第62話 ダンジョンの探し物
女配信者――ポポンという活動名らしい。
彼女はアナの申し出を二つ返事へ承諾してくれて、俺たちはポポンと共に彼女の落とし物を見つけるべく捜索に参加した。
しかし、ここは全貌すら見えない広大なダンジョンの中。
人手が三人になったとはいえ、まだまだ足りないというのが実情であった。
「あの、今更なんですが……本当によかったんですか?」
三人で探し始めてから十五分ほど。
落とし物どころかその手掛かりひとつ見つけられないままの現状にいたたまれなくなったのか、ポポンが恐る恐るといった様子で声をかけてきた。
「アナさんにも本来の目標があったはずですし、配信のお邪魔を……」
「ご心配には及びませんよ。わたしの目標も探し物みたいなものですから」
……何を探してるか話したらドン引かれるだろうけどな。
あえて何も言わない俺の視線をスルーし、アナは一息ついて周囲を見回す。
「それにしても……ここまで探して手掛かりの一つも見つからないのなら、もうここにはないかもしれませんね。配信では他の場所にも行っていましたか?」
「はい……今日はモンスターの討伐をメインにしていたので。何か所かモンスターのたまり場などを転々としていました。すでに一通り探したのですが……」
「見つからなかった、と」
アナが問うと、ポポンが残念そうに頷いた。
なるほどねぇ……だったら、モンスターとの戦闘で落としたと考えるのがよさそうだ。
「むむむ……もしかすると、モンスターの爪などに引っかかってそのまま、とかもありえそうですね」
「い、一応、モンスターの群れは全部倒したと思ってたんですが」
「モンスターの群れをおひとりで、ですか?」
「はい。たぶん十五体くらいはいたかなぁ、と」
「じゅ、十五」
「それ以上は数えていなかったので……」
おおよその数は分からない、ということか。
そうなってくると厄介になってくるぞ……
「一人でやっていたのなら、もしかすると倒し損ねた個体がいたのかもしれない。群れを失ったモンスターはしれっと別の群れに紛れ込んだりする場合もある。この近くにはモンスターがよくたまり場にする所がいくつかあるし、そこも捜索してみるべきだろう」
「わ、分かりました」
俺の言葉にポポンが頷く。
『確かに、この辺りは開けていて隠れてエッチなことはできませんし』
『……やっぱり平行して探してるんだな。ソレ』
まあ、ポポンに打ち明けない分別くらいはあるようなので好きにさせておこう。
それから、俺たちは主にポポンが配信中に通ったルートをもう一度たどりながら彼女のお守りを探していったのだが……やはりというかなんというか。落とし物の一つどころか手がかりすら見つけられなかった。
「……見つかりませんね」
「うう……」
ダンジョンの洞窟内はランタンが設置されていて明るさを確保している。
歩く分には何の問題もないのだが、人が歩かない物陰などは暗がりになってしまうため余計に探す場所が増えてしまう。
そこを虱潰しとなると、かなり骨が惚れるぞ……
「念のため確認するのですが、家に忘れてきた……とかはありませんよね?」
「はい……いつも配信の最初にお守りを持ち歩いていて……今日の配信でも持っていたことはリスナーさんも見ています」
「むむむ……」
「……あの、やっぱり――」
俺たち三人だけじゃいくらなんでも時間がかかりすぎる。
泣きべそをかきそうな顔でポポンが何か言おうとする、その寸前。
「あれー? いつものザコ狩りスポットがなくなってるー!?」
新たな配信者の声が洞窟に響いた。
「うわ、マジー? せっかくよわよわのモンスターを煽ろうと思って色々と準備してきたのにぃ、アテが外れちゃったぁ! どーしよ……」
キョロキョロと周囲を見回しては、ショボンと肩を落とすのは小柄な女配信者だ。
背格好で言えばドロリーに近いだろうか。
一部分が身の丈に合わないサイズのドロリーとは違い、こちらはまんべんなく小柄で華奢――ラフな服装も相まって『マセた』という印象が強いんだけど、年齢制限とか大丈夫なんですかね?
その外見を端的に伝えるとすると、コメントにあったこれが的確だろう。
『メスガキだ……』




