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第57話 もう一件の襲撃者たちは……

「おーい! お前たちも無事だったようだな!」

「「「……ッ!?」」」


 人だかりに紛れて俺――ラッカリカたちの様子を窺う三つの視線。


 それに気付いた俺が大きく手を振ると三人は一様に「ビクッ!」と肩を揺らして硬直し、やがて観念したかのように重たい足取りで俺の前に歩いてきた。


 ヤンチャそうな少年と、オタクらしい男に、小太り気味の男。


 よし、顔ぶれも変わりない。

 俺が撃退した時にできた怪我の他には目立った外傷も見当たらないし、どうやら無事に切り抜けたらしい。


「お疲れさん。ギリギリの所だったが、お前たちのおかげで全員無事に救出できたよ」

「……聞いた話じゃ、一瞬でテロリスト全員を倒したらしいが」

「か、雷のようだったと聞いておりますぞッ」

「……(ガクガク)」

「確かに決着は一瞬だったがゼロじゃないからな。その一瞬の内に連中が予想外の行動に出ていたら人質が無事だった保証もない。少なくとも、今回みんな無事に救出できたのはお前たちがいてくれたおかげだよ」


 労うように俺は語るが、三人の顔は暗いまま。


 ……ま、そりゃそうだ。


 予想外の事態にはなったが、この三人は俺を襲った襲撃者だ。


 そして、この場には事後処理として警察も大勢残っている。

 万が一、俺がここで「コイツらに襲われた」なんて証言してみれば一発でお縄になることだろう。


 何を今さら、って話ではあるんだがな。


「……イロウどの。そちらのお三方は?」


 微妙な空気を醸し出す俺たちに声をかけてきたのはシキータだ。


「シ、シキ姐!?」

「……? あなたの姉になった覚えはありませんが?」

「自分が視聴者に何て呼ばれてるかくらい覚えておけよ……」


 俺の隣に並び立ち、オタク男の声に対し怪訝そうな視線で三人を見るシキータ。


 ……そういや、シキータはコイツらの気配に気づいてたっけな。


 俺が平然と接している以上、シキータから何かアクションを起こすことはないだろうが正直に話したら普通に警察に通報するだろしなぁ……


「……誰?」

「なッ……ドロリー嬢!?」

「おや、こちらの方々は……?」

「……め、メイドさん」


 お、シキータに続いてドロリーとアナまでこっちに近づいてきた。


 奇しくも三人の推しが近くにきたことで三人共それぞれ驚きの声を上げて、すぐに顔を真っ青にして俺の方を見てくる。


 ……ま、推しから悪者扱いされるのを怖がらないファンなんていないか。


「それで、イロウどの。こちらは?」

「コイツらは……」

「「「…………」」」


 三人が固唾を呑んで俺を見る中、俺は不意に三人の方へと歩み寄り――


 そのまま彼らと肩を組んで見せた。


()()()()()()だよ」

「立役者?」


 そうだ、と俺は首肯する。


「たまたまテロリストに襲われている所を助けたんだ。聞けば三人共ウチのリスナーだったらしくてな。シキータ、制圧する寸前に非常ベルが鳴っただろ? 連中を攪乱して隙を作るために、ちょっと協力してもらってたんだ」

「まあ、そうだったんですね!」

「上出来……」

「……まあ、イロウどのがそうおっしゃるなら」


 俺の説明を受けてその場にいなかったアナとドロリーが応じる。


 シキータも何か言いたげだったが、納得してくたようだ。


「「「……あの」」」

「というわけで、お礼代わりにサインでも書いてやってくれないか?」


 三人が声を上げるのを遮って俺は彼らにだけ聞こえるように言う。


「……()()()はナシにしてくれよ?」


 それだけ言って俺は三人から離れた。


 ……こっちとしても、貴重なファンを失うのは本意じゃないしな。


「はい、そのくらいなら喜んで」

「仕方ない」

「分かりました」

「「……や、やったー!」」


 喜びと怯えが半々に混ざった顔で、喜びの声を上げるヤンチャ少年とオタク男。


「……(ポカーン)」

「うわ、おい大丈夫か!」

「ちょ!? 工藤どのが喜びのあまり立ったまま気絶しておられるぞー!?」


 ……うん、アメにしてはちょっと刺激が強かっただろうか。


 というかすっかり失念していたが、三人の名前を聞いてなかったなぁ。


 突然のことに慌てて工藤(小太り気味の男のようだ)を介抱するのは他の面々に任せて、俺はどこかで色紙とサインペンを調達できないかなぁと思案する。


 これで、本当に一件落着である。


 テロリストの立てこもりを解決し、みんなは無事。


 俺を個人的に襲ってきた三人もあの様子なら大丈夫だろう。


 ……願わくば、もうこんなことはないといいんだが。


「あれ? 私のファンの人はいないんですか!?」


 俺の冒険の結果をしみじみと実感していると、自分も配信者なのにすっかり忘れ去られていたラッカリカが抗議の声を上げていた。


 ……あぁ~、まあ、うん。


 キミはこれから頑張ってくれ……


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