらっしゃいますよ。例えば……』


 ポポンやサツキエルと話をしながらも器用に念話を返してくれるアナの言葉が続くよりも先に、新たな足音が近づいてきた。


 どうやら、また新しい配信者がやってきたっぽいな。


 俺たちが足音のした方へ振り返ると――


「はーっはっはっは! こんな所にいたんだね、我がライバル!!」

「「「…………」」」


 ち、ちち……


 痴女がいるー!?

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