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第30話 ダンジョンの中の一期一会

「ああーッ! オレたちの獲物がやられてるー!?」


 ……げ。


 このタイミングでそれは聞きたくなかった……


 俺とドロリーが声の聞こえてきた方へ振り返る。

 声の主は男女二人組の配信者、その男の方だった。


 俺たちが彼らの姿をとらえるのと同時に、彼らは俺が倒したモンスターへ駆けよっていき……あろうことか、俺が目星をつけたレア個体へ駆け寄った。


「ダメだ……倒されてる」

「そんなぁ……せっかく一時間もかけて追い詰めたのに~」


 男が言うと、片割れの女が残念そうに声を上げる。


 二人して「今日の取れ高がーッ」と悲鳴を上げる中、俺がどう声をかけるべきかと思案していると隣のドロリーがポツリと前に出た。


「……それはこのイロウがやった」

「ドロリー!?」


 お前俺を切り捨てたな!?


 早々に身切りした我が配信者にたまらず悲鳴を上げるも、よくよく考えずとも今回の原因は俺に――いや普通にドロリーがダンジョンゴーレムで暴れなければよかったのでは?


『でもイロウがやったのは事実』

『ぐぬっ……』


 ……まあ、実際その通りなんだけどさ。


 心の内で嘆息を漏らしつつ俺は観念して腹をくくる。


 ダンジョン配信において、モンスター討伐関係のトラブルは多い。

 特にボスモンスターやレアな個体になればその戦利品は貴重だ。取り合いになることはよくあることだし、騙し取ろうってあくどい連中もいたりする。


 とはいえ、今回はこっちに非があるからな……


 よくよく観察すると、モンスターには俺が関わっていないダメージが散見している。たまたま同じ個体を……とかではなく、どうも本当に彼らが追い詰めていた個体を倒してしまったみたいだ。


「す、すまない……他のモンスターとまとめて倒してしまったみたいだ」

「そんな~! これが今日の撮れ高になるの~!?」

「どうしてくれんだよぉ! オレたちの骨折り損じゃねぇかぁ!」


 すぐに非を認めて謝罪するも、二人組の泣き言は止まらない。


 話を聞くに、どうも戦利品を譲るだけじゃ足りないなコレは……配信で目標にしていたモンスターを追い詰めた所でかすめ取られたのだ。


 こんな拍子抜けなオチでは彼らのリスナーも満足はできないだろう。


 彼らの目的が撮れ高となると、穏便に和解するのは難しいな……


 俺が次の言葉を思案していると、隣のドロリーがポンと俺の背中を叩いた。


「なら、イロウを貸す」

「「「え?」」」


 三人の疑問がハモった。


「イロウの力はじゅうぶん。役に立つ」

「何を勝手に――いや、まぁ、うん。それで許してくれるなら」


 すぐさま反論しようとしてやめる。


 今日の俺はドロリーのサポーターだ。

 これがサポーターの仕事になるのかは甚だ疑問ではあるが、身からまいた種ではあるので大人しく乗ることにする。


 ……この辺のエリアならインフラ整備士時代も良く来ていたしな。


 多少の困難ならば撥ね退けよう。


 当人である俺が引き受けたことで、二人組は思案するように互いに視線をかわして沈黙する。念話で相談しているのだろう。彼らのカメラゴーレムへも視線を飛ばしながら長考することしばらく「よし」と男の方が手を叩いた。


「なら、コラボ配信ってことでいいか?」



◇――――――◆



 コラボ配信。


 ゲームなどの配信であれば、事前にアポを取り付け、日付や段取りなど色々とすり合わせたりすることが基本だが、ダンジョン配信では少し事情が変わってくる。


 ダンジョンの中では何が起こるか分からない。


 もちろん事前に取り決めてコラボ配信を行うこともあるが、それ以上にダンジョン内で偶然出会って突発コラボする、という流れがかなりの割合を占めていた。


 俺たちもその例に倣って突発コラボをすることになったわけだが……


「やだ、もうむり。帰る……」

「だーもう! おぶってやってんだから文句言うなよ!」


 二人組とコラボの話をつけてからしばらく。


 しれっと一人で配信を終えようとしていたドロリーを背負いながら、俺は二人組の後ろで扉の間の迷宮を歩いていた。


 ……ダンジョン内でおんぶとか、普通に危ないんだがなぁ。


 しかもけが人というわけでもなく、単純に疲れただけ。

 自分が配信者であることを忘れて俺をコラボさせようとしたドロリーだったが、当然サポーターの俺一人で配信をするわけにもいかないのでこうして強引に連れてきたのである。


『うらやま』『こいつはエロですよ!』『56す』

「まってくれこれは不可抗力じゃないだろうか」


 密着しすぎだと目くじらを立てるコメントをなだめていると、迷宮の先を歩いていた二人組が足を止めた。


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