第48話 話題に挙がるのも善し悪し
「俺がバスった……? サポーターなのになんで……?」
「まあ……主にシキータが『アタシたちと付き合いたかったら~』とかリスナーを煽った件とドロリーの勝負がどうのってやっていた件が理由でしょうね。途中で配信が途切れたことも含めて話題でしたし。ほら、切り抜きもたくさん」
そう言ってラッカリカがスマホを見せてくる。
……うわ、ホントだ。
ラッカリカが見せた検索画面には、俺についての切り抜きがずらりとスクロールされている。
なんか反応集なんてのも作られてるよ……
「ここまでバズったのはエピライブで一番ですね。私がモンスタートレインをやっちゃって炎上した時よりも話題になってます」
「……それはお前たちが頑張って超えてくれよ」
「うぐ」
ラッカリカが顔をこわばらせる。
しかし、彼女はすぐに食い下がるように俺の方へ詰め寄ってきた。
「この人気に乗ってイロウさんを配信者デビュー、というのはさすがに難しいと思うので私たち配信メンバーが間接的にイロウさんの話をして話題にだそうかなぁ~という方針にしたいなと考えてるんです。ほら、テレビとかだと裏方の人が人気になって~みたいな。名物プロデューサーのイロウさんを私たちで爆誕させようって」
「……ちなみに、それを言い出したのは」
「シキータです」
俺は大きな溜息をついた。
「とはいえ、シキータがハーレムだなんだと煽るようなことを言って嫉妬に狂った感じのリスナーさんもそこそこ」
「…………まったく」
あの酒クズ……俺をスケープゴートにするだけじゃ飽き足らず、まさか客寄せパンダまで俺にやらせようって魂胆なのだろうか?
客寄せは配信者が頑張るところだろうに……
話題になったモノを利用するというのは配信者だけでなく人気商売ではよくある話ではあるが、それで利用される方はたまったものじゃない。
シキータにも何か話題にできるようなモノがあれば楽なんだが……
うう~む。
とりあえず断酒はマストとして、他に何か……
……いっそ今度、素面の状態でコスプレ配信でもさせてやろうか。
◇――――――◆
そんな俺の企みを実行しようってわけじゃないが、俺たちがやいのやいのと移動した先はディスカウントストアのコスプレコーナーであった。
「……あれ、コスプレ衣装ってこんなに少なかったんですか?」
雑貨店を離れ、次はどこへ行こうとかと店内をぶらついていたところ、偶然にも迷い込んだディスカウントストアの売り場でラッカリカが立ち止まった。
「たぶん、お前が考えてるのは通販での既製品かコスプレイヤーが自分で作ったりした本格的なヤツだな。このへんのは所謂パーティグッズってやつで、それっぽい格好をしてみんなで楽しむ用ってところか」
「へぇ……」
ラッカリカが手近なパッケージを手に取る。
「確かに、みんなで着たら楽しそうですね。配信とかでも」
「この辺のは基本ダメだな。動きにくいし破れやすいからギルドがNGを出してる。まあ、上に頑丈なモノでも着込むんなら大丈夫だろうけど……」
「ひょっとして、シキータなら?」
「おそらく」
キラーン。
きっと今、誰かが俺たちを見ていたら、俺たちの目が悪い輝きをしたように見えたことだろう。
すぐさま二人してシキータに何を着せようとかとしばらく売り場を物色していると、不意にラッカリカがパッケージを自分の身体に合わせながらこちらへ向いてきた。
「イロウさん。私がコスプレするなら何が似合うと思いますか?」
「……素材が良すぎるからだいたいのは似合うと思うぞ?」
それ以前に、なんで水着みたいな布面積のニットと股の辺りが際どいスク水を比べたまま訊いてくるんですかね……?
コスプレはコスプレでもそういう目的の衣装は上に何を重ねても配信じゃアウト判定になる。
服としての防御力があまりにもなさすぎです……
「ならイロウさんは私に何を着せ――」
「こっち!」
俺は慌てて別の衣装をラッカリカに差し出す。
ナース服やメイド服はスカートが短いくらいで露出もそこまでだ。
これならラッカリカが着ても問題はないはず。と思って差し出したのだが、なぜかラッカリカは眉を寄せてコスプレ衣装を一瞥してからジトーっとした視線を俺に向けてきた。
「ナース服にメイド服……そういえば、アナから『お味見させていただきました♪』とメッセージが来ていたんですが、何をしていたんですか?」
「それとは関係ないぞ?」
ラッカリカのおかげで未遂になったからな。
普通にお昼ご飯をごちそうになっただけです。
……が、なんだか雲行きが怪しくなってきたのでここはさっさと退散したほうがよさそうだった。
俺はラッカリカの追及するような視線から逃れるように提案する。
「な、なあラッカリカ。そろそろ、他の所も見てみないか?」
「……仕方ないですねぇ」
今日は見逃してあげます、とラッカリカ。
た、助かった……
いや見逃すも何も無実なんですけどね?




