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第54話 ラッカリカの怒り

「私たちがダンジョンからの侵略者? 異世界人がダンジョンを通じてこの世界を侵略する? よくもそんなでまかせでこんなことができましたね!!」


 テロリストの拡声器越しの声をもかき消さんばかりに響くのは、ラッカリカの怒号だった。


 リーダー格の男を真っ向から睨みつけ、ラッカリカはさらに怒鳴る。


「ダンジョンは私たちが自由にできるモノじゃありません! 何も知らないくせにこれだけの人たちを危険にさらしておいて、なにが正義ですか!?」

『なんだと貴様! 異世界人の分際で――』

「異世界人だからなんだというんですか!」


 反論しようとするテロリストの言葉すら跳ね除けるかのように彼女の怒りが大きく響き渡り、リーダー格の男へと詰め寄る。


「私たちは侵略者なんかではありませんし、ダンジョンはどこの世界にも平等に出現しています! どの世界でも侵略になんか利用できないのは周知の事でしょう!? それはすでにギルドの調査で判明しています!」

『そんなもの信用ならないだろう!』

「都合の悪いことには耳をふさいで、都合のいい陰謀を意気揚々と振りかざすだけの暴力で、あなたたちはいったい何を変えるというのですか! ここにいる人たちの安全を、生活を踏みにじっておいて、いったい何と戦うというのですか!?」


 苦し紛れにテロリストも拡声器を通して怒鳴るが、すでに気圧されている状況ではラッカリカのそれに及ぶべくもなかった。


「暴力をもって何かを変えようとするのは、それがどんなに正しいことであったとしても侵略に他なりません!! これだけの人たちを危険にさらして……あなたたちこそが、私たちを害する侵略者じゅないですか!!」

『――――ッ!?』

「私はもう二度と、あなたたちのような人には……負けません!!」


 真っ向からのド正論と反抗宣言。


 それを受けたテロリスト共が一斉に固まった。


 ……ま、そりゃそうだ。


 連中は自分たちを正義と決めつけ、それを一方的に振りかざして暴力を講じた。

 そんな()()()()()()()()でラッカリカの言葉を撥ね退けることができるはずもなかったのだ。


 よくぞ言ったと褒めてやりたいところだが、ここからが正念場である。


『こ、この……侵略者風情がああぁぁッッ!!』

「――――ッ!」


 激昂したリーダー格の男が吠える。


 雄叫びと共に掲げたのは拡声器じゃない。


 ――自動小銃!


 言論ではもう返せない激昂の代わりに鉛玉をぶち込んでやるとばかりに顔を真っ赤にして銃口をラッカリカに突きつけ、ためらうことなく引き金に指をかける。


 相対するラッカリカは、()()()()


 死の恐怖にひるんだわけじゃない。


 目の前に銃口を突き付けられてもなお、彼女の意思は揺るぐことは一切なく、ラッカリカはただまっすぐにテロリストを睨み付ける。


 わずかな逡巡。

 刹那の膠着。


『――悪い、今着いた!』

「今すぐ押せッ!!」


 ゆえに、俺たちは間に合った。


 ジリリリリリリッッッ!!


『な、なんだ……!?』


 俺の合図に合わせて、非常ベルの甲高い警報が周囲へ鳴り響いた。


 突然の大きな音に人質、そしてテロリストまでもが動揺し、警戒する。


 なにせ同時に複数個所でベルが押されたのだ。

 警察ならそんなことするはずないし、現在進行形でテロリストによる立てこもりが起きている場所でそんな子供じみたイタズラを仕掛けるような馬鹿が出たなんて前代未聞だろう。


 だからこそ、テロリストは状況を理解できずに困惑する。


 その困惑こそが、勝負を仕掛ける好機であった。


「ナイスタイミングだ! ちゃんと逃げ切れよ!」


 無事に仕事を果たしてくれた三人へ礼を言って俺は通話を切る。


 さて、と……


「後は――俺の冒険しだいだ」


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