第49話 いろいろ手広いダンジョン配信者
それから俺たちはコスプレコーナーを離れた。
「そろそろ別の建物にあるお店も見てみたいです」
「だな。移動するか」
ここレスピタル森中は複数の建物に店舗が分かれている。
ずっとウィンドウショッピングでもいいが買い出しもあるし他にも映画館やゲームセンターなど娯楽施設だってあるのだ。
普段そこまでゲームをしないためかラッカリカがゲームセンタ―に興味を持ったのでひとまずはそこに移動しよう。
しかし、歩き出してすぐにラッカリカの足が止まった。
「……ラッカリカ?」
「イロウさん、あれって」
立ち止まったラッカリカが指したのは、キャラグッズ関係を集めたコーナーであった。
アニメやゲーム……だろうか。
そのあたりは俺もそこまで詳しくないが、多種多様なキャラクターのアイテムが並んである売り場だ。
ラッカリカが注目したのはその一角。
「ダンジョン配信者グッズ特集……?」
最近はそういうのもあるのか。
インフラ整備士として有名な配信者はいくつか知っていたが、まさかグッズ展開までしているとは。
手広くやってるもんだなー。
売り場に並んでいるのは有名なダンジョン配信者たち。
大きな配信事務所に所属しているような面々が揃っている。
配信者のチェキや配信中の場面を切り取ったっぽいクリアファイルやアクリルキーホルダー、デフォルメイラストなんかを用意して小物類なども販売されている。
……久良音のモノもあった。
彼女のプロデューサーもしている香流子の手腕だろうな。たぶん。……アイツが一番グッズを集めていそうな予感もするけど。
感心しながら売り場を見る俺の隣で、ラッカリカが少しだけ悔しそうに語る。
「最近はこういうのも増えているってどこかで聞いたことがあります。……弱小配信事務所な私たちには夢のまた夢の話になっちゃいますが」
「……確かに、こういうのはコネがないと作りようがないだろうしな」
ラッカリカたちは異世界人だし、そもそもの人脈というのも少ない。
その上、プロデューサーである俺も元はしがないインフラ整備士だから同様である。
仕事として勉強しなきゃいけないことは山積みだって分かってはいたが、こういう部分もどうにかしないといけないよなぁ……
「……香流子からノウハウでも――」
「私たちもグッズ作るんですか!?」
「将来的に作れるといいなぁって話だ」
そのためにはラッカリカたちに頑張ってもらわないと。
ラッカリカたちはみんなビジュアルが良いし、その点だけは売り場に並んでいる配信者たちとも引けを取らない。
人気が出ればおのずと色々なオファーが来ることだろう。
……人気があった方がライセンスも上位のモノを取りやすいしな。
配信者の人気はビジュアルやトークスキル、普段の企画で左右されるのはもちろんであるが、ダンジョン配信においては『実力者』も人気になることが多い。
いわゆるプロゲーマーに近いイメージだろうか。
他の配信者よりも高い実力で他の配信者では立ち入れないエリアでも配信ができる……当然それに準ずる実力があるかどうかは試験することになるのだが、人気があればその試験を優位に進められることがある。
……そうして人気だけで無茶なエリアへ入ったヤツを助けるのも、俺たちインフラ整備士の仕事だったしなぁ。
ラッカリカが望む「元の世界へ帰るための出入り口」も扉の間を除けば未探索エリアに近い方が見つかる確率も高く、そのエリアは上位のライセンスが必須になる。
彼女たちの目的からしても、配信者としての人気はあるに越したことはないのである。
そのためには、俺も色々とできないといけないな……
色々と今後のことをふまえて思案する俺をよそに、人差し指を立てて何かを考えていたラッカリカが名案を思い付いたとばかりに手を叩いた。
「そうだ。グッズを作る時はイロウさんのも作りましょう!」
「……誰が買うんだよそんなの」
「私が買いますよ?」
だったら自作で満足してください……
商品展開した所でプロデューサーのグッズなんか誰が――脳裏で久良音が嬉々として買い占めている図が浮かんだが、それでも二人だけ……
いや、もしかすると。
「……呪いの触媒として人気になったら困るし却下」
「そんなことしませんよ!!」




