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第47話 お休みには何をする?

 明言こそされなかったが、きっとアナは俺に主人であるラッカリカのエスコートを任せたかったのだろう。


 ラッカリカは俺たちの事務所であるエピライブの社長で、かつ自信も所属配信者としてダンジョン配信をする多忙ぶり。その上、彼女は異世界から亡命のような形でこの世界にやってきたお姫さまでもあるのだ。


 色々な気苦労がある、ということは外様の俺でも分かること。

 だからこそアナはラッカリカに気分転換をさせるため、主従関係ではない俺を頼ったのだろう。


 ……ま、たしかにな。


 こういう時は、何か気を紛らわせられるモノがあればいいんだろうが……


「そういえば、ラッカリカには何か趣味はないのか?」


 広場から近くにある店舗に入った俺たち。


 買い出しをするという予定はあったが、真っ先に済ませても荷物になるだけ。

 なのでウィンドウショッピングなるものを実践してみることにした。


 手近にあった雑貨店の棚を二人で物色しながら、ふと俺が気になった疑問を投げかけてみると、棚の商品をぼんやりと眺めていたラッカリカが顔を上げた。


「趣味、ですか?」

「ああ。よくよく考えれば他の連中――トリントはちょっと微妙だが、それ以外の連中はみんな何かしらの趣味があったりしたけど、お前のは聞いたことがなかったなぁって」

「たしかに……あまり考えたことがありませんでした」


 ラッカリカがムムムと眉を寄せる。


 それから、近くにあった小物を手に取って首を傾げた。


「……小物集め、とか?」

「疑問形かぁ……」

「で、でもでも! よく買い物はしますよ? 近所にあるスーパーやドラッグストアはよく行きますし! 百円ショップとかも便利ですし!」

「それは……ただの買い出しなんじゃないか?」

「……確かに」


 認めちゃったよ。


 まあ趣味なんて人それぞれだから具体的に何が趣味になるのか、なんて誰かが決められるようなものでもないか。


 などと苦笑混じりにラッカリカをフォローしようとした矢先に、悔し気に頬を膨らませたラッカリカが反撃とばかりに声を上げてきた。


「ぐぬ……そういうイロウさんは何か趣味があるんですか?」

「俺か?」


 俺は……まあ……


 腕を組んで思い返す。

 結構な沈黙が流れた。


「……いや、俺にはないな」

「…………」


 ラッカリカの冷たいジト目が俺に突き刺さった。


 明らかに「どの口が言ってるんだか」と目が語っている。


 い、いや、俺の場合は基本的に仕事があったし?


 インフラ整備士時代は人付き合いもほんの少しくらいはあったから趣味の時間を取れなかったというだけ……なんて言い訳はともかく。


 俺はコホンと空咳と共に言った。


「ま、まあ……趣味なんて人それぞれなんだ。何か気になるモノでもあれば、この機会に趣味として始めてみたらどうだ?」

「今日から、趣味を?」

「どんな趣味だって始めてみたから趣味になったんだ。やってみたいこととか、知りたいモノとかいろいろとあるだろうし、なんだって……と、無趣味な俺が言えたことじゃないが」


 誤魔化すように頬をポリポリとかきながら俺は明後日の方を見た。


 ……このレスピタル森中には色々な店がある。


 ここみたいな雑貨店はもちろん、アパレル系やスポーツ用品店だってある。

 アウトドアでもインドアでも趣味にできるようなモノは多々あるだろう。


 俺の言葉を受けてラッカリカが思案するように唇へ指をあてる。


「やってみたいこと……気になるモノ、知りたいモノ……」


 ジー。


 ……なんでまっすぐ俺を見てくるんですかね?


「あの、ラッカリカ……?」

「決めました!」


 パンと手を叩いてラッカリカが宣言する。


「私、イロウさんを趣味にします!!」


 正気かっ?


 一ミリも俺から目をそらさないまま満面の笑みを浮かべるラッカリカの言葉を理解するのにたっぷり十秒くらい使って、ようやく俺は首を傾げた。


「……俺を趣味にするって、何するつもりだ?」

「さあ?」


 首をかしげるラッカリカ。

 俺は天を仰いだ。


「かわいそうにラッカリカ。お前、正気を失うほど疲れてたのか……」

「ばっちり正気ですよイロウさん。さっき何でもいいって言ったのはほかならぬイロウさんじゃないですか」

「それはそうだが……」


 だからって俺自身が趣味になるなんて思うわけないだろ。


「それに、最近イロウさんのことが結構バズってるようなので、配信者活動的にもイロウさんのことをよく知るというのは理にかなってるんです」


 ……なんだって?


「バズったって……誰が?」

「イロウさんが」


 そんなバカな……

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