第42話 はじめてのお休みは惰眠に限る
その後は結局、気が付いた香流子も混ざってみんなで宴会となった。
主にウチのシキータが騒ぎ、それに酔っぱらったままの香流子が乗っかってトリントや俺が巻き込まれての大騒ぎ。
もっと話すべきことがあったかもしれないが、それはそれとして無礼講ということで俺たちは楽しみ、その場はお開きとなった。
……二日酔い確定なシキータや香流子は災難だっただろうけど。
まあ……それは俺も似たようなモノか。
「……あぁ~、あったま痛い……」
頭痛に苛まれながら俺は体を起こす。
ここは居酒屋ではなく、事務所にある俺の自室だ。
どうやら昨日は解散後にちゃんと事務所まで帰って来られたらしい。
最後の方は俺もほとんど記憶がないので、きっと酒を飲まなかったラッカリカあたりに介抱されたのだろう。後でお礼を言わなくちゃな。
……まったく。
二日連続で酒のせいで寝落ちするとは。
だが案ずることなかれ。
「今日は……初の休日だ!」
そう。
正確には未探索エリアでの一件によるペナルティでもあるのだが、それはそれ。
激動の二日間を終えて、ようやくやってきた休息の日である。
……いや、マジでようやくって感じだなぁ。
休日。
なんと美しい言葉だろうか。
インフラ整備士だった頃はむしろやることがなさ過ぎて困っていたくらいなのだが、ここにきてそのありがたみを再確認するとは思わなかった。
……何せ、荷解きもロクにできてないくらいだしな。
エピライブに入社して――いや、する前からドタバタの連続だったのだ。
部屋の隅に積まれたダンボールの山はまだまだ手付かずで、日用品もまだ買い揃えられていない。ラッカリカたちが共用のストックを使っていいと言ってくれていたが、いつまでも甘えているのもよくないだろう。
「よし、決めた」
ギルドから通達されたペナルティは「三日間のダンジョン立ち入り禁止」
つまりは三日間のお休みということだ。
今日のところはひとまず部屋の片づけと買い出しを済ませて、明日と明後日は普通に休むかクローリスが受け持つ書類仕事でも教えてもらおう。
「……と、その前にトイレ」
そうと決まれば、とばかりに俺は尿意を感じて部屋を出た。
部屋を出てそのままリビングへ。
壁掛け時計はちょうどお昼過ぎを示していた。
リビングには誰もいなかった。
みんな配信だったり仕事だったりで出払っているのだろう。
そんな中でお昼まで惰眠をむさぼっていたのは休日の特権だな。
なんて思いながら俺はトイレの方へ向かった。
ここは事務所である前に女所帯のシェアハウスだ。
トイレはもちろん、風呂とシャワーの脱衣所を兼ねた洗面所などでバッタリ……なんて事故を防ぐために入る際にはノックするのを心がけているのだが、誰もいないならその必要もない。
……カギだって空いてるしな。
俺は「ふわぁ」と欠伸をしながらトレイの中へ入る。
思いのほか大きな欠伸で反射的に目をつぶってしまうが、トイレに入るくらいなら造作もない。
自分がまだ寝ぼけているのを感じながら、俺は軽く手探りでトレイのカギを閉めて便器の方へ向き直る。
そしてつぶったままの瞼をこすりながら開き、
「あら」
「――――は?」
今まさに用を足している最中のメイドさんと目が合った。
見間違いではない。
水色のふんわりとしたボブカットが似合うメイドさんだった。
柔和な顔を上げたと同時に大きな胸のふくらみがたゆんと揺れる。クラシックスタイルなメイド服はスカートをたくし上げていて、白い太ももからしなやかな足が露になっていた。
そして、彼女の方からちょろちょろと水音が――
俺は慌てて再び目をつぶった。
「わ、悪い!? すぐに出て……!?」
「いいえ。そのままで」
すぐに出て行こうとする俺の腕をメイドが掴んで止める。
え、なんで……?
まだちょろちょろと水音が聞こえるし……
「お見苦しい姿で恐縮でございます、イロウさま。お初にお目にかかります、わたしは見ての通りのメイド、アナと申します。普段は家事などを」
「そういうのは後でいい! とにかく俺は外に」
「いいえ」
ちょろちょろ。
逃亡を図る俺の腕をアナと名乗るメイドが離そうとしない。
それどころか、彼女は「ぽっ」と頬を染めて恥ずかしがりながら上目遣いで――
「むしろじっくり見てほしいのです」
「ハァ!?」
何を!?
「もちろん……ナニもカモを、です♪」




