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第56話 完全勝利の終結

 人質は重軽傷者はいたものの命に別状はなく全員無事。


 テロリストは一人残らず全員拘束。


 ……これなら、完全勝利と言ってもいいだろう。


 俺がテロリスト共を制圧してからほどなくして、クローリスの通報を受けた警察らの部隊が施設内へと突入した。


 テロリストたちの拘束と連行、そして解放した人質たちの保護は彼ら警察の仕事である。これ以上の冒険をするつもりはないし、後のことは任せるとしよう。


 ……事情聴取くらいは要求されるだろうけどな。


 なんて考えながら、迅速に事態が解決している様子を広場の片隅でぼんやりと眺めていると、人混みの間をタタタッと見慣れた少女が駆け寄ってくるのが見えた。


「イロウさんッ!」

「ラッ――ぐえっ!?」


 呼びかけに応じようとした直後、俺はラッカリカに飛びつかれた。


 ほとんど頭突きされたような形だった。


 油断していた所に飛びついてきたラッカリカの頭が俺の鳩尾へクリーンヒット。

 その衝撃に押し負けて俺は仰向けに倒れてしまった。


 ……こ、コイツ。いきなり……


 まるで狙いすましていたかのような一撃だった。


 たまらず「何するんだ」と文句を言おうとするが、それよりも先にラッカリカは俺の鳩尾に顔をうずめたままぎゅう~っと腕を回してきた。


「イロウさん! 私――私ッ……!!」

「……ああ、よく頑張った」


 こっちを締め落とさん勢いで抱き着いてくるラッカリカに、俺は肩をすくめてから彼女の頭を優しく撫でてやる。


 全力で抱き着かれているせいだろう。


 密着したラッカリカの身体が未だに震えているのがよく分かった。


 ……まあ、そりゃそうだ。


 いくら異世界のお姫様と言えど、ラッカリカはまだ少女である。


 どれだけ気丈に取り繕っていたとしても、命の危機を目前にしてまったく恐れないという方がおかしいのだ。


「ご主人さま!! イロウさま!!」

「……イロウ。無事」

「みんな、大丈――あらら」


 しばらくラッカリカの好きにさせてやっていると、テロリストたちが連行されていくのと入れ替わるようにしてアナ、ドロリー、トリントが俺たちに駆け寄ってきた。


 そして俺がラッカリカに押し倒されている状況を見るや否や……三者それぞれの反応を見せてきた。


 見世物じゃないんですがね……


「あらあらうふふ……これはひょっとしてお邪魔でしたか?」

「ラッカリカだけずるい。ドロリーも」

「怪我もなさそうで安心したけど……イロウくんって手が早いのね」

「誤解だ!」


 というか見ていないで助けてくれませんかね?


 それとドロリーは勝手にくっついてこないでください。

 アナタ今回は何もしてないでしょ。


「ふう、ニュースを見て慌てて駆け付けたのに、着いてみればもう全部終わっちゃってる上にこんな場面を見せつけられちゃうんだもの。後でおねーさんのこともちゃんとかまってよね」

「そうですよイロウさま! わたしだって一大事だと思いこうして大魔女さまをお連れしましたのに……ご主人さまの次はぜひわたしを」

「ん、ドロリーを今すぐねぎらうべき」

「そういう報酬的なのはラッカリカに言ってくれよ!」


 なんで俺がみんなに何かするって流れになるんですかね……?


 心配してくれたのはうれしいけどさ!


「イロウどの!」

「イス――入浪(いろう)さん。こちらにおられましたか」


 やいのやいのと俺たちが騒がしくしていると、いつの間にかテロリストの連行などが終わっていて事後処理に協力していたシキータとクローリスが戻ってきていた。


「おおよその顛末は私たちで説明しましたが、やはり警察も当事者にお話を聞きたいとのことで……すみませんが、お願いできますか?」

「分かった……だ、そうだぞラッカリカ」


 そろそろ離れてくれないか、と俺は抱き着いたままのラッカリカへ語り掛ける。

 しかし、ラッカリカは俺の胸に顔をうずめたまま動かない。


「ラッカリカ?」

「くんくん……イロウさんの匂い」

「そこまでだ」

「そんなぁ!?」


 他人の匂いを嗅がないでください。


 なおも抵抗して俺にしがみつこうと(匂いを嗅ごうとする)するラッカリカを引きはがして、俺は立ち上がった。


 うえ、ラッカリカの奴ヨダレたらしてやがるよ……

 当の本人も何故かトリップしているように上の空だし……


 いったい俺の何を気に入ったというのか。


 なおも名残惜しそうにフラフラとこっちへ手を伸ばしてくるラッカリカをシキータに引き渡しつつ、俺は周囲を見回す。


「さて、と……お」


 どこに行ったのやら、と思ったら存外に近くにいたようだ。


 テロリスト共の連行が終わり、連中が人質を集めていた中央のコンサートホールこそ封鎖されていたモノの俺たちのいる広場は関係者や野次馬が集まって人だかりが出来ている。


 彼らを見つけたのは、その人だかりの中だ。


「おーい! お前たちも無事だったようだな!」


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