第60話 ハジメテは心配なことばかり
「ちなみに、配信では何をするつもりなんだ?」
「はい! イロウさまと一緒なので、今まで見つけたダンジョンの中でエッチなことが出来そうなスポットで実際にエッチなことをシ――」
「却下だ却下!」
永久BANされるだろ!
昨晩の要求を経て次の日。
善は急げとばかりに早朝から準備を整えたアナによって連れ出され、俺はいつものようにギルドへとやってきていた。
「とうとうこの日がやってきました! この日のためにメイド服も仕立て直しましたし、下着も良いモノを選びました! バッチこいです!」
「……メイド服って、それ昨日と違う服なのか?」
「もちろんです。毎日着るものですから、複数の着替えを用意していますよ!」
下着のくだりはスルーして俺が疑問を呈すと、アナはくるりと一回転した。
所謂クラシックスタイルのメイド服である。
アナの動きに合わせてロングスカートがふわりと揺れ、ニコリと上品そうな笑顔を向けられて思わずドキッとしてしまう。
……ホント、見た目は柔和で上品な美人なのになぁ。
「こちらはわたしが昔から来ているモノと同じデザインですが、イロウさまがお望みでしたらこちらの世界風のエッチなモノも」
「いや、今のがすごい似合ってるぞ」
「……なるほど。イロウさまは見えそうで見えない方が興奮すると」
何の話だ……?
ひょっとして、一回転した時にさりげなくスカートの裾を舞い上げてまぶしい太ももを見せてきたことだろうか。
まあ確かにドキッとはしたけどさ……
なんてやり取りをしながらも、俺たちは手早く必要な準備を終えてダンジョンの入口を通じて配信を開始した。
アナがカメラゴーレムを通してリスナーに挨拶をしているのを彼女の後ろで見守っていると、パタパタと周囲を旋回するカメラゴーレムから無数のコメントたちが勢いよく飛び出していく。
そんな中で、俺はあるコメントを見つけた。
『と、とうとうウチにもきやがったぞ……』
そりゃ、言われるよな……
アナ以外の三人の配信ではリスナーたちも見慣れてくれたので最近はもう言及されることがなくなったものの、アナの配信では初めて俺がサポーターとして一緒になったのだ。
苦言が出てくるのも仕方がない。
……けど、またこの前みたいに襲われるのはゴメンだからな。
言いたい気持ちは分かるが、流石に攻撃的なコメントがないかはちゃんとチェックしておかないと――
『だ、大丈夫なのか?』
あれ?
な、なんだか他のみんなの時とは空気感が妙に違うような……
『ちゃんとガマンできる? ずっと一緒にいてはみ出そうとしたりしない?』『メイドを後ろに立たせてはいけない』『今日は人の多い場所でやりましょ!』『危ない目にあったらちゃんと逃げるてくれよ!』
「な、なに言ってるんですか皆さん! せっかくサポーターさまとハジメテ配信をご一緒したというのに、そんな取って食べるなんてこと……ところで、ダンジョンの中で配信に乗らない場所ってどこかに――」
「入っちゃダメです」
それ未開拓エリアって言うんですよ。
「じゃあ配信中にしっぽり……」
「全世界に向けて何しようとしてるんだ!?」
……な、なんというか。
予想外というか、予想と真逆の反応が出てきたな。
てっきり配信者であるアナを心配して、俺に向けて「彼女に手を出すな」と釘を刺されるとばかり思っていたのだが、実際はその真逆であった。
……そういえば、あの三人に襲われた時にも似たようなこと言われたっけ。
確か小太り気味の男、工藤って言ったっけ?
『……メイド。変態。危険』
うん。
確かにアイツの言う通りだ。
今も「うぇひひひ」とかあまりメイドさん――いや人間が発するべきではない奇妙な笑い声をあげてるし、下手に二人きりになってしまったたらいったい何をされるか分かったモノじゃない。
「ぐふふ、実は最近やったゲームで配信者がサポーターさんに色々と仕込まれるシチュがありましてね。せっかくサポーターさまがいるのですから実践をば」
「……仕込むって、一発芸とかなら裏で練習させるだろ」
「いいえ。仕込むのはタネです」
「ダンジョン内で農業はやってないが?」
ここエロゲーの世界じゃなくて現実なんですよ。




